トップランク社2020年井上尚弥、ロマチェンコ、中谷戦振り返り

 米トップランク社はソーシャルメディアで”Moment of the year”と題し2020年のイベントを振り返っている。今回は、2020年米トップランク社が手掛けたイベント、ワイルダー対フューリー、ロマチェンコ対ロペス、井上対マロニー、中谷対ベルデホ戦を振り返ってみたい。

Sponsor Link


Sponsor Link

トップランク Moments of the year

新型コロナウイルスが襲った2020年

 2020年、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的流行)となり北米のプロ・ボクシングも大きな打撃を受けた。中国で拡大したコロナは全世界に拡大し、プロ・ボクシングだけでなく世界中からプロ・スポーツの需要が蒸発した。

 米国はコロナを軽視していたが、3月に感染が急拡大しカリフォルニア、ニューヨーク、主要都市はロックダウン(都市封鎖)。米トランプ大統領は就任以来、米株を引き上げたものロックダウンにより、ダウは2万円と大暴落。就任以来株高を維持してきたが上昇幅は消失した。

 北米は3月Showtime(米ケーブルTV局)を最後にイベント中止や延期を余儀なくされた。4月には米ラスベガスでWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥対WBO世界バンタム級王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)の王座統一戦が控えるが、収束の見通しがたたないことから、開催が危惧されていた。

ワイルダー対フューリー

Embed from Getty Images

関連記事:【結果】ワイルダー対フューリー再戦は思わぬ結果に

 北米でも新型コロナウイルスの影響が顕著にあらわれていたが、まだ、世界的にも渡航規制まえで2月22日米ラスベガスで予定していたWBC世界ヘビー級王者デオンテイ・ワイルダー(英)対タイソン・フューリー(英)戦は無事挙行された。

 興行は、フューリーが契約するトップランク社とワイルダーが契約するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオン)が手を結む共同プロモーションとなった。有料課金システムPPV(ペイ・パー・ビュー)は当初、100万世帯以上が期待されたが、85万世帯と大幅に下回ったが、米ラスベガスで行われたヘビー級の興行では最高額となる1690万ドルを記録した。

 第1戦目はドローだったがタイソン・フューリー(英)がワイルダーから2度ダウンを奪い文句なしの勝ちかたでヘビー級で存在感を示した。1戦目はフューリーがワイルダーをアウト・ボックスする展開だったが、再戦では一転フューリーが圧力をかけ、精度の高いジャブで主導権を握った。

 3ラウンド、ワンツーでダウンを奪われるとワイルダーは劣勢となった。4回、ワイルダーはフューリーの追撃に耐えたが5ラウンド、フューリーのボディ・ブローでダウン。ワイルダー陣営がタオルを投入しレフェリーが試合を止めた。

 再戦条項があり、ワイルダー陣営は行使に踏み切ったが、新型コロナウイルスの影響で再戦スケジュールは延期。トップランク社ボブ・アラム氏は、ワイルダーとの再戦は契約期限切れと主張し、WBA・WBO・IBF世界ヘビー級統一王者アンソニー・ジョシュア(英)戦にカジをきっている。

2020年6月にようやく再開

 3ヶ月もの空白があいたことがあっただろうか。トップランク社の興行は3月、4月、5月とコロナの影響でストップしていたが、本拠地の米ラスベガスにあるMGMで6月興行再開に踏み切った。

 米国のロックダウンが緩和され米ネバダ州でも規制を緩め経済再開に向け動いていた。ネバダ州ではカジノ営業の感染症対策のガイドラインが設置。ストリップ通りの主要ホテルを運営するMGM社が営業再開が決まり、イベント再開の舞台が整った。

 トップランク社は現地NSAC(ネバダ州アスレチックコミッション)とネバダ州政府と新型コロナウイルスのガイドラインを設置。原則、無観客開催という前例にない厳しいルールが敷いた。

 会場入りする選手や関係者はMGMに到着後にPCR検査を受けると、翌朝の検査結果がでるまでホテルの部屋で自主隔離が求められ、陰性とわかるまでは原則、部屋からでることはできない。検査で陽性となれば、期間を空けることが決まり、再検査で陰性となっても試合出場は認められなかった。

 米国で4大メジャースポーツが中止となるなかボクシング興行再開は、巣篭もり需要の効果もあり期待されていたが、シャクール・スティーブンソン(米)をメインとした再開のキック・オフ・イベントの視聴件数は40万世帯と低調におわった。

 原因は1つ。期待されているマッチメークではなかったことだ。タイトルマッチでなかったことも大きく視聴件数に影響したとはいえ、相手はプエルトリカンとはいえ無名のカラバリョ。もちろん、渡航規制で対戦相手が米国に滞在する選手に限られたが、課題を残した再開イベントだった。

