井上尚弥(大橋)がBWAA(全米ボクシング記者協会)が選出する2019年間最優秀選手としてノミネートされた。いまだかつて日本人で受賞した選手はいないが、今年度多くの功績を残した井上が受賞する可能性は十分ある。

 ノミネートは、錚々たる面子だ。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、マニー・パッキャオ(フィリピン)、エロール・スペンスJr.(米)、ジョシュ・テーラー(英)、この中に井上尚弥が入り込んだ。受賞すれば日本人初となる偉業だ。ノミネートされた選手を簡単に紹介しよう。

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サウル・カネロ・アルバレス

 メキシカン・スーパースターがカネロだ。多民族国家米国で、ヒスパニックが多く居住する米テキサスで絶大な支持があるが、米本土であればどこでイベントを開催しても多くの観客を動員できるだろう。最近では、米ニューヨークに進出、殿堂MSGアリーナを超満員にするほどの人気だ。
 
 おそらく、BWAA年間最優秀選手を受賞するのはカネロだろう。2019年、カネロにとってジェット・コースターのような年だった。ダニエル・ジェイコブス(米)戦は、米アナリストの間でチェス・マッチと比喩され大きなインパクトは残せなかったが、試合を重ねるごとに著しい成長を見せている。IBFの指名戦交渉が失敗に終わりGBPとの確執が表面化したが、コバレフを戦慄的なノックアウトした衝撃は大きかった。

 セルゲイ・コバレフ(ロシア)との交渉が失敗し、IBF(国際ボクシング連盟)から受けたセルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)との指名戦にカジを切ったがゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)との連携ミスでIBF王座を失った。一時はどうなることかと思ったが、コバレフがヤードに勝ったことで、交渉が再開されコバレフ戦がスピード締結した。

 コバレフはヤード戦から2ヶ月弱と不利だったのは事実だが、圧倒的なサイズの違いとパワーの差は歴然でカネロが勝てる見込みはないと予想していたファンも多いだろう。だが、試合が始まってみるとオッズが示したとおりカネロがプレスをかけコバレフに攻勢をかける展開、コバレフは距離をキープしてポイント・メイクを狙ったが正確なカネロのショットがコバレフの体力徐々に削り最後は高度なフェイントを使い左フックでコバレフをグラつかさ、右ストレートでとどめを刺した。

 カネロは、米リング誌の全階級を通して最強を決めるパウンド・フォー・パウンド(PFP)で首位に躍り出た。ESPN(米スポーツ専門チャンネル)は、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、テレンス・クロフォード(米)をトップ2に上げるが成熟した感がある。カネロはドーピング違反を犯したことの汚点を払拭することは出来ないが、29歳にしてトップの実力者。高度な駆け引き、高い攻撃と防御能力は盤石だ。2020年、まだまだ成長しそうだ。

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井上尚弥

photo by:boxingscene


 もし、井上が受賞すれば日本人初となる快挙だ。カネロは有力だが、井上がひっくり返す可能性は十分ある。WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)に出場した井上。主催者側の都合で試合間隔が空いてしまったがデメリットばかりではない。

 WBSSに出場していなかったら、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)や、ノニト・ドネア(フィリピン)との対戦は間違いなく叶わなかったはずだ。おそらく、世界ランカー・クラスを日本に呼び消化試合。強豪にオファーをだしたが断られたという根拠のない話が出て今年を締めくっていただろう。

 ロドリゲス戦、1回主導権を握られたが2回からギアを上げ一気にたたみかけ、3度のダウンを奪い圧勝。これまでにも井上の対戦相手の水準については議論されてきたが、バンタム級で傑出したボクサーであることに議論の余地はない。ロドリゲスを相手にここまで圧勝できるボクサーは見当たらない。

 そして、迎えたノニト・ドネア(フィリピン)とのWBSS決勝。軽量級シーンで一時代を築いたドネアだが、ピークを過ぎ好調とは言えないパフォーマンス、井上がドネアをレッスンすると大方が見ていた。が、井上はドネアに勝ったが大苦戦した。ボディブローでダウンを奪ったがドネアのタフネスに警戒したのか自慢のワンツーの強打は火を吹かなかった。

 最優秀選手としてふさわしいが課題も見えた1年だったが、依然として成長の余地のあるボクサーであることに変わりはない。2020年どんな成長を見せてくれるのか楽しみなボクサーの1人だ。

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エロール・スペンスJr.

