【結果】ジェフ・ホーン対ティム・チュー、Sウェルター級タイトル挑戦できるか

 26日オーストラリア、ダウンズビルにあるクイーンズランド・カントリー・バンク・スタジアムで行われた注目の一戦はティム・チュー(豪)が元WBO世界スーパーウェルター級王者ジェフ・ホーン(豪)を2度のダウンを奪い圧倒。8回終了棄権に追い込みTKO勝ち。強豪が揃うスーパーウェルター級でタイトル挑戦の期待があがる。

 勝ったチューはプロ戦績16戦全勝13KO、負けたホーンは24戦20勝13KO3敗(3KO)1分とした。

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チィム・チューは父親の影から抜け出す大一番

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ティム・チュー
年齢:25歳
身長: 174cm
リーチ: 183cm
スタイル:オーソドックス
出身: オーストラリア

アマチュア戦績: 33勝1敗
プロ戦績15戦全勝12KO
IBFオーストラリア Sウェルター級タイトル
WBOグローバル Sウェルター級タイトル
WBAオセアニア Sウェルター級タイトル

 ロシア、韓国、オーストラリアにルーツを持つティム・チュー、偉大な父を持つだけに同胞ジェフ・ホーン戦はプレッシャーも相当なものだったはずだ。これまで、生まれ故郷で戦ってきたチューは今戦はキャリア最大の大一番。父親の影から抜け出し次のキャリアに繋げる戦いだった。

 オーストラリアで生まれたティム・チューは、幼少の頃からスポーツへの関心は高かった。6歳のときに体操、フットボールを経験。サッカーで地元代表に選出されたが、13歳の時に家庭の事情でモスクワに転居。スポーツの関心は薄れていったが、15歳のときサッカーをやめボクシングを探求することを決意した。

 アマチュア戦績は33勝1敗。2016年12月ティムはプロ・ボクシングへ転向を決めた。アマチュア戦績は浅いものプロに転向後すぐに頭角を現している。2019年、IBFスーパーウェルター級地域タイトルを同級ランキング9位ドワイト・リッチー(豪)と争い判定勝ちすると、12月ジャック・ブルベイカー(豪)をストップした。

 プロ戦績は15戦全勝11KO。各団体の地域タイトルを獲得したとはいえ、世界基準を満たす相手との対戦はなく、母国でウェルター級元世界王者のジェフ・ホーン戦は理にかなっていた。

ティムにとってホーン戦はビッグ・テストだった

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身長: 175cm
年齢:32歳
リーチ: 173cm
出身: オーストラリア

プロ戦績:23戦20勝13KO2敗(2KO)1分
 WBO世界ウェルター級タイトル

アマチュア戦績: ?
2012年ロンドン五輪スーパーライト級出場 ベスト8
2011年世界選手権スーパーライト級出場 2回戦敗退

ロンドン五輪でベスト8の経歴をもつホーンは国内で存在感を強め2013年プロへ転向。2014年デュコ・イベンツ社と契約を結んだ。オーストラリアでキャリアを積みWBO・IBFの地域タイトルを獲得し世界戦が見えてきた地元で大きな市場をもつホーン陣営は、関係性のあるトップランク社とビッグ・ファイトを探っていた。

 パッキャオをプロモートするトップランク社は、パッキャオが税金滞納問題で米国で試合を出来ないことを受け、アミア・カーン(英)と中東戦を模索するが霧散。トップランクとホーンのプロモーターは世界的ビッグネームであるパッキャオを招致することで州政府と合意。パッキャオ対ホーン戦をオーストラリア開催に持ち込んだ。

 アンダードッグのホーンが大判狂わせを起こし判定勝ち。WBO世界ウェルター級王座を獲得したホーンは一気に名声をあげた。採点に関して米国で大きな議論を呼んだが、ホーン勝ちの声も少なくない。

 しかし、王座に長くとどまることはできなかった。初防衛戦を無事に通過したホーンだったが、トップランクは次の刺客、スーパーライト級でメジャー4団体を制覇したテレンス・クロフォード(米)を送り込み9回TKO負けし王座を明け渡している。

ホーンはビッグ・テストには最適な相手だった

 その後、ミドル級に階級をあげマイケル・ゼラファと2戦。初戦はTKO負けを喫したがリベンジに成功したホーンは、母国オーストラリアでティム・チューとの対戦に臨むためスーパーウェルター級に落とすことを決意。ホーンはスーパーウェルター級での実績はないが、ティムの実力を図るうえでは十分な相手だ。

