やはり、大晦日のメインを務めるのはこの男しかない。日本人として初となる4階級制覇を達成したWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(大貫)/26戦24勝14KO2敗は12月31日東京・大田区総合体育館で、同級1位ジェイビエール・シントロン(プエルトリコ)/12戦11勝全勝5KOと初防衛戦を行うことが正式に発表された。

 井岡は、2011年12月31日、ヨードグン・トヤルンチャイ(タイ)戦から大晦日興行は実にこれで8度目となる。これまで、井岡の地元関西地方が中心だったが、今回は初の東京での大晦日興行となる。

 井岡は「4階級制覇という印象がうすれないように、ここでまた勝ちたい」とコメントした。2018年引退を撤回して、米国を拠点に移しスーパーフライ級に階級をあげた井岡の評価は以前よりも上がり、2019年10月時点の米リング誌のスーパーフライ級での評価は3位となっている。

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評価をあげた井岡

photo by:boxingscene


 米メディアの評価はともかく、ファンの間で評価を上げたのは、スーパーフライ級にあげてからマッチメークでリスクをテイクする姿勢がとれたことも1つの理由としてある。フライ級時代の井岡の強さは認める声もあるが、マッチメークに苦言を呈す声も少なくなかった。井岡は自身が最強であることを証明するためにカム・バックしたことは間違いない。

 なにせ、プロモーターが用意したスーパーフライ級米国初戦の相手がボクシング王国プエルトリコ出身のトップ・アマ出身のマックジョー・アローヨだったのである。井岡の対戦相手には十分な相手だが、現役引退して17ヶ月、チューン・アップ戦としてはリスキーな相手だった。

 世界選手権、北京五輪にも出場した経験があるマックジョ・アローヨは、当時PFP(パウンド・フォー・パウンド)1位に君臨していたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が手を焼いた相手だった。アローヨは、井岡が現役復帰を決めた米プレミアム・ケーブルTV局HBOが中継するSuperfly2でカルロス・クアドラス(メキシコ)を下した相手で、この戦いは文字通りつぶしあい。勝ち上がる必要があった。

 多彩な戦術を誇る井岡は、アローヨの得意の距離をことごとく潰して積極的にパンチを当てダウンを奪い3−0(97−92 2者99−90)の大差の判定勝ちで米デビュー戦で白星を飾った。試合後は、珍しく顔を晴らしたがどこか清々しく感じた。その後、当時、米リング誌のパウンドー・フォー・パウンド(PFP)に名を連ねるドニー・ニエテス(フィリピン)と空位のWBO世界スーパーフライ級王座決定戦は、高度な技術戦となったが勝ったのはニエテスだった。

 その後、ニエテスに敗れはしたがWBOの上位ランカーに君臨していた井岡は、ニエテスが返上した空位のWBO決定戦をアストン・パリクテ(フィリピン)と争うチャンスを掴んだ。パリクテはニエテスを苦しめた相手で、フィジカルが強くスーパーフライ級でパワー不足感がある井岡にとって簡単な相手ではなかった。

 そして、今回現役復帰に至っては井岡にとって強力なバックアップ体制が敷かれた。アローヨ、ニエテスと万能型であることを示した井岡は、かつておじの井岡弘樹氏のトレーナーを務め、井岡も基礎を叩き込まれた米ラスベガスにジムを構え日本に居住していたこともあるイスマエル・サラス氏がヘッド・ドレーナーに付き、内山高志を教えた佐々木修平氏がトレーナーに就任。井岡のベースは、サラス氏にあると言っても過言ではない。

 リーチがあるパリクテは、井岡が入れないロング・レンジからジャブをだし距離をつめ接近戦で強力なアッパーを放っていった。一方、サラス氏がバックに付く井岡は序盤は様子見。リード・ジャブを上手く使い、パリクテが入ってくるところにカウンターの右から左フックの返しで迎撃。ガードも上手く、パーリー、フットワーク、タッグと複合的に使い致命的なパンチは殆ど外した。

 中盤、井岡が匠な距離感と高い防衛力で主導権を支配。7回、パリクテは勝負に走りハード・ショットを井岡に打ち込んでいった。井岡も自分の得意とするファイト・スタイルではないが勇敢に打ち合った。

 終盤も殆ど井岡が主導権を握り。出入りを利用して、ジャブで入りこみ高速回転を上下に打ち分けていった。そして10回、フィニッシュも抜かりなかった。右ストレートでフィリピン人をぐらつかせ井岡は一気に勝負にでた。左ボディでえぐり、相手が打ち返すなか右ストレートでさらに追撃。ロープに追い詰めた井岡は連打をまとめレフェリー・ストップ。日本人史上初の4階級制覇の偉業を達成した。

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相手はトップ・エリートのシントロン

photo by:boxingscene


 今回の相手ジェイビエール・シントロン(プエルトリコ)はプロ通算12戦全勝5KO。プロキャリア僅か2年だが、ロンドン、リオ五輪と2大会連続で五輪代表を務めたアマ・エリート。トップランク社(米有力プロモーター)が抱える中南米のスター候補の1人だ。

 シントロンは、父ハビエル・シントロンは軽量級のボクサー、母は女子の公式ジャッジを務めたボクシング一家に生まれ育っている。アマチュアで頭角を現したシントロンは、強豪ひしめく米大陸予選を経てロンドン五輪の切符を手にいれベスト8入り。選手村で米有力プロモーターのゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)のオファーを蹴りリオ五輪に方針を固めた。

 しかし、AIBAが年齢制限を19歳以上としたことでシントロンは国際大会に出場できない事態に陥り、2013年プエルトリコの全国選手権でフライ級を優勝したが世界選手権の権利を得たのはシントロンに敗れたオルティスだった。その後、19歳になったシントロンは、WSBの契約選手となりリオ五輪代表となったが、1回戦でオルザス・サティバエフ(カザフスタン)に敗れた。

 リオ五輪後は、数々のオリンピアンや有力選手を抱えるトップランク社と契約を結んだ。この年、トップランクはシントロン以外に、テオフィモ・ロペス(米)、シャクール・スティーブンソン(米)、マイケル・コンラン(アイルランド)らと契約を結んでいる。

 トップランクと契約したことでプロ10戦目で江藤光喜とWBO世界スーパーフライ級挑戦者決定戦のチャンスを掴んだ。江藤に1回KO勝ちに終わったが、シントロン陣営がバッティングだと主張。右ストレートがあたったように見えたが試合を管轄したコミッションが映像を解析すると、バッティングによるダウンで江藤の勝ちは取り消され無効試合。因縁の再戦が3ヶ月後にセットされシントロンが2回、江藤からダウンを奪い3−0(99−90)大差判定勝ちで井岡への挑戦権を手に入れた。

 フライ級時代のマッチメークとは一線を課すマッチメークだ。現役復帰から米国に拠点を移し迎えた米国デビュー戦の相手が中南米トップ・アマ出身のマックジョー・アローヨ(プエルトリコ)、二戦目にして軽量級でPFPファイターに名を連ねるベテランのドニー・ニエテス(フィリピン)、アストン・パリクテ(フィリピン)と戦ってきた相手は十分な実績がある。


 そして、今回は米有力プロモーターが抱える期待のシントロンが相手だ。井岡は、プライベートでは第一子となる長男が誕生し順風満帆。4階級制覇という記録だけでなくシントロンを下し2020年には、他団体王者WBC世界スーパーフライ級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との歴史に名を刻む名勝負を実現して欲しい。

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