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 2019年、大きく飛躍した年だった。2016年ケル・ブルック(英)と戦いIBF王座を獲得しウェルター級最強の呼声も少なくなかったが、ブルック戦後は格下相手のマッチメークが続き、最強と呼ぶにはウェルター級強豪との対戦が求められていた。

 スペンスは避けられてる感はあったが、PBC陣営が傘下のキース・サーマンやダニー・ガルシアら人気選手との対戦を避けさせていた感はある。こうしたなか、ライト、スーパーライト級でビッグファイトを模索していたマイキー・ガルシア(米)がエロール・スペンスJr.戦に名乗りをあげたのである。

 フィジカルで上回るスペンスが、マイキーを一方的に抑える展開を予想していたが、丁寧なジャブと距離の管理を徹底した。この戦いを通じてパワー、フィジカルだけでなく高い戦術を持ちスマートなボクサーであることを証明した。

 2019年9月ショーン・ポーター戦がセットされた。スペンスがポーターをストップする予想が多かったが、一進一退の戦いとなった。ポーターのハードなショットが捉え厳しい場面もあったが、ポーターからダウンを奪ったのは流石だった。

 WBC・IBF統一王者となり2020年1月にダニー・ガルシア(米)との交渉が具体化したものスペンスが飲酒運転で単独事故を起こし消滅した。愛車フェラーリが何度も回転する大事故だったもの、奇跡的に怪我は顔の裂傷のみで致命的な怪我を追うことなく退院。しかし、退院後、全くメディアの露出がなく様々な憶測が飛び交っている。

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マニー・パッキャオ

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 ジェフ・ホーン(豪)に負け商品価値は大暴落。パッキャオ時代の終焉とも言われたが、ルーカス・マティセ(アルゼンチン)、エイドリアン・ブローナー(米)を下したことで評価はV字回復。母国フィリピンの上院議員となり多忙を極めるが、40歳となったいまでもパッキャオの魅力は色褪せることはない。

 流石にキース・サーマン(米)戦は厳しくなる見方も少なくなかった。だが、サーマンは故障が多くコンディションを含め懸念されることも多かった。
 
 右肘の手術を経て24ヶ月ぶりにセットされた格下ホセシト・ロペス(メキシコ)との再起戦で序盤にダウンを奪ったもの、ロペスの猛攻でダウン寸前に陥ったからだ。試合はパッキャオがサーマンからダウンを奪い勝ったがサーマンのパワー・パンチがパッキャオを捉えるシーンもあり楽な試合ではなかった。今年1年の功績をみれば、年間最優秀選手として挙っても不思議ではない。

 パッキャオは2020年夏前にはリングへ戻ってくる。対戦相手にはマイキー・ガルシア(米)の名前も浮上。マイキーはマッチルーム・ボクシングUSAと単発契約を締結。プロモートするエディ・ハーン氏は、パッキャオ獲得を示唆するコメントを残している。

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ジョシュ・テーラー

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 2019年、振り回され続けられたのがWBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)に出場し優勝したテーラーだ。準々決勝でライアン・マーティンを下しイバン・バランチェクとの対戦が決まっていたが、WBSSのずさんな運用体制が浮き彫りとなり、一時はトーナメント存続が危惧された。

 対戦相手のバランチェクが報酬の支払いが遅延したことで不安を募らせ辞退を表明したのである。その後、主催者側との話がつきバランチェク戦が決まった。

 バランチェクに3−0の判定勝ちしたテーラーは、レジス・プログレイス(米)との優勝決定戦に駒をすすめることが決まったが、今度はプログレイス陣営がWBSS撤退を表明。報酬未払いなどでWBSSを主宰するコモサを相手どり提訴した。
 
 スーパーライト級決勝の雲行きが怪しくなったが、WBSSの配信件を持つDAZNと提携関係にあるマッチルーム・ボクシングの興行で開催が決まった。無敗同士の決定戦は、お互いが一歩も譲らない展開が続き優勝決定戦に相応しい戦いだった。タフネス、メンタルと多くのことを証明したが、この中だとインパクトは弱いのは否めない。
 
 2020年は、TopRankが抱える人気選手WBC・WBO世界スーパーライト級統一王者ホセ・ラミレス(米)との統一戦や、階級をウェルター級に上げWBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)と戦うプランが浮上している。

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