 WBOスーパーフェザー級挑戦権の資格をもつスティーブンソンは、2021年に第1四半期に計画されるWBO世界スーパーフェザー級王者ジャメル・ヘリング(米)対カール・フランプトン(英)の勝者への挑戦が規定路線となっている。

セペダ対バランチェク

関連記事:結果】ホセ・セペダ対イバン・バランチェク 2020年間最高試合候補

 年間最高試合の最有力候補だ。倒し倒され両者は計4度のダウンを喫する壮絶な打撃戦となることは予想できなかった。バランチェクはパワー、フィジカルで有利だったが、セペダが後半にバランチェクにカウンターをあわせた。

 4ラウンド、上手くセペダがカウンターを合わせ左フックで3度目のダウンを奪いセペダに流れが戻りかけたが5ラウンド、コーナーに捕まったセペダがダウン判定で4度目のダウンを奪った。しかし、セペダの左ストレートがバランチェクの顎をとらえるとそのままリングに倒れ試合終了となった。

セペダ対バランチェク 動画

ロマチェンコ対ロペス

Embed from Getty Images


ロマチェンコ対ロペス2人の戦績と試合予想プレビュー


【結果】ロマチェンコ対ロペス今後はどうなるのか

 北米でも新型コロナウイルスの新規感染者数が鈍化するなか、トップランク社は2020年後半のスケジュールを発表。どれも好試合が期待されるカードだった。なかでも、注目されたのがWBA・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)対IBF世界ライト級王者テオフィモ・ロペス(米)の3団体統一戦だ。

 放映権は約500万ドル、トップランク社と提携するESPN(米スポーツ専門チャンネル)が力を入れていたのがわかる。条件面でロペス陣営が不満を示し消滅する恐れがあったが合意に達した。コロナ禍でチケット収入が見込めないことから、ESPNからの放映権頼みだった。

 当初、ロペス陣営は125万ドル(約1億3250万円)の掲示されたが納得しなかった。トップランク社ボブ・アラム氏は、条件に同意しなければカード消滅を示唆したが、ロマチェンコ陣営が25万ドルの減額に応じたことで合意。ロペスは25万ドルアップの150万ドル、ロマチェンコは325万ドルで契約成立した。

 直前の予想ではロマチェンコが有利だった。だが、ロペスは不思議なまでに自信をみなぎらせていた。大方、後半ロペスがロマチェンコのテクニックに屈する見方をしていたが、試合は全く別の展開となった。ESPNが中継した試合は290万世帯と予想を大幅に上回った。

 前半、ロマチェンコは殆ど手数をださなかった。1ラウンドは僅か数発。攻撃に転じたのは8ラウンドからだった。いまだ、ロマチェンコは判定結果に疑問を呈しているが、ロペスが勝った試合で物議を醸した戦いではなく、むしろ、ロマチェンコがなぜ出れなかったのか。それが議論となった戦いだった。

 そして、ロマチェンコの失敗は試合だけではなく、再戦条項を契約に盛り込まなかったことだ。ロペスはIBFの指名戦ジョージ・カンボソス(オーストラリア)の交渉がすでにはじまっている。スーパーライト級に階級アップが目前に迫り、ロマチェンコはロペスとの再戦を熱望するが、はっきりいって、再戦締結の期待は薄い。

 プライドが高いロマチェンコがこのままスーパーフェザー級に落とすのかどうか。絶対王者だったロマチェンコも33歳、リナレスやロペスが攻略方法を示したこともあり、狙われる立場となっている。階級を落とせばトップランク者の若きエース、シャクール・スティーブンソン(米)がロマチェンコの首を狙っている。

ロマチェンコ対ロペス 動画

井上対マロニー

Embed from Getty Images

関連記事:【結果】井上尚弥対ジェイソン・マロニー今後はどうなるのか占う
関連記事:井上尚弥対マロニー戦リング誌ほか海外専門メディアの評価声を紹介

 WBO世界バンタム級王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)の交渉が失敗におわり、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)との試合が決まった。マロニーはトップクラスの実力者だったが、スピード、パワー、クイックネスといった身体能力の差は明白だった。カシメロは雑なところはあるが野性味溢れるスタイルは一発の意外性があり期待していたファンや関係者は多かった。

https://twitter.com/in44y1/status/1322748043305779208?s=20
 「ノックアウトだけでなく、スキルを見せつけたい」試合前、井上が語っていた。2度のダウンを奪ったカウンター、特に左フックのカウンターは最高のタイミングだった。ESPNの解説を務めるアンドレ・ウォード氏や、ティモシー・ブラッドリー氏らも井上が放ったカウンターのタイミングを高く評価している。

