米有力メディア、リング誌とESPN(米スポーツ専門チャンネル)の2社、英国のボクシング専門誌ボクシング・ニュースが2019年間最高試合として、井上尚弥対ノニト・ドネア戦を選出。残る全米ボクシング記者協会(BWAA)も井上対ドネア戦を選出する公算が高い。もちろん、筆者の選んだ2019年間最高試合もこの戦いだ。駆け引きだけでなく、パンチャー同士の打撃戦はエキサイティング、見ていてるほうは一瞬の瞬きもできない戦いだった。

 2018年シーズン2でWBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)、新たにバンタム級で開催することが決まり、誰もがこのカードを決勝として期待していたが、実現の期待は薄かった。ドネアはキャリア晩年を迎え、決勝まで勝ち上がってこれるか懸念されることは多かったからだ。が、運を見方につけ決勝のステージまで上り詰めた。

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アンダードッグのドネアがWBSS決勝のステージへ

 井上は準々決勝でドネアとの対戦を願ったもの、組み合わせ発表でドネアはWBA王者ライアン・バーネット(英)と対戦することが決まった。バーネットのペースで試合は進んだが、バーネットが途中で腰を痛め試合続行できず棄権。ドネアは準決勝に進んだ。

 そして、準決勝でWBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)と対戦するはずだったが、テテが肩の怪我を理由にWBSS離脱を表明。ドネアはバンタム級で殆ど知られていない無名のステフォン・ヤングと対戦し6回KO勝ちで決勝戦に駒を進めた。

 一方、井上はマクドネルを下しWBSS参戦を正式に表明。WBSS優勝候補筆頭だったことは言うまでもない。準々決勝でファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を秒殺、準決勝でプエルトリカンのエマヌエル・ロドリゲスを2回で下した。当時のバンタム級は若いタレントが多く、強豪と呼ばれる人材は少なかったが、プロでダウンが無いパヤノ、ロドリゲスに圧勝した井上がこのクラスで傑出した存在であることに議論の余地はなかった。

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井上のポテンシャルを引き出したドネア

 ドネアが井上に大きな試練を与えた。ドネアの健闘が目立つ試合だったが、井上は2度のピンチを凌ぎ逆境を乗り越え後半11回、ドネアからダウンを奪い勝ったことで証明したことは大きい。

 ゴングから、圧倒的なスピードを誇る井上は余裕さえ感じたが、1度目のピンチは2回に訪れた。接近戦で左フックをまともに貰った井上はグラつき形勢が逆転。試合後に分かったが、この一撃で井上は右眼窩底骨折をした。そして、9回にはドネアの右ストレートが顎を捉え膝を折る大ピンチに陥ったがクリンチで何とかピンチを脱出した。

 お互いパンチャーなだけに井上も警戒するところもあったが11回、得意の左ボディを突き刺しダウンを奪ったのは流石だった。正真正銘の名勝負だったことは事実だが、この試合で何人もの挑戦者をなぎ倒してきた井上の破壊的なワンツーが影を潜めたことが気になるところだ。

 これが、ドネアとの体格差、警戒感からフルに踏み込めなかったのかどうか分からないが、体格差を感じたのであればスーパーバンタム、フェザー級まで階級アップが期待される井上にとって懸念材料となるだろう。

 ここ数年、好材料がなく年齢を重ねたドネアはアンダードッグだった。ここまで井上に対抗すると予想していた人は少ないだろう。今後ドネアは、WBC(世界ボクシング評議会)がバンタム級指名挑戦者として認定、WBC世界バンタム級王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)戦に進む見通しとなっている。

 井上は、期待値を上回るどころか思わぬ大苦戦を強いられた。試合の中で致命的なダメージを負ったがそこから挽回してダウンを奪ったことで、これまで指摘されていたメンタル、タフネスは本物であることを証明。今戦で新たに露呈したこともあるが、依然としてバンタム級で傑出した存在であることに変わりはなく成長株であることは間違いない。2020年、TopRank社と契約した初戦は4月米ラスベガスにセットされる見通し、今後の成長に期待したい。

(Via:ESPN

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