ロマチェンコ対ロペス2人の戦績と試合予想プレビュー

 未来を担うテオフィモ・ロペス(米)がワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に勝てば正真正銘、議論の余地ない王者となる。パワー、スピードといった身体能力だけでなく、戦略、タフネス、挽回力、真価が問われる。今戦が“War of Words”と呼ばれる理由、試合背景から2人の戦績、予想を紹介する。

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勝てばライト級最強


 事実上のライト級最強決定戦だ。3階級を制覇し功績を残し今もなおPFP傑作として君臨するロマチェンコは米リング誌の王座とWBA、WBO、WBCのタイトルを持つ。米リング誌では米本土でボクシングの顔となったカネロが1位だが、ロマチェンコを1位とする声も多い。

 32歳になるがまだ明白な衰えを見せていないが適正階級を超えてしまった。コロナ禍で直近の試合から12ヶ月のブランクで”ハイ・テク”が正常に機能するかどうか。

 WBC王座を保持するロマチェンコはフランチャイズ王者。本来、フランチャイズ王者は称号で移譲するものではないがWBCはフランチャイズ王座をかけることを発表。正規王者にはデビン・ヘイニー(米)が君臨しファンにとっては解りにくい構図だが、パフォーマンス、実績、キャリアからロマチェンコ、ロペス戦がライト級最強決定戦として相応しいことは間違いない。詳細はこちら

 一方、未来を担うのがIBFのタイトルを保持するロペスだ。プライムタイムのロマチェンコに勝てばライト級4団体を統一し大金星、富と名声を手に入れられるが負ければキャリアで大きな痛手。文字通りハイ・リスク、ハイ・リターンの大勝負だ。

 ライト級は減量苦でありパフォーマンスが発揮されるかどうか。ロマチェンコ戦にフォーカスしているとはいえ、私情を挟んだ戦いでどれだけリングの中で冷静を保てるかどうか不安視されることは多い。

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テオフィモ・ロペスの戦績

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テオフィモ・ロペス
出身 米国
スタイル オーソドックス
身長 173cm
リーチ 174cm

IBF世界ライト級王者

プロ戦績 15戦全勝12KO KO率80%

アマチュア戦績 150勝20敗
2016年リオ五輪ライト級 1回戦敗退
2016年リオ五輪米大陸予選 準優勝
2016年リオ五輪米国最終予選 優勝
2015年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝

 スピード、パワーは階級屈指。殺傷能力が高いパンチング・パワー、身体能力の高さを武器に積極果敢に攻め込むスタイルだ。L字ディフェンスは鉄壁とは言えず防御面に不安はあるが、スピード、パワー、身体能力といったアビリティでカバー。だが、劣勢になった経験はなくタフネス、メンタルは試されてない面も多い。

 五輪2連覇を達成しプロ2戦目で世界タイトルを獲得したアマ・エリート路線で多くの期待を背負い米トップランク社(米有力プロモーター)と契約を結んだロマチェンコはいわばドラフト1位。ロペスのキャリアは異なる。

 米ニューヨーク、ブルックリンで生まれたロペスは両親はホンジュラス出身。ボクシングをはじめたのは6歳のときだという。父親とボクシングをはじめたロペスは、米国五輪代表をつかめなかった。諦めきれないロペスはホンジュラス代表として五輪を目指すことを決意。リオ五輪北米大陸予選で準優勝し代表権を獲得しライト級で五輪に出場したが初戦で敗退した。

 プロへ転向したロペスの期待値はそこまで高いものでなかったがKOを量産。メイソン・メナード(米)、ディエゴ・マグダレノ(米)ら中堅クラスに圧倒的な勝ち方をするとロペス人気は急上昇。まだ、トップクラスとの対戦はなく証明されてないことも多かったが、この頃からロマチェンコとの対戦が持ち上がっていた。

 ロペスの詳しい戦績はこちら

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ロペスは強いのか

 米リング誌、ESPNライト級では1位の評価。スピード、反射神経、パワーと恵まれた身体能力を持つロペスはライト級で高い戦力を持つことは言及するまでもない。デビン・ヘイニー、ライアン・ガルシア、ロバート・イースターJr.らトップコンテンダーと比較してもパンチング・パワーは目を見張る者がある。そして、そのパワーを最大限に活かす瞬発力も高く強豪とみて間違いない。

