“BIG DRAMA SHOW”再びなるか。カネロが剥奪され空位となったIBF王座決定戦は、数年前に指名戦を行うはずだったゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)/41戦39勝35KO1敗1分とセルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)/14戦13勝1敗で争うことが決った。10月5日、会場は米ニューヨーク、マンハッタンにあるマディソンスクウェア・ガーデンで挙行、DAZN(ダ・ゾーン)がストリーム配信する。

 37歳になり、被弾はともかく身体が流れるようになり下半身の衰えを隠せないゴロフキン。デレイビャンチェンコ戦は、文字通り自身がミドル級でトップ・レベルの実力者であることを証明するビッグ・テストになる。

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ゴロフキンは体制を一新

photo by:boxingscene

 ネットストリーム配信大手DAZN(ダ・ゾーン)と大型契約したゴロフキン、6戦契約で契約金額は推定で数千万ドル。自身のプロモーション会社GGGプロモーションズを設立したゴロフキンは体制を一新、DAZNと提携関係にあるマッチルーム・ボクシングと共同でイベントを開催してくことで合意した。

 そして、ファンや関係者を驚かせたのは、北米に上陸してから長年パートナーを組んできた名匠アベル・サンチェス氏を解任したことだ。DAZNと新契約を結び記者会見の場には、アベル・サンチェス氏の姿はあったが、なんと報酬を減額して事実上の解任に追いこんだ。新たにジョナサン・バンクス氏がヘッド・トレーナーとして就任している。

 ゴロフキンがサンチェス氏を更迭したのは、カネロとの再戦に敗れたことが少なからず影響を及ぼしたことは間違いない。大きく評価を落とした試合ではなく、米国ではゴロフキン勝ちの論調だったが、サンチェス氏の戦術は正しかったかどうか。「まだまだ、学びたい」37歳になったゴロフキンが自身のスタイルのアップデートを望んでいることは間違いない。

「あの恩知らず」サンチェス氏の気持ちも十分理解できる。ゴロフキンがここまでのステージに登りつめたのは、K2プロモーションズのトム・ローフラー氏とサンチェス氏の功績抜きでは語れない。サンチェス氏は、20回連続のKO防衛に導きいつもゴロフキンの側にいた。もちろん、まだ米カリフォルニアにあるビッグベアー・レイクをトレーニング拠点とするゴロフキン、サンチェス氏の解任は苦渋の決断だったに違いない。

しかし、結果として勝てなかったことが離別に繋がったことは否定できない。選手が負けを機にトレーナーを変更することは珍しくない。あのマニー・パッキャオ(フィリピン)もジェフ・ホーン(オーストラリア)に敗れたあとフレディ・ローチ氏を一時的にヘッドトレーナーから解任している。

 バンクス氏は、トレーナーの経験はもちろんボクサーとしての経験もあり多くの知見を持っている。なにより、元ヘビー級統一王者ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)を2012年から引退した2017年までトレーナーを務めている。もともと、クリチコのトレーナーはエマニュエル・スチュワート氏が務めていたが、スチュワート氏が亡くなり、スチュワート氏の弟子のバンクス氏がクリチコのトレーナーを後継することになった。

トレーナーとして抱える選手は、女子でウェルター級4団体を統一して無敗記録を更新し続けるセシリア・ブレーフクス(ノルウェー)、五輪2連覇を達成し女子世界ミドル級4団体を統一したクラレッサ・シールズ(米)と抱える選手は少ないなが、それだけ関係性を築くだけの時間はあるし、集中できる環境を作りやすい。もちろん、サンチェス氏のような信頼関係を短時間で形成することは難しいかもしれないが、ゴロフキンの大幅なアップデートは不要。スチュワート氏から受け継いだ多くの経験は、破壊力があるパンチに加え戦略と戦術、ブラッシュアップは十分期待できるだろう。

