トップランク10月ロマチェンコ、井上、クロフォードの興行は成功今後は

 コロナ禍でイベント再開に踏み切ったトップランク社。前半は興行的に苦戦を強いられたが、後半は成功したとみていいだろう。今回はトップランクが10月主催したイベントを振り返り、今後の動向を占ってみたい。

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視聴件数は低迷していた

 コロナ禍のなかトップランク社が2020年6月に再開。巣ごもり需要など大きな期待があったもの視聴件数は伸びなかった。9月にはいっても、開幕時にヘッドラインを飾ったシャクール・スティーブンソン(米)対フェリックス・カラバリョ戦で記録した60万件9000件が最多の視聴件数だった。

 2020年3月、新型コロナウイルス(COVID-19)が米国を襲いロックダウン(都市封鎖)、ボクシングだけでなく世界中のプロ・スポーツの需要が蒸発。3月から北米のプロ・ボクシングも興行をストップせざるを得ない事態となっていた。

 視聴件数が伸びなかった原因はマッチメークだ。ボクシング再開を期待する声は多かった反面、プロモーターはファンが期待するマッチメークが難しかった。これは、渡航規制の影響でマッチメークが米国に滞在する選手に限られたことや、練習環境の整備、スパーリング選手の招致が難しかったことが要因の1つだろう。

10月に入り視聴件数が回復

 2020年後半戦、トップランク社の興行は成功だったといって良いだろう。

 10月に行われたビッグ・カードはどれもファンを満足させる結果だった。視聴件数もロマチェンコ対ロペス戦は290万世帯、クロフォード対ブルックは200万世帯を超え低迷していた視聴件数も回復。そして、ESPNの親会社ディズニーの決算によると、トップランク社と提携するESPNのESPN+の契約者がついに1000万人を超えた。カードを振り返ってみたい。

 トップランク社は10月に入りスケジュールを発表。10月3日、セペダ対バランチェク、10月17日、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)対テオフィモ・ロペス(米)、10月31日、井上尚弥対ジェイソン・マロニー(豪)を発表した。

セペダ対バランチェク

 現時点で2020年間最高試合の最有力候補だ。WBSS(ワールド・ボクシングスーパーシリーズ)に出場したイバン・バランチェク(ベラルーシ)とホセ・セペダ(米)戦は好カードだったがここまで激戦となるとは予想してなかった。

 結果は、両者が4度のダウンを奪い合う壮絶な打撃だった。序盤、パワー、フジカルを活かしたバランチェクが試合を優勢に進め3度のダウンを奪ったが、3ラウンドからセペダがカウンターで反撃に転じた。

 4ラウンド、上手くセペダがカウンターを合わせ左フックで3度目のダウンを奪いセペダに流れが戻りかけたが5ラウンド、コーナーに捕まったセペダがダウン判定で4度目のダウンを奪った。しかし、セペダの左ストレートがバランチェクの顎をとらえるとそのままリングに倒れ試合終了となった。

ロマチェンコ対ロペス

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視聴件数 最大約290万件

 報酬をめぐり交渉が難航し合意が危惧されたが無事に合意した。試合結果、レビューはこちら

 まず、4団体統一戦として報じられているが、厳密にいえば、WBA・WBO・IBFの3団体と米リング誌の王座が賭けられた一戦だったことを伝えたい。ロマチェンコがもつWBC(世界ボクシング評議会)の王座はフランチャイズ王座で米メジャー誌を含めタイトルとしては認められていない。

 ロペスが勝てば米ブルックリンからニュースター誕生だった。しかし、米リング誌の記者全員がロマチェンコ判定勝ちの予想。殆どが、ロマチェンコの経験がロペスを凌駕すると予想。筆者もロマチェンコ勝ちの予想をしていた。関連記事はこちら

 序盤、ロペスの戦略が上手く機能した。プレスをかけガードの上から叩き、深追いしなかった。パワフルなジャブと、ボディ攻撃を軸に主導権を握った。一方、ロマチェンコは1ラウンドの手数は4発と殆ど手数を出さなかった。

 「後半はポイント・アウトしたはずだ」と主張。ロマチェンコがエンジンをかけたのが8ラウンド。12ラウンド判定勝ちの戦略であれば大きなミスだった。

 精度の高いロマチェンコのジャブがコネクトしたことは事実だが、それを”有効なクリーン・ヒット”として判定されるかは別だ。実際、ロペスは有効なクリーンヒットではないが、ガードの隙間からパンチをコネクト。ロマチェンコが序盤で顔を赤らめていたいのが何よりの証拠だ。

 いつもなら相手の力量をはかり序盤は見ることが多い。ロマチェンコはロペスのサイズ、パワーを感じていたことが出れなかった理由だろう。

 この試合を通じて改めて感じのが階級を超えてもパワー、スピードを落とさなかったマニー・パッキャオ(フィリピン)の存在だ。

 ロマチェンコはロペスとの再戦を臨んでいるが、ロペスは再戦には興味を示さず、スーパーライト級で4団体統一戦が基本路線とされるWBC・WBO世界スーパーライト級王者ホセ・ラミレス(米)対IBF・WBA世界スーパーライト級王者ジョシュ・テイラー(米)の勝者への挑戦を表明している。

