米Athletic社が、ボクシング17階級あるうち階級クラスを無視して誰が最強かを決めるパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングを発表した。首位はもちろん、PFP傑作でメジャー4団体を制覇に掲げるWBA・WBC・WBO世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)だ。2位にメキシカンを代表とするWBC・WBA世界ミドル級統一王者サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、3位WBOウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)、4位IBF世界バンタム級王者井上尚弥(大橋)がランクしている。

 米Athletic社の記者は、インサイダー情報で有名な以前はリング誌にも寄稿していたマイク・クッピンガー氏、ロサンゼルス・タイムズ氏の記者だったランス・パグマイア氏、ラフェ・バーソロミュー氏の3人の投票で決まる。PFPは、米国で権威あるリング誌の価値が最も高いと認識されているが、リング誌は投票ではなくESPN(米スポーツ専門チャンネル)やAthletic社と比較するとランキングの経緯は実はクリアーではない。

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1位ロマチェンコ

photo by:boxingscene


 まさに、トップ・エリート街道を歩み成功を収めているのがロマチェンコだ。2大会五輪連続で金メダルを獲得したロマチェンコは、世界最速最短で3階級制覇を達成した。プロ入りから最短で世界タイトルマッチのルートを狙うロマチェンコは、マネージャーのクリマス氏とプロモーターを吟味し最終的に北米で実績あるトップランク社(米有力プロモーター)と契約することで落ち着いた。

 が、プロ2戦目でプロの洗礼を受けることになる。WBO世界フェザー級王座決定戦をオルランド・サリド(メキシコ)と争ったものサリドのダーティー・スタイルに苦戦して判定負けを喫した。2戦目での王座獲得は失敗に終わったが、翌年オリンピアンのゲーリー・ラッセルJr.(米)とWBO王座を争い判定勝ちし世界最速最短で世界王者となった。

 ロマチェンコはその後も順調に勝ち進んでいたが、ウクライナ出身、軽量級というマーケットが薄いこともあり商品価値は急激に上昇しなかった。ロマチェンコのネーム・バリューを上げたのはスーパーフェザー級に階級を上げてからだ。

 階級を上げ米ニューヨークの殿堂MSGシアターに初登場、ローマン・マルチネス(プエルトリコ)に何もさせずTKO勝ち、何よりも目立ったのはパワー・アップだった。フェザー級ではスキルは際立っていたがパワー不足感があった。この試合で一気に株が右肩あがりになりPFP傑作としての存在感を強めていった。

 その後、ニコラス・ウォーター(ジャマイカ)と対戦、ウォータースは過大評価されていた感はあるもの戦意喪失に追いこんだ。続くジェイソン・ソーサ(米)戦もコーナー陣営に絶望感を与えTKO勝ち。話題は誰がロマチェンコをストップできるかだった。

 そして、ツイッターで話題となっていたギレルモ・リゴンドー(キューバ)戦が米ニューヨークMSGシアターで締結。2大会五輪ゴールドメダリスト同士の対決は、コバレフ対ウォード戦に続きPFP頂上決戦として大きな話題を呼んだ。ふたを開けてみればロマチェンコの圧勝、PFPに名を連ねるギレルモ・リゴンドーを一蹴したことでPFP首位は確実視された。

 そして、層の厚いライト級へ進出。階級を上げ初戦で当時WBAタイトルを保持するホルヘ・リナレス(ベネズエラ)へ挑戦。会場は米ニューヨークMSGシアターではなく、2万人の観客が収容できるアリーナの大舞台が用意された。ロマチェンコを研究尽くした感のリナレスは、”ハイテク”の攻撃をことごとく遮断しペースを渡さずダウンを奪いロマチェンコに対抗したが、最後はボディが突き刺さり立ち上がることはできなかった。

 この試合で、スーパーフェザー級で超人ぶりを示していたロマチェンコだが、いよいよ階級の壁が見えはじめてきた。実は、ロマチェンコはこの試合で肩を痛め内視鏡手術を受けている。

 そして、初防衛戦の相手はプエルトリカンのホセ・ペドラサ、試合後に顔を腫らしたロマチェンコ。ペドラサの健闘もめだったが、高等スキルを持つロマチェンコが際立つ試合だった。しかし、一方でライト級限界説が浮上し、肩が万全ではなかったと珍しく言い訳にも聞こえる発言をしたロマチェンコは、その後、英国の人気者アンソニー・クローラと対戦、直近の内容とクローラのタフネスを評価する声もあったが、4回TKOで仕留め評価を上げた。

 右肩上がりで評価をあげたロマチェンコ。今後は、PFPの座をキープしていくことは簡単ではない。どうやって自身の商品価値を上げていくのかが課題になる。次戦はIBF王者リチャード・コミー(ガーナ)対テオフィモ・ロペス(米)との4団体王座統一戦が濃厚だが、うしろから急ピッチで成長し続けるカネロが追い上げてくる。

 今以上に評価をあげるには階級をあげるか、4階級制覇を達成したマイキー・ガルシア(米)、若武者ガーボンタ・デービス(米)を打ち破り、商品価値を一気に引き上げるしかない。おそらく、カネロが11月2日コバレフに勝てばPFPランクに1位に躍りでる公算が高い。

 スーパーウェルター級からミドル級を制したカネロ、目指すは後世に名を残すファイターだ。コバレフは下降線だが、若いヤード相手にサバイブして勝ち階級屈指のパンチ力は健在で危険な相手に変わりはない。ESPNのライトヘビー級では2位、かつてはPFP上位に上り詰め実績レベルでは現ライトヘビー級で高い位置にいる。

 コバレフに勝てばPFPボクサーはゴロフキンに続き2人目、ロマチェンコとPFP首位の座を交代する可能性は高い。プロモートするトップランク社のボブ・アラム氏が、31歳いまが全盛期のロマチェンコに対しどんなシナリオを描くのか興味深い。

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