弟の敵討ちのシナリオとしては最適だ。WBC世界バンタム級王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)がWBSSを制したWBA・IBF世界バンタム級統一王者井上尚弥(大橋)へ統一戦を呼びかけている。まだ気が早いが井上の未来のビッグ・ファイトを占ってみたい。

 「私は井上拓真との試合の後、そして井上尚弥がドネアに勝った後、井上尚弥と統一戦を行う準備ができているといった。日本でも、私の故郷フランスでもいい。いつでも、彼が臨むなら準備OKだ」

photo by:boxingscene


 井上がWBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)で優勝したこで、今後、井上を中心にバンタム級が回っていくことは間違いない。スーパーフライ級では対戦相手探しが難航していたが、続々と猛者らが対戦を表明。これこそ井上が望んでいた形だ。

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現状のバンタム級


 現状のバンタム級を見ながら最新の動向から井上との対戦を占ってみたい。上の図は、2019年11月21日付けの米リング誌のバンタム級ランキングだ。井上はWBSSバンタム級で優勝。本来、優勝すればWBA・IBFの王座に加えWBO王座も懸けられるはずだったが2団体となり残念だが、まだ他団体王者との統一戦のチャンスはある。

 まず、WBO(世界ボクシング機構)のタイトルを保持するのが井上との統一戦に名乗りを挙げているWBO世界バンタム級王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)だ。そしてWBC王者には、井上拓真に勝った唯一のフランス人王者ノルディ・ウーバーリが君臨。他にもトップコンテンダーらが井上との対戦を表明している。

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井上対ゾラニ・テテ

 「井上は、俺を倒さなければバンタム級キングとは呼べないことを知っている」
 WBSSを途中欠場したゾラニ・テテは鼻息だけは荒い。テテは、準決勝でノニト・ドネア(フィリピン)と戦うことが決まっていたが、右肩を負傷して棄権した。テテが本当に負傷していたかどうかは分からないが、当時、WBSSは資金調達に苦労していた。選手への報酬支払い遅延が明らかとなり、出場選手が辞退を表明する事態に陥りWBSSシーズン2は存続の危機にあった。

 「ドネアは勇敢だったけど彼がタフなファイターであることは分かっていた。もし、ドネアと戦えば井上戦のような年間最高試合に上がるようなファイトにはならないが、井上のような接近戦での戦いは避けるだろうね」コメント。
 テテは次戦11月30日、英バーミンガムで暫定王者ジョン・リエル・カシメロ(フィリピン)との王座統一戦に臨むことが決まっている。世界最短11秒KO記録をもつテテは、ディフェンスに不安がある井上にとって脅威だが、テテは打たれ脆い一面があり井上との対戦が実現すればバック・ギアに入れるだろう。

 そして、テテと井上のマッチメークはそう難しくはない。井上をプロモートするTopRank社はテテをプロモートするフランク・ウォーレン氏は提携関係にあるからだ。ただ、開催地に関しては米国ではなく日本や、テテが主戦場とするマーケット規模のでかい英国のほうが興行的には成功するだろう。

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井上対ウーバーリ

 ノルディ・ウーバーリ、フランス人で唯一の世界王者。豊富なアマチュア経験を持つ技巧派だ。アマエリートの道を歩むウーバーリは、井上拓真に勝ち王座統一に成功。弟の敵討ちとしてはストーリーは完璧だ。

 プロ通算17戦全勝11KO、優れた機動力と回転の速いコンビネーション、高いディフェンス能力を誇示するウーバーリは、プロでも順調に勝ち星をあげた。11戦目で中堅クラスのフリオ・セサール・ミランダ(メキシコ)に勝ちWBA地域タイトルを獲得し、亀田和毅と対戦して判定負けを喫したアレハンドロ・エルナンデス(メキシコ)戦ではタフなエルナンデスからダウンを奪い10回TKO勝ち。

 その後、ロンドン五輪で因縁のあるラウシー・ウォーレン(米)と空位のWBC世界バンタム級王座決定戦に進み、ディフェンシブなウォーレンの防壁と軽打に苦しんだが3−0の判定勝ちで王座獲得に成功した。

 ウーバーリは、TopRank社と提携関係にあるMTKグローバルに属しており両陣営が臨めば、テテ戦同様にマッチメークは容易だが、開催立地は限られてくる。来年以降、米国で2戦を予定しメインを務めると思われる井上の対戦相手として北米で知名度が乏しいウーバーリはどれだけ話題を集められるか懸念は多い。年末、凱旋が予定されている日本開催での統一戦が無難だろう。

 ウォーレン、井上拓真と勝ち進んだウーバーリ。井上ほどのパンチャーではないが、サウスポーから放たれる右ジャブは優秀で攻防ともにバランスが良い。だが、圧倒的なスピードを誇る井上有利は動かない。トップ・ギアに入れたとき、どこまでウーバーリが対応し井上の武器に対して何で対抗するのか興味深い。

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井上対ルイス・ネリ

 バンタム級で右肩あがりに評価をあげるのが嫌われ者ネリだ。米国で最も権威あるリング誌では1位、米ESPNでは2位の評価を得ている。JBCを追われたネリは、主戦場を北米とし中堅クラスの選手を次々と倒したことが評価を上げている理由だろう。

 山中慎介に勝ったがドーピング違反が発覚。再戦が承認されたことにも驚いたが、再戦でネリはあろうことか体重超過の失態。悪びれる様子もなく日本のボクシング・ファンから批判を受けたことは記憶に新しい。

