井上尚弥が世界の「イノウエ」になる日は来るのだろうか。今や日本での知名度も急上昇したエースが米国の有力プロモーターと契約を交わしても誰も驚かない。それが必然なことだし、もはや日本のリングでは小さすぎる。

 トップランク社(米有力プロモーター)ボブ・アラム氏が本格的に井上獲得に乗り出す。米メディアによると、ボブ・アラム氏は、7月中にも井上陣営と帝拳プロモーションズ本田会長と米国で共同プロモート契約に向け会談する予定であることを明かした。

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アラム氏が井上獲得に動き出す

「有望に見える」
 井上獲得に自信を覗かせるボブ・アラム氏は、7月12日大阪にあるエディオンアリーナ大阪で行われるWBA世界ミドル級タイトルマッチ、王者ロブ・ブラント(米)対村田諒太(帝拳)で来日しその後、井上陣営と本田会長と会談する流れ。

 井上は、賞金獲得トーナメントWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)で元世界バンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)、IBF世界バンタム級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を初回で粉砕。国外で大きく露出したことで、一気に知名度が上がり、井上獲得は争奪戦となる可能性が高まっている。

 井上に触手を伸ばしているのはトップランク社だけでない。英国ボクシング界の火付け役で米国にマッチルーム支社を設立し米ボクシング市場に乗り込んだエディ・ハーン氏や、1試合3200万ドル以上(約34億円)を稼ぐWBA・WBC・IBF世界ミドル級統一王者サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)を獲得したDAZN(ダ・ゾーン)も熱い視線を送っている。

 一部報道では、井上尚弥がトップランクと合意したと報じられているがまだ、正式契約はされてない。ボブ・アラム氏は「井上との契約が確定したと誤って認識されている。ドネア戦が終わったら話したい」と契約を否定。WBSS決勝が終わったあと協議の上で契約を交わしたいと主張している。

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井上、トップランクと契約か?!

 井上がトップランクと契約しても何ら不思議ではない。WBSSに出場、世界王者、世界王者を序盤で粉砕した井上はアメリカでも高い評価を得ている。そして、帝拳プロモーションズは、日本の窓口的な役割でトップランク社とはビジネス・パートーナーだ。アラム氏が言う通りWBSSで優勝を飾ればトップランク社と契約する可能性は極めて高い。

 ひと昔前、HBO、Showtimeが2大巨頭だった時代は、日本人が米本土の有力プロモーターと契約を交わすことは稀だったが、北米のボクシング市場の予算が拡大した影響と、西岡利晃をはじめ石田順裕の活躍もあったおかげで日本人選手の評価は上昇。プロモーターと契約し易い環境に変化している。最近では、伊藤雅雪、岡田博喜がトップランク社と契約している

井上は米リング誌で4位と高い評価

 階級を無視して全階級で誰が一番強いかを決めるパウンド・フォー・パウンド(PFP)のランキングでは、米国で最も権威あるリングマガジン社は、井上を4位にランクした。
 
 トップスリーは錚々たるメンツだ。首位は、世界最速で3階級制覇したワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、2位には主要4団体を制覇したテレンス・クロフォード(米)、3位にはメキシカンの象徴、2階級を制覇したサウル・カネロ・アルバレスとなっている。井上はカネロの次点にランクされている。

 米専門誌リングマガジンは、長い歴史を持っていることから最も権威があると言われている。中でもリング誌が独自にもつPFPランキングとあわせ、専門家が階級別にランキングするランキングは、メジャー4団体の世界ランキングとは異なり、公平なことから選手を評価する上でこれまでの戦績とあわせ指標にされることも多い。

 メジャー4団体(WBA・WBC・WBO・IBF)承認団体のランキングは、プロモーターとの癒着もあり公平とはいい難い。もちろん、ビジネスの側面が大きいプロ・ボクシングでは仕方がないが、これまで圏外だった選手をトップ3に引き上げ世界タイトルマッチとして承認させることザラだ。

 米リング誌のランキングは複数のパネラーのあいだで議論されランキングが決定する。リング誌ダグ・フィッシャー編集長は井上を「だれが、一度もKOされたことのない元王者や世界王者を簡単にフィニッシュできるんだい?クロフォード、ロマチェンコがそれをできるというのか?」と興奮気味だ。