 これまでプロモートするボブ・アラム氏が送り込んだ中堅クラスのメイソン・メナード(米)、ディエゴ・マグダレーノ(米)、エディス・タトリ(フィンランド)、中谷正義らに勝利している。

 直近、リチャート・コミーを序盤で粉砕し王座奪取に成功。中谷戦の不調がよぎったがオッズはロペスに傾いてた。ロペス陣営にとってコミーはロマチェンコとの王座統一戦を見据えてのステップ・アップ戦の位置づけだった。

 パフォーマンスが悪かった理由に減量苦が伝えられ足が痙攣する状態だったという。確かに、中谷戦はいつも以上に動きが硬く自慢のパワー・ショットは不発。もちろん、中谷が強かったこともあるがロペスは過大評価、評価は下落傾向にあった。

 優れたジャブを持ち長身でリーチもありパワーもあるコミー戦は苦戦する見方もあったが2ラウンド、カウンターの右ストレートでコミーの顎を撃ち抜きダウンを奪い、立ち上がったコミーを追撃しストップ勝ちしたことで株をあげた。

 一方で、高い身体能力、パワーを持つことはパフォーマンスで証明したものL字ガードはルーズでコミーに何度も顎を跳ね上げられディフェンスに課題があることが改めて浮き彫りになっている。そして、懸念されるのが中谷戦のパフォーマンスだ。

ロペスは新たなアシスタントを迎える

 中谷戦のパフォーマンスの影響もありロペス陣営には強力なアシスタントがリチャード・コミー戦のキャンプから参画している。ロペス陣営はヘッドト・レーナーに父ロペスSr.がついていたが、元世界王者のジョーイ・ガマチェがアシスタント・トレーナーとし就任している。

 ガマチェは、トレーナーとして大きな実績はないがタイソン・フューリー(英)を追い込んだオット・ワーリン(スウェーデン)のヘッドトレーナーを務めワシル・ロマチェンコのキャンプに参画した経験を持つ。

 「ロマチェンコはライト級は適正ではない。ペドラサ、キャンベル、リナレスに勝ったが、それまでとの戦いとは違いタッチすることを許しリナレスには撃ち落とされている。テオフィモは正真正銘のライト級だ。ボクシングも出来るしパワーもある。彼らとの違いをみせつけるだろう」とコメント。ロマチェンコとのキャンプで企業秘密を得たかどうか言及は避けたもの、ロペスが勝利する鍵は自分がもっているという。

 ガマチェ氏は強力な援軍だが、高等スキルを持つロマチェンコと長期戦になり技術戦になった場合に対抗できるアビリティがあるのかどうか。ポテンシャルが高いことは事実だが、まだ顎の強度、タフネスなど証明されてないことは多い。

ワシル・ロマチェンコ戦績

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ワシル・ロマチェンコ
出身 ウクライナ
スタイル サウスポー
身長 170cm
リーチ 166cm

アマチュア戦績 397戦396勝1敗
2012年ロンドン五輪ライト級金メダル
2008年北京五輪フェザー級金メダル
2011年世界選手権金メダル
2009年世界選手権金メダル
2007年世界選手権銀メダル

プロ戦績 15戦14勝10KO1敗 KO率66%

 現代ボクシングの最高傑作とも言われるのがロマチェンコだ。一見、手数は多いように見えるがそこまで多くなくパンチの精度は極めて高い。相手を誘いだす左右の素早い動き、サイドから周りこみ相手の背面まで周りこみ安全圏を確保してから強打を放つのはロマチェンコの18番。パワー・ショットは見た感じ8割くらいか。あえて一撃で倒さずコツコツとパンチを着弾させ相手を消耗させて勝つのがロマチェンコのスタイルだ。

 そして、攻撃だけでなくフットワークも自在に使いこなし接近戦のガード、ボディワークも鉄壁。攻防の切り替えもスピーディ。リスクを最小限にして相手のパンチをもらわずにいかにして相手を叩くかを主眼にした盤石なスタイルを持つ。

 ロペスとは対照的なキャリアなのがロマチェンコだ。五輪2大会連続で金メダルを獲得したロマチェンコは最短で世界タイトルを獲得するため米トップランク社(有力プロモーター)と契約を締結したエリート路線。2戦目でオルランド・サリド(メキシコ)のダーティー・スキルでプロの洗礼を受けたものオリンピアンのゲーリー・ラッセルJr.(米)と空位の王座決定戦に世界タイトルを獲得。プロで世界最速最短で世界タイトル獲得に成功した。

