井上尚弥はナバレッテ戦が実現すればスターダムにのしあがるチャンスになる

 TopRank社ボブ・アラム氏は「彼は米国だけでなく世界中でスターになると思っている」ボブ・アラム氏のリップサービスなのだろうか。それはともかく、井上に大きな期待を示していることは間違いない。しかし、北米でスターになるにはライバル不在では難しい。井上は過去にロマゴンの相性で知られるPFP(パウンド・フォー・パウンド)に君臨していたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)戦が白紙。ライバルに巡り会えるかどうかも焦点になる。

 WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)バンタム級で優勝した井上は世界的な評価は手に入れたが、アラム氏が言うようにスターになるにはビッグネーム狩りが要求される。そして、階級も今のバンタム級からメキシカンや米国人が活躍するフェザー級まで視野を広げる必要がでてくるだろう。

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世界的に評価の高い井上

photo by:boxingscene


 井上は、PFP(全階級を通じて誰が最強なのかを決定するランキング)で米国のメジャー誌、リング誌やESPN(スポーツ専門チャンネル)のPFPランキングで上位に躍り出て世界的に知名度の高いボクサーと肩を並べまで存在感を示している。


 老舗米リング誌では2020年5月時点でサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に次ぐ3位、ESPNではエロール・スペンスJr.を抑えカネロの次点となる4位と軽量級ながら高く評価され、投票するESPNベテラン記者のスティーブ・キム誌は井上を1位に挙げている。

 しかし、北米では実力だけでなく人気が物をいう。PFPランキングはボクサーを評価する指数だ。もちろん、ボクサーが評価される上で重要な指標の1つだが人気とリンクすることはなく、スターに上り詰めるには世界的な評価と人気を持つ対戦相手を迎える必要がある。

 フィリピンの英雄マニー・パッキャオがオスカー・デラ・ホーヤ(米)のアンダーカードで米プレミアムケーブルTV局HBOが中継するペイ・パー・ビュー(PPV)に初登場した時は全くの無名だった。6階級制覇したマニー・パッキャオが輝かしい名声を手に入れたのは軽量級時代にライバル達に恵まれていたからだ。

 米TopRank社と契約したパッキャオは、アンダードッグとしてボブ・アラム氏が送り込む著名タレントに噛みついた。マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)やエリック・モラレス(メキシコ)、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)といった金星を倒し本物になった。

ビッグファイトは実現するのか

 そこで、命運を握るのがバンタム級でビッグファイトができるかどうかだ。現バンタム級は若く井上が米国で対戦し評価をあげられる選手は実は少ない。4団体を統一すればこの階級で証明することは何もない。

 井上と対戦予定のWBO王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)は米国では無名に近い。WBC王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)にしてもトップアマ出身で実力も申し分ないが、米国で話題を集めるイベントは難しい。

 言うならば米リング誌バンタム級にランクする元WBA世界スーパーバンタム級王者ギレルモ・リゴンドー(キューバ)か。ロマチェンコとの頂上決戦に破れ評価は大きく下落したが、五輪2大会連続の元王者リゴンドーとの対戦が決まれば話題になりやすい。反射神経の鈍りも見れるが、鋭く思い重いパンチは健在、互いのパンチが交錯すれば緊張感のある戦いになるだろう。

 そして、基本路線なのが統一戦だ。カシメロを倒せばWBA、WBO、IBFとメジャー3団体制覇。4団体を制覇すれば日本人初となる偉業となる。カシメロの持つWBOタイトルをもぎ取りWBCタイトルに照準をあわせることも悪くはない。

 ただ、統一戦はタイミングが重要になってくる。最近こそ統一戦がトレンドだが、パッキャオやフロイド・メイウェザーJr.(米)は統一戦よりもメガ・ファイトを優先してきている。
 
 メジャー4団体を制覇すれば議論の余地のない王者となるが、承認団体への支払いがコスト増になり敬遠することも少なくない。

 タイトルマッチを行うには各承認団体(WBA、WBC、WBO、IBF)に承認料を支払う必要がある。承認料はファイトマネーの総額の数%徴収される。WBA(世界ボクシング協会)は3%、これが承認団体の収入源となっており、統一戦になるとコストが増加する。

 そして、難しくしているのは各団体が指名戦を義務付けていることだ。興行的に収益がプラスになれば良いが、コストに見合わなければ統ー戦より1階級上げビッグ・ファイトを模索するケースも多い。

井上はナバレッテ戦がキー

photo by:boxingscene


 異国の地でスターになるには勝つのはもちろん対戦相手選びが重要だ。スーパーバンタム級であれば対戦機運があがるWBO世界スーパーバンタム級王者エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)との対戦は興味深い。ビッグネームではないにしろヒスパニックが多く居住する米西海岸で印象的な勝ち方をすれば、その後のシナリオを描きやすい。

 井上の桁外れのパワーとフィジカル、クイックネスをもってすれば1階級上のスーパーバンタム級転向は戦力面から問題ない見方が多い。しかし、WBSS決勝でのノニト・ドネア(フィリピン)戦では序盤は余裕さえあったが、体格差を感じたように写った。そういった意味でも、ナバレッテ戦が実現すれば重要。スーパーバンタム級以降の階級アップの試金石となる戦いになることは間違いない。


 ナバレッテはプロ戦績32戦31勝27KO1敗。アイザック・ドグボー(ガーナ)との2戦で評価を上げている。米リング誌スーパーバンタム級では対抗WBC王者レイ・バルガス(メキシコ)の次点の2位にランクイン。スーパーバンタム級では170cm、リーチ183cmとかなりの大型なボクサーの部類に入る。

 第1戦はドグボーがトップ戦績でTopRank社の若手ジェシー・マグダレノ(米)に勝ったことでドグボー有利な見方が殆どだったが、ナバレッテが大番狂わせを起こしたのだ。迎えたダイレクト・リマッチでも返り討ちにしたことでフロック(まぐれ)でないことを証明したナバレッテの株は大きく上昇した。

 その後、2019年は5試合という最近の王者ではみられないほど防衛戦をこなしている。ただ、ナバレッテは残念ながらパッキャオと戦ったエリック・モラレスやマルコ・アントニ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケスのような知名度はない。

王者になり通算5度防衛戦したがドグボー戦以降は、世界基準を満たす相手とは言いにくい。これまで戦ってきた井上の対戦相手より見劣りする。仮に井上が勝ったとしても名声を広げることは難しいだろう。白熱された戦いが予想されるが懸念されるのが井上のマッチメイクの運だ。

 井上は、2017年HBOの舞台で登場し当時PFPにランクされていたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との軽量級スーパーファイトが用意されるはずだったが、ロマゴンが負けたことで霧散した。そして、今回は米再上陸戦が新型コロナウイルスの影響で足止め。キャリアに大きな影を落としている。

 ナバレッテは25歳と身体も大きくなる頃。井上戦には前向きな姿勢を示しているが、フェザー級進出は時間の問題。新型コロナウイルスの影響が長期化すればナバレッテが先に階級をあげる可能性もある。

 こればかりは、どうすることも出来ないがスターになるには、めぐり合わせや運といったことも重要な要素となる。ただ、TopRankという大きな後ろ盾があることは強豪との対戦を求める井上が願うマッチメイクはスーパーフライ級時代よりも叶いやすい環境にある。まだまだ、先の話になるがスーパーバンタム級でも井上のモンスター感が衰えることがなければ、攻撃、ディフェンスと盤石なスタイルを持つTopRankの新鋭WBO世界フェザー級王者シャクール・スティーブンソン(米)戦を見てみたい。

(Via:boxingscene

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