ジャーモール・チャーロ対セルゲイ・デレイビャンチェンコ2人の戦績と試合予想

 WBC世界ミドル級王者ジャーモール・チャーロにとって厳しいテストになる。ミドル級トップ集団2人と善戦したセルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)を下せばジャーモール株は急伸することは間違いない。これまでのイメージは払拭される。それだけにキャリアで重要な一戦を迎える。今回は、試合背景から2人の戦績と予想を紹介する。


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 ミドル級で防衛戦を重ねるも評価が低調なのがジャーモール・チャーロ(米)だ。破壊力がありミドル級で脅威となる存在と言われたもの、全盛期を過ぎた相手に大苦戦。いまだトップクラスの実力者との対戦はなくクエッション・マークがつきまとう。

 スーパーウェルター級時代はトップコンテンダー2人を退けミドル級転向。ダーク・ホースと言われていたこともあるが、全盛期を過ぎたマット・コロボフ(ロシア)に苦戦。その後のブランドン・アダムス(米)戦も不調と中堅クラスに勝ちはしたが存在感はいまひとつ。喫緊の課題は実力者相手に明確に勝つことだ。そういった意味でもゴロフキン戦でネームバリュー、評価を上げたデレイビャンチェンコを完璧に仕留めればジャーモール株は急伸する。

 無冠ながらトップ戦線に躍りでたのがデレイビャンチェンコだ。豊富なアマチュア実績をもつテクニシャンはプロ戦績15戦13勝10KO2敗。当時、ミドル級トップラインだったダニエル・ジェイコブス(米)、元統一王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、トップクラスとタイトルマッチに臨んだもの2敗したが、善戦したことで高い評価を得ている。

チャーロ兄弟、初のPPV売れるのか

photo by Showtime


 そして、注目なのがShowtime(米ケーブルTV局)がPPV(ペイ・パー・ビュー)配信することだ。Showtime重鎮スティーブン・エスピノーザ氏は30万世帯に売れればと喜ぶがそこまで購買件数を伸ばすことができるか不透明だ。価格が40ドル前後ならまだしも設定価格は74.99ドルと割高感は否めない。

 まだ、全国レベルでないチャーロ兄弟。不正ストリーミングの影響もありトップスター選手であってもPPVを売ることが難しい状況下で30万世帯が購買すれば大成功。いいところ、10万〜15万件くらいに落ち着くのではないだろうか。まずは、ざっと2人の戦績をみてみよう。

セルゲイ・デレイビャンチェンコ 戦績

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身長 175cm
リーチ 171cm
年齢 34歳
出身 ウクライナ
スタイル オーソドックス

アマチュア戦績 390勝20敗
2009年世界選手権 ベスト8
2008年北京五輪 2回戦敗退
2007年世界選手権 銅メダル

プロ戦績 15戦13勝10KO2敗

 ウクライナのフェオドジアに生を受けたデレイビャンチェンコは、10歳の頃、父親に連れられボクシングをスタート。2001年までフェオドジアで父親と共にトレーニングを積みその後、プロ入りするまでヘッドコーチと生活を共にした。

 アマ戦績は400戦以上、世界選手権、五輪出場、ジュニアの世界選手権でもメダルを獲得しているアマ・エリートだ。アマチュア時代はPFP傑作WBA・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ、クルーザー級4団体を制覇したオレクサンドル・ウシク、オレクサンドル・グウォジクがチームメイトだった。

 2007年世界選手権でマット・コロボフ(ロシア)に敗れ銅メダル。2008年北京五輪ミドル級に出場。2回戦目で同大会で銀メダルを獲得したエミエリオ・コレア(キューバ)で敗れている。

僅か11戦目で世界挑戦権を獲得

 2014年渡米、妻と5歳の息子を引き連れニューヨークに移住。ニューヨークの興行を取り仕切るディベラ・エンターテイメントと契約。米本土で影響力のあるアル・ヘイモン氏が主催するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)を主戦場とした。

 プロ僅か15戦、ゆかりの地でない米国で順調にキャリアを築いていった。元IBF王者サム・ソリマン下し、トリアーノ・ジョンソン(バハマ)をKOで下しプロ入し僅か11戦目でIBF指名挑戦権を獲得。運、環境、タイミングに恵まれていた。

 当時、WBC・WBA・IBF3団体を統一していたゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)は、メキシカン・スターのカネロと再戦交渉中で直ぐにはタイトル挑戦できなかったが、カネロのドーピング違反が公になると事態が急転した。
 
 ゴロフキンはカネロとの再戦が中止。IBF指名挑戦者デレイビャンチェンコ戦を控えていたが、IBFは進んでいたマーティロスヤン戦をマーティロスヤン戦後にデレイビャンチェンコとの指名戦に臨むことを条件に承認していた。しかし、ゴロフキン陣営はドーピング違反の罰則期限が切れるカネロとの再戦にフォーカスしていたことは言及するまでもない。

 ゴロフキン陣営はIBFを説得するもルールに厳格なIBFは条件にサインしなければ王座剥奪の姿勢を崩さなかった。もちろん、マーティロスヤンでなくデレイビャンチェンコを選択することも可能だったとはいえ、9月カネロとの再戦前にリスキーな戦いを回避したかった思惑があったかもしれない。

 マーティロスヤン戦をIBFの承認なく強行したゴロフキンはIBF王座を剥奪。空位となった王座決定戦を同門のダニエル・ジェイコブス(米)と争うことが決まった。合意に向けヘッド・トレーナーがジェイコブスと同じアンドレ・ロジエール氏が務めていたことが懸念事項だったが、デレビャンチェンコ陣営にはゲイリー・スターク氏が就くことで決着。HBO(米プレミアムケーブルTV局)が250万ドルの資金を調達して合意した。

 米ニューヨークで迎えた初のタイトルマッチは1−2の判定負け。しかし、勇敢に立ち向かうデレイビャンチェンコの評価は上々だった。これまで、デレイビャンチェンコは高いスキルは評価されていたがトップクラスとの対戦がないだけに未知数なところがあったがミドル級トップクラスであることを証明した。

 ジェイコブス戦で評価をあげたデレイビャンチェンコは、ジャック・クルカイ(ドイツ)を破り再起に成功。ジェイコブスに善戦したこともありIBFの上位にランクされた。カネロがWBA・WBC・IBFの3団体を統一していたが、契約するGBP(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)との関係悪化が響きマッチメークの交渉は上手くいっていなかった。

 2階級上のWBO世界ライトヘビー級王者セルゲイ・コバレフ(ロシア)戦が具体化するも合意にいたらず。デレイビャンチェンコとの交渉が進んだもの、報酬をめぐり交渉は難航した。そうこうしているあいだにIBFの指名期限を迎えカネロは王座を剥奪された。

元統一ミドル級王者との決戦

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 そして、チャンスが回ってきたのがデレイビャンチェンコだ。カネロがIBFを剥奪されたことでIBF上位のゲンナディ・ゴロフキンと空位の王座決定戦が決まった。オッズはゴロフキンに傾いてたが、底力を見せたのがデレイビャンチェンコだった。

 オッズに開きがあったもの両者の力の開きはそこまでなかった。スキルに定評があるデレイビャンチェンコは序盤から機動力を活かし、ソリッドなジャブをつき、スピード、回転力を活かし接近戦でボディを突き刺しアングルを変えコンビネーションを畳み掛けた。

 スピード、パンチの回転で出入りのスピードで元王者を翻弄。ゴロフキンのパワー・ショットの脅威はあったが、リスクをテイクし勇敢に攻勢にでた。元王者をダウン寸前まで追いんだが判定は1−2。あと一歩及ばなかったが戦術は効果的だった。

 タイトルマッチ、2戦とも失敗におわったが多くのことを証明した。アグレッシブにでることもできるし、駆け引きにも対応することもできる。タフネス、12ラウンド動き続けられるスタミナ、打ち合いに応じることもできる引き出しの多さを披露した。

ジャーモール・チャーロ 戦績

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身長 183cm
リーチ 187cm
年齢 30歳
出身 米テキサス
スタイル オーソドックス
プロ戦績 30戦全勝22KO
WBC世界ミドル級タイトル
IBF世界スーパーウェルター級タイトル

アマチュア戦績 65勝6敗

 米テキサス州ファイエットで生まれたジャーモールはテキサスで育っている。双子で1分お遅く生まれたのはジャーメル・チャーロだ。ボクシングをはじめたのは8歳のとき。アマチュアボクサーの経験がある父親ケビン氏は、ジャーモールにボクシングを通じて規律を教えるためにボクシング・ジムへ連れて行った。

 恵まれた骨格をもつチャーロ兄弟は高校で、バスケット・ボールやサッカーをして育つが、引き寄せられたのはボクシングだった。弟のジャーメルは2007年にプロへ転向したが、ジャーモールは2008年北京五輪を目指した。しかし、つま先を負傷したことで五輪代表は叶わず弟の後を追い2008年プロへ転向した。

 プロへ転向し12戦全勝8KOのパーフェクト・レコードを築いたものスポット・ライトを浴びていたのは弟のジャーメルだった。はじめて、ジャーモールが注目されたのは2013年4月、地元テキサスにあるアラモ・ドームで挙行されたカネロ対トラウト戦のアンダーカードでメキシカンのオーランド・ローラと対戦した時だった。

 快進撃を続けるジャーモールは、IBF(国際ボクシング連盟)の指名挑戦権を獲得し。IBF王者コーネリアス・バンドレージ(米)を3回で葬った。同じイベントで弟のジャーメルがWBC世界スーパーウェルター級王座を獲得したことで同階級で双子の王者が同時に誕生するという快挙を達成した。

 初防衛に成功したジャーモールは、元WBA世界スーパーウェルター級王者オースティン・トラウト(米)と対戦し3−0の判定勝ち。その後、視力が悪かったことでレーシック手術を受けた。

 そして、IBF1位指名挑戦者で当時評価が高かったジュリアン・ウィリアムズ(米)と指名戦が決定。2ラウンド、ジャーモールがパワー・ジャブでダウンを奪ったが、ウィリアムズも高度な駆け引き、カウンターでチャーロに対抗した。5ラウンド、ウィリアムズのワンツーをクロスアームで流したジャーモールはカウンターの右アッパーが炸裂。ウィリアムズは何とか立ち上がったがダメージは深く、チャーロが強打をまとめ仕留めた。

 トップコンテンダーのウィリアムズ、トラウトを倒したジャーモールは、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、ダニエル・ジェイコブス(米)らがしのぎを削るミドル級転向を表明。セバスチャン・ヘイランド(アルゼンチン)とのミドル級試運転を終えはやくもWBC1位にランクされた。

 カネロ、ゴロフキンの再戦交渉で割り込みができないジャーモール。WBC(世界ボクシング評議会)はジャーモール対ウーゴ・センティーノ(米)戦をWBCミドル級暫定王座とすることで事なきを得た。カネロ対ゴロフキンの勝者との対戦を義務付けたが、勝者との対戦は実現しなかったことは言及するまでもない。

 晴れてミドル級正規王者となったがアマ・エリート出身のマット・コロボフ(ロシア)に大苦戦。続く、ブランドン・アダムス(米)も不発に終わりインパクトを残せず成長した姿を見せられていない。

ジャーモールはミドル級で脅威となる存在なのか


 破壊力をもつがまだトップラクラスとの対戦がないジャーモールの実力を疑問視する声も少なくない。まだ、ミドル級で説得力ある対戦相手を迎えていないことが大きな理由だ。米メジャー誌のランキングをみてみよう。

 まず、老舗米リングマガジン、ミドル級ランキングではジャーモール・チャーロ(米)は、WBO世界ミドル級王者デメトリアス・アンドレード(米)の次点となる3位の評価。そして、4位にセルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)がランクインしている。首位はWBAスーパー、リング誌のベルトを持つカネロ、1位IBF世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、5位WBA世界ミドル級王者村田諒太(帝拳)がランクしている。

 ESPNのミドル級ランキングも上位は米リングと同様となっている。
 1位 サウル・カネロ・アルバレス
 2位 ゲンナディ・ゴロフキン
 3位 デメトリアス・アンドレード
 4位 ジャーモール・チャーロ

 ジャーモールの評価が4位どまりなのは納得できる。ミドル級にあげまだ一度もトップレベルのボクサーを迎えていない。ウーゴ・センティーノ、マット・コロボフ、ブランドン・アダムス、デニス・ホーガン、何れもミドル級では2次グループの選手だ。もちろん、ミドル級の中心地はDAZNで契約するPBCがトップレベルの選手を傘下に収めてなくマッチメークが苦戦したことも背景にある。

ジャーモール対デレイビャンチェンコ予想

 50-50の戦いだと断言していい。オッズはチャーロに傾いているがそこまで開きはなく拮抗している。米記者らは殆どがチャーロの判定勝ちを予想。これは、ゴロフキン対デレイビャンチェンコ戦の時と予想が似ている。デレイビャンチェンコは優れたボクサーだと評価する一方、パワー・パンチャーのゴロフキンが最終的には仕留めるというのが大方の予想だった。

 筆者の予想は、デレイビャンチェンコ12回判定勝ち。年齢は34歳、峠をすぎたものジャーモールも勝つアビリティを多く保有しているからだ。好戦的なスタイルを持つ両者は打ち合いも好むことから、2020年間最高試合候補となっても不思議ではないだろう。

 攻防がうまく総合力が高いのがデレイビャンチェンコだ。そして、ダニエル・ジェイコブス、ゲンナディ・ゴロフキン、トップクラスと戦った経験はウクライナ人の大きな助けになるだろう。デレイビャンチェンコはミドル級では身長175cm、リーチ171cmと小柄。機動力を活かしゴロフキン戦と同じような戦略をとるだろう。世界タイトルマッチで2度敗北を味わったデレイビャンチェンコは序盤からエンジン全開でジャーモールを叩きに来ることは間違いない。

 パーワーショットでは、恵まれた体格をもちバネがある強打者のジャーモールに軍配があるが、そのアドバンテージを活かせる戦略をとることができるかどうか。序盤からデレイビャンチェンコのハイ・ペースを乱す有効なパンチをコネクトする必要があり、とりわけ懸念されるのがスロー・スターターなところだ。

 苦戦したマット・コロボフ戦でも序盤は殆どポイント・アウト。バックギアに入れたコロボフに左のカウンターを叩き込まれ幾度となく顔面を跳ね上げられ攻めあぐねた。終盤にコロボフをグラつかせたが、終始ベテランに翻弄されていた。そして、ブランドン・アダムス(米)戦でも上手くゲーム・プランが機能していたとは言い難い。

 ジャーモールがデレイビャンチェンコを上手くアウト・ボックスして、右が火を吹けば形成逆転の可能性はあるが、ゴロフキンとの戦いでタフネスを証明しディフェンスに定評があるデレイビャンチェンコを一発で仕留めることは難しいだろう。ジャーモールの攻撃能力、ヘッド・ショット狙いで引き出しはそう多くない。アグレッシブ攻撃が売りだが単調、ディフェンスはそこまで固くない点もマイナス材料だ。

 一方でデレイビェンチェンコにも不安材料がある。年齢的にも下り坂、プロ・キャリアは少ないがアマチュア400戦以上、ジェイコブス戦以降はハードなマッチメークが続いている。ゴロフキンに後一歩とかなり善戦したもの楽な戦いではなく、長いキャリアでのダメージが試合に影響を及ぼす可能性もある。
 
 一進一退の試合展開が予想される。一方的な試合展開とはならなくペース争いは12ラウンドまで続くだろう。序盤はデレイビャンチェンコがジャーモールのパワーショットを空転させ上手く立ち回り、ハードショットをコネクトすればジャーモールが窮地に陥る可能性もある。ただ、ジャーモールも今戦をステップ・アップ戦と見込んでおり過去最高のコンディションで臨むことは間違いない。はっきりいってどうなるか始まってみないとわからない。ただ、凡戦に終わるようなことはなくファンにとって素晴らしい戦いになることは間違いない。

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