 JBC(日本ボクシング・コミッション)から事実上の永久追放を受けネリをプロモートする北米に太いパイプをもつ所属するサンフィール・プロモーションズ、フェルナンド・ベルトラン氏は北米で勢力を加速するアル・ヘイモン氏が主宰するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)と契約を締結することに成功した。

 マックジョー・アローヨ(プエルトリコ)を粉砕。ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を下したネリはWBSS準決勝で負けたエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦に臨むことが決まっている。

 オッズは株をあげているネリに傾いている。それは、アローヨやパヤノと戦い強いインパクトを残したからだろう。階級をあげたアローヨ、ピークを過ぎたパヤノという声もあるが、そもそも今のバンタム級トップ戦線は井上を除き、若い選手が中心でキャリアは厚くない。そして、その中で傑出した選手が少ないのが現状だ。

 現状では井上尚弥戦は難しいだろう。まず、ロドリゲス戦をクリアーすることが前提条件、そして勝ったとしてもネリはPBCと契約を結んだことで、ライバル関係にあるTopRank社と契約を結ぶ井上とはTV局の問題が生じてくる。

 もちろん、TopRankがネリ陣営に相応のオファーを掲示すれば、合意する希望は持てる。立地としては米ロサンゼルス近郊にあるディグニティ・ヘルス・スポーツパークが候補に挙がるだろう。井上が2020年に米国に再上陸して、プロモーションが成功すれば、米西海岸でも
話題になりそうなマッチメークではある。

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井上対リゴンドー

 ギレルモ・リゴンドー(キューバ)、これまで井上の対戦相手として上げた中では一番興味深いマッチメークだ。いまさら、リゴンドーの経歴に触れる必要はないが、シドニー、アテネ五輪2連覇。かつては、米リング誌のパウンド・フォー・パウンド(PFP)の上位にもランクされていたことがある。

 リゴンドーはスーパーバンタム級を主戦場としていたが、階級をバンタム級に下げ世界的に評価を上げた井上にラブ・コールを送っている

 リゴンドーは井上が保持するWBA王座のセカンド・タイトルをフリオ・セハ(メキシコ)と争うことが決まり勝てばWBA次第でスーパー王者井上尚弥との統一戦が命じられる可能性がありボクシング・ファンの間では期待されているカードだ。

 PBCと契約していることが合意に向け懸念事項となるが、PBCがTopRankや日本のマーケットに貸し出す可能性は高い。そして、現状井上が稼げる相手がリゴンドーだ。

 リゴンドーはPBCでメインを務めてるわけでもなく、北米のマーケットでは集客力に乏しい。39歳となりキャリア終盤、日本はアウェイだがドネア同様、日本で試合をしたことがあるリゴンドーは歓迎されることは言うまでもない。全盛期を過ぎているとはいえは話題性は十分。条件さえあえば最後の出稼ぎとして極東の地は悪くない大舞台になるはずだ。

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井上対ロマチェンコ

 変幻自在のロマチェンコ、全階級屈指のパワー・パンチャー井上尚弥戦は一体どんな戦いになるのか。妄想は尽きない。TopRank社のボブ・アラム氏はPFP傑作のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)戦を示唆する発言を繰り返しているが、現段階で井上とロマチェンコが戦うプランは現実的とは言えず単なるプロモーションだろう。

 そもそも、ロマチェンコは4階級上のライト級の選手で、スーパーフェザー級に下げたとしても、井上陣営が直ぐに階級を上げる決断をするとは思えない。WBSSバンタム級決勝でノニト・ドネア(フィリピン)戦で体格差に苦労した井上は、階級アップは慎重になることが予想される。アラム氏はどこまで本気かは分からないが、すくなくても1年、2年という短い期間で現実的になる話ではない。それでも、ポテンシャルが高く成長の余地がある井上が急上昇すれば話は別だが・・・。

 井上は、来年2020年にTopRank社が主宰する米国のイベントで2試合を予定。ここに上げた選手と米国でマッチメークが実現する可能性は極めて低い。


 初戦は、かつて山中慎介のスパーリング・パートナーで、井上拓真のスパーリング・パートナーとして来日したことがあるIBF1位マイケル・ダスマリナス(フィリピン)/33戦30勝20KO2敗1KO1分との指名戦が最有力だ。IBFは指名戦に厳格でWBA王者ドネアとの統一戦を制した井上は指名戦を片付けなければならない。次に有力なのがバンタム級中堅クラスで井上に負けたニエベスに勝ったTopRank傘下のジョシュア・グリア(米)/24戦22勝12KO1敗1分だ。

 全てが順調に行けば2020年末には日本で凱旋予定。年末にWBO王者ゾラニ・テテ、ギレルモ・リゴンドーらを招聘して軽量級ビッグ・ファイトが日本で開催される可能性は十分ある。
 
 米国行きのチケットを獲得した井上尚弥。だが、軽量級の主戦場は日本だ。TopRankと提携するESPN(米スポーツ専門チャンネル)がどこまでペイするか不透明な部分がある。もちろん、TopRankと契約することで今後のマッチメークは有利になる大きなメリットはある。

 TopRankボブ・アラム氏は、長期的な投資と見ていることは間違いない。そして、米国でスターになるには最低でもフェザー級。アラム氏はフェザー級まで見据えているはずだ。そして井上のライバルとなる米国人やメキシカンの人気のスターが必要になってくる。軽量級の需要が低い北米のマーケットでどれだけ商品価値を最大化できるのか。TopRankの手腕にかかってくるが、日本ではスポーツの枠を超えた知名度を誇る井上も多くの期待を背負うこになり重責は大きくなる。2020年米国再上陸を楽しみに待ちたい。

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