 だが、ノニト・ドネア(フィリピン)に続き、マロニーのジャブで顎を跳ね上げられるシーンも多々あった。パワー、フィジカルが対等となる相手を迎えたときどうなるのか。致命的な打撃となる可能性もあり、階級アップの不安材料の1つだ。

 PFPファイターとして評価される井上は統一戦の期待が高まるが、次戦はIBF(国際ボクシング連盟)の指名挑戦者マイケル・ダスマリナス(フィリピン)が既定路線。2021年、WBO王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)戦をまとめることができるのか注目が集まる。

井上対マロニー 動画

Sponsor Link

クロフォード対ブルック

Embed from Getty Images

関連記事:
【結果速報】クロフォード対ブルック今後はどうなるのか

 ウェルター級で地味な存在でいまだ強豪と戦ってないなかESPN(米スポーツ専門チャンネル)のPFP首位を独占するのは、潜在的な能力が買われ織り込んでいる側面が強い。とはいったもの、元IBF世界ウェルター級王者ケル・ブルック(英)を仕留めたインパクトは充分するぎるものだった。

https://twitter.com/in44y1/statuses/1327843186950119426
 序盤、リング中央で構えたブルックがフレームを活かし有効なジャブで試合をリード。クロフォードはブルックのサイズとパワーを感じていたがラウンド毎にラーニングしていたのだろう。サウスポーに完全にスイッチしたクロフォードはブルックの右ストレートに左フックを炸裂。ブルックはたまらずロープまで一気に後退。ブルックがたちあがったところ連打で仕留めた。

 2021年10月にトップランク社との契約期限を迎えるクロフォードはウェルター級強豪を傘下におさめるPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)と契約する見方が強い。契約に向け1戦目でWBC・IBF世界ウェルター級王者エロール・スペンスJr.(米)ら強豪とのマッチメークが成立するかが鍵となる。

 33歳とプライムタイムが過ぎた感があるクロフォードは2021年9月には34歳。PBCに移籍したとしても強豪との対戦が叶わなければ時間の無駄になる。

クロフォード対ブルック 動画

Sponsor Link

中谷対ベルデホ

Embed from Getty Images

関連記事:【結果速報】中谷正義対フェリックス・ベルデホ背景から結果まで
ベルデホが中谷正義との再戦も視野!2021年再戦が実現するのか

 劣勢だった中谷が9回逆転TKO勝ち。個人的には年間最高試合だ。セペダ対バランチェクが最有力だろう。だが、セペダ対バランチェク戦にはない逆転TKO劇はドラマに満ちあふれていた。

 オッズはそこまで開きはなかったが復調するプエルトリカンのベルデホに傾いてた。ロンドン五輪に出場経験があるベルデホは米有力プロモーター・トップランク社と契約を締結。キャリアも順調だったが、アントニオ・ロサダ(メキシコ)に番狂わせで負けたことで評価は下落。再起に成功し4戦全勝、ロペスを追い詰めた中谷がベルデホの最終テストだった。

 中谷は米国で評価をあげていた。テオフィモ・ロペス(米)戦は圧倒的不利予想だったが、ロペスは大苦戦。スコアは、118−110 2者、 119−109だったが、そこまでの開きはなく中谷は評価をあげた一方で、世界タイトル前哨戦で苦戦したロペスは疑問符がついた戦いだった。

 序盤、試合を支配したのはベルデホだった。シーソーゲームの展開は最後まで観るものを飽きさせなかった。ヘッド・トレーナーにイスマエル・サラス氏を迎えたベルデホはアウト・ボックス。中谷をださせカウンターをセットする展開だった。1ラウンド、ロングからベルデホがワンツーを放ち中谷がダウン。深いダメージを負ったかのようにみえたが、瞬時に顔を背けたことでダメージは軽減されたのかもしれない。

 そして、4ラウンド。クロス・レンジでベルデホの強烈な右ストレートが決まると中谷が2度目のダウン。2度ダウンを喫した中谷はノックアウトしか勝つチャンスなかったが7ラウンド、中谷のワンツーが入ると流れが急展開。これまでハイ・ペースで試合をリードしていたベルデホは失速した。

 中谷がペースを握ると9ラウンド、ジャブのカウンターでベルデホからダウンを奪い返した。何とかベルデホは立ち上がってきたがダメージは深刻。右フックで仕留めた。

 勝った中谷は世界ランク入り。ロペスとの再戦が期待されるがタイミング次第となりそうだ。ロペスは指名戦を控え、スーパーライト級参戦も計画し今後は不透明なもの、ロペスがスーパーライト級に階級をあげれば、3団体のベルトは空位となり、ベルデホを倒した中谷は世界タイトルのチャンスが舞い込んでくる可能性が高い。

中谷正義リング誌10位2021年ロペス再戦かライト級最新動向

中谷対ベルデホ 動画

Sponsor Link
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください