“MURATA is back !” 完璧なリベンジ劇、リングを見守る観客は総立ちレフェリーがストップした瞬間、エディオン・アリーナ大阪のボルテージは最高潮に到達した。こんなシーンを見たのは長谷川と山中がエディオン・アリーナで共演した以来だったかもしれない。

 WBA世界ミドル級タイトルマッチが12日、大阪にあるエディオン・アリーナ大阪で行われ村田諒太(帝拳)が2回、ダウンを奪いTKO勝利を飾り王座を奪還。圧倒的な内容は、カネロ、ゴロフキン、チャーロらミドル級強豪クラスが居るメイン・ストリームに戻ったことを証明した戦いだった。

 リベンジに成功しWBA王座を取り戻した村田は17戦15勝12KO2敗、ブラントは27戦25勝17KO2敗(1KO)とした。村田は、メキシカン・スーパースターWBA・WBC・IBF世界ミドル級統一王者サウル・カネロ・アルバレスやゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)らとのビッグ・ファイトを目指す。


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村田対ブラント初戦は重要な一戦だった

 2018年10月、ブラント戦はドリーム・マッチの前哨戦でキャリアで重要な一戦だった。ゴロフキン戦を見据え米ラスベガスの舞台が用意され、オッズは村田が有利。プロでは実績こそ上回るがブラントが村田のプレス、パワーショットに屈する見方が殆どだった。

 これまで、村田は全てが順風満帆だった。ロンドン五輪ミドル級で金メダルを獲得した村田、トップランク社(米有力プロモーター)と契約。日本では大手企業とスポンサー契約を結び日本国内ではボクシングの枠を超えた存在だった。

 アッサン・エンダムとの王座決定戦は判定結果に泣いたが、物議を醸した判定結果はソーシャル・メディアを通じて世界的に大きな反響となり国内での村田の知名度を押し上げた。悲劇のヒーローとなった村田は因縁の再戦でエンダムを下し念願の王座を獲得した。

 横浜アリーナで初防衛戦を終えた村田は、米ラスベガスやマカオでカジノ、ホテル事業を展開する統合リゾーツ社と知られるMGMとスポンサー契約を結び、決戦地はビッグ・ファイトの聖地米ラスベガスにある5000人を収容できるMGMパークサイド・シアター。ラスベガスでメインを務める日本人としては最大級の舞台が用意された。

 村田の夢を打ち砕いたのがロブ・ブラントだった。第1戦目のオッズは村田有利ながら、大方の予想を覆し大差の判定勝ち。村田にストップをかけ大番狂わせを起こしたブラントは、村田が契約を結ぶ米トップランク社と契約を結ぶことに成功した。

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村田、ブラント再戦は難しい

photo by:boxingscene

 以外にもオッズはそこまで差がついてなかった。直前のウィリアム・ヒルのオッズは、ブラントが1.29倍、村田が3.5倍だった。

 夢を打ち砕かれた村田はリベンジを果たせるだろうか。再戦は返り討ちにされるケースは珍しくない。最近では、前WBA世界スーパーフェザー級王者アルベルト・マチャド(プエルトリコ)が、アンドリュー・カンシオ(米)との再戦で返り討ちにあっている。

 第1戦の内容から海外メディアをはじめ、再戦は村田が勝つことが難しい見方も少なくなかった。初戦は大差の判定負け、内容的にも良いところがなく完敗。筆者は、ブラントは村田の天敵となるスタイルで勝つことは難しいと予想していた。

 ミネソタ州出身のブラント、第1戦ではアンダードッグだった。ブラントは村田の強いプレスから逃れることはできない。押し込まれ最終的には村田の強打に沈む。まさに再戦の結果となる予想が殆どだった。

 「彼は基本に忠実でワン・ツー・スタイルのボクサーだね。彼は真っ直ぐにでてくる。そのスタイルが彼の良いところだけど、今まで村田が戦ってきた相手は、彼にとって丁度いい相手だった。彼らは、はじめから村田を恐れていたしね。俺は、村田のスタイルが多くの問題を抱えていると思っている」
 試合前の会見でクローズ・アップされるの自分ではなく村田とゴロフキンの話題ばかり。自身が村田の踏み台になるという認識で、今戦で番狂わせを起こしてやろうという強い気持ちがあったに違いなかった。

 ブラントは、日本で重責を担う村田とは対照的で失うものは何もない。対して、村田はキャリアで最も重要な一戦で落とすことができない試合だった。

 日本では総力をあげるビッグ・プロジェクトが進行中だった。もちろん、それはゴロフキン戦だ。米ラスベガスの舞台が用意され中継にはDAZN(ダ・ゾーン)が乗り出し数億円規模のプロモーションをうった。ブラント戦をクリアすれば元統一ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキンとのビッグ・ファイトの交渉が具体化するはずだった。

