ライト級デビュー戦は以外な結果となった。これまで、快進撃を続けていたデービス、階級の壁にぶち当たったのだろうか。勝敗よりも内容が問われるユリオルキス・ガンボア(キューバ)戦は3度のダウンを奪い勝ったもの、内容的に期待値を大きく下回りイマイチだった。レビューと共に、2020年以降のライト級戦線を占う。
WBA世界ライト級タイトルマッチが2019年12月27日米ジョージア州アトランタで行われガーボンタ・デービス(米)がユリオルキス・ガンボア(キューバ)と対戦し計3度のダウンを奪い12回KO勝ちしWBA世界ライト級王座を獲得した。
デービスはWBAライト級王座を獲得したがセカンド・タイトル、厳密に言えば2階級制覇ではない。なぜなら、上位WBAスーパー王座にはワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が君臨し主要米メディア、WBA(世界ボクシング協会)以外の承認団体もWBAにスーパー王者が君臨する場合、セカンド・タイトルを持つ王者はチャンピオンとみなしていないからだ。デービスは戦績を23戦全勝22KO、ガンボアは33戦30勝18KO3敗3KOとした。
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2019年、北米のボクシング市場は活性化した。これまで、主要な試合は米ニューヨークやラスベガスが舞台だったが、地方都市にも広がりを見せている。ローカル人気ということもあるが、地方都市でこれだけ人集めるのは単純に地元ということだけでなく、それだけボクシング需要がある証だろう。米ジョージア州アトランタで行われたイベントには、14,129人の観客が集まった。
ガンボアは2回アキレス腱を断裂していた
何より驚いたのが12回までもつれ込んだことだ。ガンボアは、直近でローマン・マルチネス(プエルトリコ)と生き残り戦を制しデービス戦へ進んだが、ガンボアはすでに38歳で峠を過ぎ、全盛期のスピード、反射神経は持ち合わせてない。大方、デービスがはやいラウンドで決着をつける見方をしていた。
デービスは12回、ガンボアに左アッパーを叩きこみ3度目のダウンを追加し勝ったが、今夜のパフォーマンスは十分とは言い難いものだった。2回、足を負傷したガンボアは完全に不利になったが12回までサバイブ、デービスはスコアで大きく差をつけたが予想以上に苦戦、後半は減速も目についた。
1回、序盤から倒す気満々のデービス。ロングからでも踏み込んでくるからガンボアも油断はできない。しかし、両者の身体能力の違いは明白で、モビリティに優れるデービスの攻撃にガンボアの反応速度はあまり良くなくついていけなかった。
動いたのは2回だった。ガンボアはデービスのワンツーをダックして、サイドへ周りこむ際に返しの左フックを当て込まれダウン。その後、立ち上がったが、ダウンした際にバランスを崩し倒れたガンボアの足取りはおかしかった。
3回、ダウンを奪ったデービスは容赦なくガンボアに襲いかかり、ガンボアが倒されるのは時間の問題に見えた。2回、フットワークは完全に機能不全に陥り、ガンボアが足を故障したことは明らかだった。2回まで、デービスの攻撃に対しフットワークで回避していたが、踏み込みもできない状態だった。
中盤、デービスは接近戦でガンボアを倒そうと試み精度の高い、アッパー、フックを叩き込んだがパワーでガンボアを崩すことはできなかった。一方、ガンボアは、踏み込むことも出来ずその場に居ることがやっとだ。
実質、足が使えなくなったガンボアは、デービスのハードショットを貰い劣勢になることも多くなったが、クリンチワークで何とか凌ぎ7回、ガードが緩いデービスに効果的なコンビネーションを浴びせ反撃した。
8回、デービスは左フックで2度目のダウンを追加。足が機能しないガンボアは、その場で打ち合いに応じるかクリンチ・ワークに徹するしかなかった。
後半目立ったのはデービスの被弾だ。L字ガードは鉄壁ではなく、ガンボアのパンチを被弾し動きが止まるシーンも目立った。11回が終わり、コーナーに戻ったデービスははっぱをかけられたに違いない。12回、一気に仕留めにいった。1分が過ぎると左トリプルの強打から、最後は左アッパーでダウンを奪いレフェリーは試合を止めた。
一方、脅威的なタフネスを披露したガンボアは、ESPNによれば、2回、足を負傷してアキレス腱を断裂しているという。怪我の程度など詳しいことは分かってないが今後、MRI検査を経て手術が必要かどうかわかる見通し。
Sponsor Linkデービス次戦はサンタ・クルス戦か

photo by:boxingscene
「今夜のパフォーマンスはC+だった」
インタビューでこう述べたデービス。
前日計量で体重超過、コンディションが万全だったのだろうか。それより、気になったのがいくつもパワーショットをコネクトしたにも関わらずガンボアをノック・アウトできなかったことだ。階級の壁にぶち当たった可能性もある。
これまで、強打を武器に挑戦者達をことごとくノックアウトしてきたが、ライト級にあげ強打者のイメージは薄れた。スーパーライト級まで視野に入れるのであれば、ライト級へのアジャスト、パワーの強化と戦術の課題は残るだろう。
これまでスーパーフェザー級で猛威を振るいKOを量産しロマチェンコの対抗馬としてデービスの名が上がってきたが実力者との経験は少なくデービスの実力を疑問視する声もすくなくなかった。
実際、完全にフットワークを失ったガンボアを崩すことが出来ず自慢の強打頼りだ。パンチの被弾が目立ち警戒感を増したのか攻撃が止まるシーンもあり、雑なディフェンスも再び露呈した。
デービスをプロモートするフロイド・メイウェザーJr.がロマチェンコ戦に言及しないのはディフェンス、戦術面が懸念材料なのかもしれない。
2020年ライト級の行方
ライト級は近年稀に見る高度な人材が集う階級だ。プロモーターやTV局の障害があるが、総当たり戦を実現すればビッグ・ビジネスになることは間違いない。実現に向け歩み寄ってほしいものだが・・。
デービスは次戦、同時期にスーパーフェザー級にあげPBCと緊密な関係にあるWBA(世界ボクシング協会)に働きかけ空位の王座を獲得したWBA世界スーパーフェザー級王者レオ・サンタ・クルス(メキシコ)とのPPV(ペイ・パー・ビュー)マッチが期待されるが、サンタ・クルスがライト級に直ぐ階級を上げるかは不透明だ。
地元ボルティモアに続いてアトランタにも多くの観客を動員、今戦は思うようなパフォーマンスを示すことは出来なかったが、25歳という年齢を考えれば成長途中、ライト級での実力は疑問符がついたが依然として魅力的なボクサーであることに変わりはない。
トップにはPFP傑作WBA・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が君臨する。ロマチェンコは、2020年4月にもリチャード・コミー(ガーナ)を下しIBF王座を獲得したリオ五輪組の若手のテオフィモ・ロペス(米)と3団体王座をかけることが既定路線だ。
WBC王者はデビン・ヘイニー(米)、トップ・コンテンダーにはホルヘ・リナレス(ベネズエラ)、そして、2020年にはリナレスと対戦が期待されるGBP(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)が抱えるトップホープ、ライアン・ガルシア(米)もいる。
面倒なTV局の障害があることから、デービスはPBCが傘下のレオ・サンタ・クルス、ハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)、ランセス・バルテレミー(キューバ)、ロバート・イースター(米)らが基本路線だ。
2020年2月には同じイベントに出場するホルヘ・リナレス(ベネズエラ)、ライアン・ガルシア(米)が勝てばプロモーターは夏頃にぶつける青写真を描いていることは間違いない。王座はかけられないが米本土で集客能力のあるガルシアが、ライト級で豊富なキャリアを持つリナレスと戦うことは理にかなっている。
そして、休養王者となったヘイニーが何時頃リングに戻れるかは不透明だが、回復すれば正規王座決定戦を争うキャンベル対フォルトゥナと王座統一戦が義務付けられることになる。2020年、ホープ同士の潰しあいが見れることに期待したい。
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