 フェザー級時代もロマチェンコの評価は高かったもの軽量級だけにそこまで注目を浴びていなかった。ネーム・バリューをあげたのがスーパーフェザー級デビュー戦となったローマン・マルチネス(プエルトリコ)戦だ。フェザー級では高度なスキルを持つがKOが少なく物足りなかったが、マルチネスを何度もダウン寸前に追い込み最後は失神KO勝ちしたことで一気に評価を上げた。

 スーパーフェザー級にあげてからというもの4試合連続で相手を棄権に追い込み存在感を示している。ニコラス・ウォータース(ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(米)といったトップ・コンテンダーを棄権に追い込み、報酬、ウェイトで合意が難しいと見られていたギレルモ・リゴンドー(キューバ)戦が合意。PFP対決として注目をあつめたものロマチェンコが終始支配して、リゴンドーが棄権した。

ロマチェンコ、ライト級限界説

 一時はスーパーライト級に上げる見方もあったが「適正はスーパーフェザー級なんだ」本人が言うようにライト級では適正階級を超えてしまった感はある。米ニューヨークの殿堂マディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)でWBA世界ライト級王者ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)戦が締結。当初、HBO(米プレミアム・ケーブルTV局)がゴロフキン対カネロ再戦の再放送枠を予定しているのが交渉のネックとなっていたが、カネロのドーピング違反が発覚し試合が中止となり急転直下、締結した。

 オッズはロマチェンコに傾き米のボクシング専門メディアリング誌のあいだでもロマチェンコ有利な見方がほとんどだった。イスマエル・サラス氏とコンビを組みライト級で評価を上げたリナレスとはいえ、これは仕方がないのかもしれない。ロマチェンコは4試合連続で”ノー・マス・チェンコ”で葬ったからだ。しかし、試合は拮抗した。

 2人がリングで対峙すると圧倒的にリナレスが大きくサイズの違いは明白だった。当日のウェイトは152ポンド、フィジカル有利のため増量したのだろう。序盤、様子を伺い中盤以降は自身のペースに持ち込むロマチェンコだったが、リナレスは左サイドからの周り込みを肘を使いビボットの原理で遮断。そして6ラウンド、リナレスの右ストレートが火を吹きロマチェンコがプロ初のダウンを喫した。

 9ラウンドまでのジャッジのスコアカードはドロー、リナレス(86ー84)、ロマチェンコ(86−84)、ドロー(85−85)だった。プロ初のダウンを喫し劣勢になったものその後は立て直し10ラウンド、ボディでTKO勝ちを収めた。

 ロマチェンコはプロ初のダウンを喫したもの挽回力を証明したが、スーパーフェザー級のときの超人的な強さは影を潜めた。リングIQは依然として高いが1階級上げたことによるパワーレスはより鮮明となり階級の壁が顕在化した。

 そして、PBC(プレミア・ボクシング・チャンプオンズ)から移籍したWBO世界ライト級王者ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)戦が内定。またしても、オッズは大きくロマチェンコに傾いた。試合は12回までもつれこんだが2度のダウンを奪い3−0の判定勝ちしたもの、囁かれるのがライト級限界説だ。

 珍しくロマチェンコは「肩の回復が万全ではなかった」と珍しく言い訳にも聞こえるコメントを残した。ロマチェンコは、リナレス戦で肩を負傷し内視鏡手術を受けいてた。そして、アンソニー・クローラ(英)を4ラウンドで仕留めると、近代ボクシングの発祥地である英国で、同じ五輪金メダリストのルーク・キャンベル(英)と対戦し3−0の判定勝ち。

 ライト級では、ホルヘ・リナレス、ホセ・ペドラサ、アンソニー・クローラ、ルーク・キャンベルと強豪を下している。体格差、フィジカル、パワーと大きな高いスキルと適応能力がありライト級で戦えているとはいえ、身体の大きさ、フィジカルの差は大きい。