 井上を高評価しているのは米リング誌だけではない。元リング誌記者で今は、ESPNのボクシング記者を務めているベテランのスティーブ・キム氏は、井上をPFP1位に選出。ESPNはパネラーが投票して決めるポイント・システムを採用している。井上を1位に選出したパネラーはキム氏一人だけだった。

 最近では米ボクシング・シーンが井上をPFP2位にランクしWBA・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を抜き去り大きな話題になっている。ただ、PFP2位の妥当性については、米リング誌ダグ編集長やマイク・クッピンガー氏は井上を推しているが、十分議論する余地はある。

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トップランク、ボブ・アラム氏とは

 トップランク社ボブ・アラムと聞けば、海外ボクシング・ファンであれば、一度は耳にしたことがある名前だと思う。

 トップランク社は米国にオフィスを構える米国では有数のプロモーション会社で、世界トップクラスの選手と契約を結んでいる。ボスは敏腕プロモーターとし知られるボブ・アラム氏で、歴史的にも重要な戦いをプロモートし選手をスターダムにのし上げる手腕もある。

 1972年には、モハメド・アリ対ジョー・フレジャー再戦。1980年以降、中量級黄金時代を築いたスター達、ハグラー対ハーンズ、ハグラー対レナード、レナード対デュランなどボクシング史に残る名勝負を手がけている。90年以降は、バルセロナ五輪金メダルを獲得した”ゴールデン・ボーイ”の異名で知られるオスカー・デラ・ホーヤと契約を結びスターに育て上げた。

 2000年以降、米ラスベガスでオスカー・デラ・ホーヤの前座で当時最強と呼ばれたリーロ・レジャバの代役として白羽の矢が経ち大番狂わせを起こしたフィリピンの英雄マニー・パッキャオもアラム氏と契約して米国でスーパースターとなった。

 フィリピンの英雄がこれほどまで世界的に知名度を上げたのは、パッキャオのトレーナーで二人三脚で歩んできた名匠フレディ・ローチ氏しかり、北米でヒスパニック層に目をつけたアラム氏の手腕でもある。

 マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)、エリック・モラレス(メキシコ)、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)ら人気と実力を兼ね備えたメキシカンをぶつけ一気にパッキャオの商品価値を引き上げた。

 その後、ライト級にあげ王座を獲得。スーパーライト級でリネラル王者だったリッキー・ハットン(英)を失神KOさせ、その後はウェルター級を制覇して事実上8階級を制覇。1試合32億円を稼ぎ出す文字通りスーパースターとなった。

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井上は、ロマチェンコ、クロフォードと並ぶことに

 もし、井上がトップランクと契約した場合、軽量級のハード・ヒッターとして売り出されるのは確実。既にメディアが報じているとおり井上には軽量級としては破格の報酬が確約されても不思議ではない。

 北米ボクシング市場は覇権争いが過熱。トップランクと提携関係にある米スポーツチャンネルESPN、対抗勢力となる米地上波FOX/Showtimeと契約するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)、新勢力DAZNの影響もあり、コンテンツ勝負となり有力選手獲得に躍起で投資は惜しまない。

 最近ではDAZNが米本土で最大の商品価値を誇るサウル・カネロ・アルバレスと5年10試合、3億6500万ドル(約410億円)でスポーツ市場最高の契約を結んだ。もちろん、カネロの契約金は異例としても、派手なKO劇が約束される井上獲得の交渉テーブルに各局が大金を積んでも不思議ではない。

 現在、トップランクは、現代ボクシングの最高傑作と言われ誰もがPFP上位と疑わないWBA・WBO世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)。ライト級ではリネラル王者、スーパーライト級では史上三人目の4団体統一王者となったWBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)が看板選手だ。井上が契約すればロマチェンコやクロフォードに並ぶことになる。

 ボブ・アラム氏は主戦場を米ロサンゼルス、米ラスベガスを挙げているがロサンゼルスはともかくとしても、井上は階級アップしたとしてもスーパーバンタム級。軽量級の需要がないラスベガスでどうやって井上を売り込む気なのか分からない面もある。とはいえ、井上がWBSSで優勝すればその辺りもクリアになるのだろう。

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