 スターダムの階段を上がったロペスは、スターの登竜門ウェルター級を目指すことは間違いない。

井上尚弥対マロニー

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 ジェイソン・マロニー(豪)戦が決まりトーン・ダウン。もちろん、マロニーが弱い相手ではないが、すでにパヤノ、ロドリゲス、ドネアに勝ちPFPファイターとして議論される井上の対戦相手として力量差は明白だったことは事実だ。

 カシメロは攻撃もディフェンスも雑だ。しかし、野性味あふれるスタイルは一発の意外性があり期待されていた。コロナ禍となりゲート収益が消失したことで資金調達が難しくなり、急遽、井上と同じトップランク社と契約するジェイソン・マロニー(豪)戦が締結した。

https://twitter.com/in44y1/statuses/1322748043305779208?s=20

 「ノックアウトだけでなく、スキルを見せつけたい」試合前、井上が語っていた。2度のダウンを奪ったカウンター、特に左フックのカウンターは最高のタイミングだった。ESPNの解説を務めるアンドレ・ウォード氏や、ティモシー・ブラッドリー氏らも井上が放ったカウンターのタイミングを高く評価している。レビュー記事はこちら

 ただ、良いところばかりではない。マロニーのジャブで顔面をあげられる場面もあった。もちろん、超一流のフロイド・メイウェザーJr.(米)やカネロだってパンチをもらわないわけではない。

 しかし、貰いかたや貰う場面によっては、階級アップに向けての不安材料になる。階級をあげれば相手の耐久力も当然あがる。フィジカル、パワーが対等になった時どうなるのか。

 とはいえ、トップランク社と契約して初めてのラスベガス戦で印象的な勝利を飾ったことは間違いない。パワー以外にも多彩なスキル・セットも証明してみせた。

 そして、今後気になるのが井上の4団体統一戦の行方だ。WBO王者カシメロは、元世界王者ギレルモ・リゴンドー(キューバ)戦が具体化。2021年3月か4月、成立に向け交渉が進んでいるという。詳細はこちら

 井上は次戦はIBF(国際ボクシング連盟)の指名挑戦者マイケル・ダスマリナス(フィリピン)との指名戦が濃厚だ。

クロフォード対ブルック

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視聴件数 最大207万件

 ビッグ・ファイトが締結しないクロフォードは苛立ちを見せている。そんななか、決まったのが元IBF世界ウェルター級王者ケル・ブルック(英)戦だった。もともと、中東カタールでマニー・パッキャオ(フィリピン)戦の交渉が進み合意間近だったという。

https://twitter.com/in44y1/statuses/1327843186950119426

 序盤、ブルックはサイズのアドバンテージを活かしリング中央でどっしり構え、クロフォードのリターンに正確なジャブをコネクト。パワーを感じたクロフォードは警戒感からか手数は減ったが3回、サウスポーにスイッチ。4回、3回ブルックの攻撃を読み取っていたかのように、ブルックの右ストレートに対し左フックのカウンターを炸裂。劣勢になったブルックに猛攻し仕留めた。レビュー記事はこちら

 クロフォードの次戦どうなるのか。

 契約するトップランク社と確執が明らかになったクロフォードは2021年10月トップランク社との契約が満了となる。
 
 これまで、トップランク社はクロフォードに対しビッグ・ファイト締結を契約条件とし引き止めていたが、キャリアの方向性があわないとクロフォード陣営はトップランクに弁護士を通じて抗議。契約を更新しない可能性が高い。

 クロフォードはライバルのIBF・WBA世界ウェルター級統一王者エロール・スペンスJr.(米)やショーン・ポーター(米)、ウェルター級で強豪を揃えるPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)と契約する見方が多い。

 ただ、クロフォードは地味な存在で米国ではメジャー選手とは言い難い。PBCとの契約で懸念されるのは、クロフォードが移籍して直ぐスペンスや、サーマン、ポーターといった強豪とのマッチメークが保証されるかどうかだ。

 来年、クロフォードは34歳。すでにプライム・タイムは過ぎている。セルゲイ・リピネッツ(ロシア)やウガス(キューバ)と防衛戦を行い消耗している時間はない。

12月トップランクスケジュール

 トップランク社は年内は12月12日のイベントが最後となる。

 トップランク社がコロナ禍から拠点とする米ラスベガスにあるMGMグランドで、シャクール・スティーブンソン(米)対トカ・カーン・クレイ戦が行われ、アンダーカードにはテオフィモ・ロペス(米)戦で評価をあげた中谷正義がフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)戦が組まれている。

 国内ではWOWOWが、WOWOWOメンバーズオンデマンドで、日本時間12月13日午後0時頃から独占中継することが決まっている。
 
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