 キャリアでパッキャオ、クロフォード、ゼラファと拳をあわせている。現在、スーパーウェルター級はWBC王者ジャーメル・チャーロ(米)、IBF・WBA世界王者ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)、コンテンダーにジュリアン・ウィリアムズ(米)、エリスランディ・ララ(キューバ)と実力が揃い見劣りしてしまうが、相手として不足はない。

 「タフな戦いになることを期待している。ティムがこの戦いに向け臨戦態勢であり、彼がステップアップするにあたりこの戦いは彼にとってビッグ・テストになる」。と試合前に語っていた。

 そして、今戦は大舞台で名声を上げるには最適だった。母国オーストラリアのクイーンズランド州タウンズビルに新設された32000人スタジアムで開催。依然として新型コロナウイルスの脅威はくすぶるが、新規感染者の推移が鈍化したことでガイドラインのもと収容人数の50%、16,000の観客を動員することが認められ開催する運びとなった。

シドニーに生まれたティム・チュー。「私の名前がティムで、偉大な父親の息子ではないことをお伝えしたい」ホーン戦後のインタビューで語ったとおり、今戦はかなりのプレッシャーがかかっていたことが分かる。

ティムの父親は2011年に国際ボクシング殿堂入りした元WBA・WBC・IBF世界スーパーライト級3団体を統一したコンスタンチン・チューだ。1998年スーパーライト級王座を獲得した以来、およそ6年半タイトルを守り抜いている。

 2世タレント、父親が偉大なだけに比較され父親の影に隠れてしまうのは悩みだったことは間違いない。「これまで父が成し遂げた功績を誇りに思っています。オーストラリア、ロシアで史上最大のボクサーです。ただ、自分のキャリアは自分で決め結果をだす。父親は関係ありません。でも、父は教えてくれました。成功したいなら努力しなければならない」。こう試合前の米誌のインタビューで語っていた。

ティムが王者を圧倒、パーフェクト勝利

 ティム・チュー、完璧なパフォーマンスだった。元王者相手にワンサイド・ゲーム、スーパーウェルター級で存在感を強めた。正確なワンツーを軸に試合を作りクリンチにくるホーンにも冷静に対処。元王者を全く寄せ付けなかった
 
 序盤、ティムはワンツー、ジャブ、有効打をあてペースを握った。オープニング・ベルがなるとホーンが強引に前にでてパンチを振るったがティムは正確なワンツー、インサイドでアッパーを叩き込み元王者を完全にシャットアウト。ホーンは1回後半はやくも減速しはじめた。

 ティムはインサイドでもホーンに押し負けないフィジカルの強さを誇示。2回以降もホーンの強打は空を切る場面が続きうちわ終わりにワンツー、強烈なプレッシャーをかけられ厳しい局面が続いた。

 3回、ホーンは何とか打開しようとしたがプランBはなかった。距離をとれば相手の強打が飛んでくる。インサイドではパワー負け。中盤には疲れからかスリップ。後半、クリンチしたところ体位を入れ替えられフックでダウンを奪われた。

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 5回以降、ダメージが抜けないホーンは疲労困憊。クリンチも読まれ、頭から突っ込んだところにアパーを合わせられ、ティムの強烈なボディで着実に体力を奪われた。6回、後退を強いられ後半にワンツー、ボディと叩きこまれコーナーに押されボディで追加のダウンを奪われた。7回、8回と何とか倒れなかったが8回おわりに棄権した。

世界タイトル挑戦はいつか


 母国で大きな勝ち方をしたティム。印象が残っているうちに世界タイトル挑戦といきたいところだが、チューン・アップ戦をはさみトップコンテンダーとの経験は必須だろう。強豪ひしめくスーパーウエルター級、タイトル挑戦の機会は簡単には回ってこない。

 まずは、狙うは4団体何れかの指名挑戦権だ。IBF(国際ボクシング連盟)の8月の最新ランキングでは5位、ホーンに勝ったことでさらに上位にあがり近いうちに上手くいけば指名挑戦者決定戦の機会は得られるだろう。

 WBCを握るはトニー・ハリソン(米)との再戦でリベンジに成功したジャーメル・チャーロ(米)は10月、ジュリアン・ウィリアムスを下したIBF・WBAのタイトルを保持するジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)との3団体統一戦が決まっている。

 トップコンテンダーにはジャレット・ハード(米)、ジュリアン・ウィリアムス(米)と強豪が連なっている。WBO王者はパトリック・テシェイラ(ブラジル)。上位にはブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)、リーアム・スミス(英)、ジャレット・ハード(米)と続く。彼らとジェフ・ホーン相手に完璧な勝ち方をし株をあげたティムとの対戦が決まれば好カード。同等のパワーをもつ世界基準の相手は興味深い戦いになることは間違いない。

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