ロマチェンコ対ロペスは戦争

 “War of Words”このイベントがなぜそう呼ばれるのか。

 トップランクが将来的にロマチェンコと次世代を担うロペスを米ニューヨークの地で戦わせることを目論んでいたことは言及するまでもない。ロマチェンコ戦を臨むのは理解できるが「ロマチェンコは好きではない」など発言はエスカレート。ロペスがロマチェンコを執拗に挑発する理由はわからなかった。その発端となったのが2人が出場した2018年12月8日米ニューヨーク、MSGで開催されたイベントだった。

 米スポーツ・イラストレッド社の記事が興味深かった。記事のトップランク社マッチメーカーのブラッド・グッドマン氏が目撃談によると、試合2日前、米トップランク社が開催した記者会見でこの日ヘッドラインを務めるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の隣にロペスが着席したことがロペスの父親は面白くなかったという。

 その夜、グッドマン氏は記者会見が行われたスチュワートホテルのエレベーターの脇で座っていると、ロマチェンコががファンにサインする姿がみえたという。そして、ある事件が起こる。グッドマン氏を含め2人がこのシーンを目撃しているという。

 ロマチェンコがファン・サービスをしている脇をロペスの父親が通り過ぎエレベーターで部屋に戻ったんだけど、またUターンし戻ってきたんだ。「この小人が」と罵声を浴びると喉を切り裂くジェスチャーで威嚇すると「テオフィモはこの試合でスターになる。おまえのキャリアは、PFPで最高の1人のボクサーとされてないテオフィモによって終わるんだ。テオフィモが殺すだろう」とロマチェンコに詰め寄ったという。

 一部始終を見ていた野次馬のあいだではロマチェンコは動揺しているというよりは混乱しているように見えたという。グッドマン氏はロマチェンコのマネジメントを務めるエイジグ・クリマス氏へ電話。クリマス氏は激怒していたという。

 どこまでが事実なのか不明だがロペスの父親は目撃談を否定しなかった「エレベーターで一緒になった時、挨拶したとき彼は無視したんだ」と当時を振り返る。試合前の舌戦は互いをリスペクトしていることがほ殆どでショー・ケースだが今戦はそれだけではないように思える。

 そして、ロマチェンコと一悶着あったロペスの父はエレベーターに戻りテオフィモへそのことを話すと「心配しなくても平気だよ。父さんが正しかったことを証明すると」といったという。

ロマチェンコ対ロペス試合予想

https://twitter.com/in44y1/status/1316170999818121216

 有利なのがロマチェンコだ。オッズ、米リング誌のアナリスト予想でも全員がロマチェンコ勝ちを予想している。ロペスが勝てば番狂わせ新旧交代劇、ニュースター誕生となる。

 筆者の予想はロマチェンコ判定勝ちだ。ロペスはパワー、スピード、アジリティといった身体能力に優れ、マイク・タイソン(米)、ダニエル・ジェイコブス(米)と数々のスターを輩出している米ブルックリン出身の次期スター候補の顔の1人だが、ロマチェンコに勝てる武器をもっているだろうか。

 リングIQの高いロマチェンコはペースを引き寄せることに長けている。ライト級にあげてからリナレス、ペドラサ、キャンベル戦は楽でなかったが、体格差を埋めたのが”ハイ・テク”のスキルだ。

 序盤はいつものようにロマチェンコはロペスの実力を測る時間に使い、徐々にペースアップしロペスの攻撃を空転させハイ・スピードなコンビネーションで消耗させるだろう。ロペスのカウンターは脅威だが、ロマチェンコは高い防衛能力を持っている。反撃はディフェンスと殆ど同時で必要最小限の動作だ。ロペスが待ちスタンスであればチャンスは少なくなる。

 ロペスはロマチェンコを撃ち落とすスピード、パワーを持っている。だが、そのパンチを当てることができるだろうか。ロペスはパンチだけでなくスマートなボクサーだと豪語するが、それを証明した試合はない。

 L字ガードはルーズ、中谷、カミー戦ではジャブで何度も顔面を跳ね上げられている。中谷戦では、状況を打開することができなかった点もマイナス材料だ。すきを見せればハイ・テンポのパンチがロペスを襲うだろう。ただ、ロマチェンコにとっても簡単な戦いにはならずロペスがロマチェンコの潜在的な能力を引き出すかもしれない。

 試合予想は難しくはじまってみないとわからないことのほうが多いが、年内では最高クラスの戦い。ゴングを楽しみに待ちたい。

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