 ブラントの評価が低かったのは、WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)1回戦で、ピークを過ぎたユリゲン・ブレーマー(ドイツ)に敗退を喫していたからだろう。しかも、ブラントは米国人でありながら殆んど無名に近く戦績こそミドル級では無敗ながら実力者との経験はなかった。

 しかし、村田が有利だったもの今戦にかけるブラントは、期待値を上回るパフォーマンスで村田を圧倒。ブラントはミドル級史上2位となる1262発という驚異的なパンチを打ち込んだ。

 12ラウンド、性能低下することなく機能するフットワーク、村田自慢の右のビッグ・ショットは左右のフットワークに揺さぶられ、ブロックはアッパーで起こされ無効化、ワンツーはステップ・バックされ、打ち終わりに高速の連打を合わされグラつく危ない場面もあり、村田はキャリア最大の敗北を味わった。会見でゴロフキン戦について言及していた村田、もしかしたら油断があったかもしれない。

 初戦から再起を決意した村田、一時は引退も考えていたという。早期に進退を決断するのは難しかったはずだ。ゴロフキンとのビッグ・プロジェクトが頓挫。現役続行したとしてもタイトルチャンスはいつ来るかも分からない。日本の期待を一斉に背負う村田は、期待に応えられなかったことは精神的なダメージもあっただろう。

 再起戦の候補としてマニー・パッキャオ(フィリピン)に勝利したジェフ・ホーン(豪)が候補に挙ったが、7月はホーンの妻が出産予定で交渉はまとまらなかった。

 「彼らが再戦に関心を示していることは聞いていたよ。それは当然のことだと思う。彼は、米国に来て僕にタイトルを獲得するチャンスを与えてくれた。今度は、僕が日本に出向き彼にチャンスを与える」
 もちろん、アウェイとなるブラントにはかなりの報酬が約束されていた。「村田をまたうち下すよ」初戦で村田を抑えたブラントは、返り討ちに自信を見せていた。

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村田はブラント再戦に完勝、商品価値を持ち直した

photo by:boxingscene


 200発以上のパンチを放った村田は短期決戦、チャンスがあればブラントを一気に沈める気だったのだろう。足が速いブラントに回復の機会を与えてはペースを掴ませることになり兼ねない。初戦は完敗したことで、スタイル・チェンジが言及されたもの、従来持っているスタイルを大幅に変えることなく、多少の被弾は覚悟の上で早期に仕留めに入ったのは正解だった。

 1回、ゴングと同時にブラントは、初戦と同様フットワーク、ステップ・バックを上手く使い回転力のある連打を村田にあわせた。一方の村田、ジャブは少ないものロングから上下にパワー・ショットを散らし、ブラントを丁寧にコーナーに追い詰めていった。

 足の速いブラント。プレスをかけブラントの足を止めさせることが重要。そういった意味では、ロングのボディで下がらせコーナーに追い詰める作戦は有効的だった。ブラントを守勢に回らせれば、村田が得意のインサイドで強烈なボディ・ブローも合わせやすい。

 実際、後退を強いられ退路を失ったブラントは、1回終了間際に打ち合いに持ち込まれた。村田の右のカウンター、追撃の右が火を吹き一気に形勢が変わった。足が使えなくなったブラントは、打ち合いに応じるしかなかった。

 2回、村田の強打を浴びたブラントは、1回より警戒感を増しパンチの打ち込みも浅く、防御に意識を集中。ブラントが守勢に回り手数が減ったことで、村田のチャンスが増えた。

 村田は、ブラントの左フックの打ち終わりに右ストレートをねじ込み、ブラントがグラつき防戦一方。コーナーに追い込みダウンを奪いこのパンチが決めてとなった。ブラントは、回復にクリンチするわけでもなくダウンするしか選択の余地がなかったのかもしれない。

 ブラントは立ち上がるもダメージは大きく打ち返すことはできず、立っているのがやっと。今戦にかける村田は、体力の許す限りブラントにパンチを浴びせ続けた。2回終了の30秒をきったところで、インサイドで右のダブルを打ち込みレフェーリーが試合を止めた。

 パンチ・スタッツは以下の通り。

選手 トータルパンチ ジャブ パワーパンチ
ブラント 143発中42発 29% 44発中6発 14% 99発中36発 36%
村田 211発中98発 46% 38発中5発 13% 173発中93発 54%

 米スポーツ専門チャンネルESPNによれば、村田が2回ブラントに放ったパワー・パンチは64発、パンチを集計するCompuBoxで集計するミドル級で史上2番目となる記録となった。

 「村田は素晴らしかった。次はカネロと戦う準備ができている」
 村田を帝拳プロモーションズと共同プロモートするトップランク社ボブ・アラム氏はこう語っている。

 カネロは、ミドル級いや全階級でもっとも商品価値が高いメキシカン・アイドルだ。現段階でカネロ戦実現は現実的ではないが、今戦を経て村田がミドル級の世界のラインにふたたび戻ったことは間違いない。今後のマッチメークは、復帰戦の候補にあがったジェフ・ホーン(豪)が有力候補の1人だろう。

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