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ゴロフキン、デレイビャンチェンコ戦はビッグテスト

photo credit:boxingscene

 北米ではネーム・バリューこそ低いが、ダニエル・ジェイコブス(米)と接戦を演じたトップ・アマのデレイビャンチェンコが相手。DAZNがカネロとの3部作目を目論み、チューン・アップ戦の相手として送り込んだロールスとは全く異なりキャリア後期を迎えたゴロフキンにとって楽な相手ではない。バンクス氏とどこまで仕上げることができるのか。まだ、ゴロフキンの強さは健在なのか。興味深い戦いになる。

 デレイビャンチェンコは、アマチュアで400戦以上で戦績は390勝20敗という豊富な実績をもつ。2007年シカゴで開催された世界選手権にミドル級で出場して銅メダルを獲得。翌年、北京五輪に出場している。プロ転向後はニューヨークの興行を取り仕切るルー・ディベラ氏と契約を結び、米ニューヨーク、ブルックリンに拠点を移している。ゴロフキンのようなパンチャーではないが、攻防のしっかりしたアマ仕込みのテクニシャン・タイプだ。

 プロ通算13戦12勝1敗。米リング誌のミドル級ランキングでは村田諒太の次点の6位に評価されている。中堅クラスのトリアーノ・ジョンソンを破りIBF指名挑戦権を獲得。空位のIBF王座決定戦を同門のダニエル・ジェイコブス(米)と争いダウンを奪われ判定で敗れはしたもの、善戦したことでこれまで実力者との対戦が無いことから実力に疑問符がついていたが払拭、ミドル級強豪と渡り合える力があることを証明。その後、ジャック・クルカイに勝ち、ふたたびIBF指名挑戦権を手にしている。

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カネロを揺さぶったデレイビャンチェンコ

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 交渉に勝ったのはデレイビャンチェンコだった。すでに北米の地でスーパースターの座を築いているカネロは揺さぶられる立場。それを上手く交渉に利用したのがデレイビャンチェンコ陣営だった。

 カネロはデレイビャンチェンコ戦しかなかった。ミドル級で傑出した存在だが、ライバル不足で稼げるオプションは限られ、それでいて実績を伴う相手が求められている。対抗WBO王者デメトリアス・アンドレード(米)との王座統一路線もあったが、アンドレードのトリッキーなスタイルはカネロには噛み合い難い。それに、DAZNが購読者を稼げるゴロフキンとの3部作目を前にしてリスキーなアンドレード戦を承認することはあるまい。

 契約するDAZN(ダ・ゾーン)は、カネロ陣営にゴロフキンとの3部作目の契約を迫ったが、説得に失敗。カネロ陣営はゴロフキンとの再戦を拒否する姿勢は崩さなかった。カネロ陣営は、DAZNからWBO世界ライトヘビー級王者セルゲイ・コバレフ(ロシア)戦の承認をとりつけたが合意に向け懸念されることは多かった。

 実は、コバレフはWBO(世界ボクシング機構)から指名挑戦者のアンソニー・ヤード(英)との指名戦が命じられていたのである。資金調達の懸念がありロシア開催が危惧されたが、資金問題が解消して大筋合意。コバレフはカネロ戦に方針を切り替えるには、ヤードへの待機料とメインイベンツ社と共同プロモートするトップランク社(米有力プロモーター)に手数料を支払う必要があり資金を多く用意する必要があった。

 カネロを擁するゴールデンボーイ・プロモショーンズ(GBP)がコバレフ陣営にオーファーした金額は明らかになってないものファイト・マネーは600万ドル(約6億円3000万円)より低かったと言われている。その後、両陣営は締結に向け対話を続けたが報酬面で歩み寄ることなく決裂。コバレフはヤード戦にカジをきった。

 その後、カネロ陣営は9月メキシコの独立記念日の週に予定していた試合をキャンセルすることを発表。IBFから指令されていた同級1位セルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)との指名戦に方針を切り替えた。ただ、カネロはコバレフ戦を締結できなかったGBPに対し強い不満を示していた。おそらく、カネロ陣営の方針としてはIBFの指名戦は回避して、セルゲイ・コバレフ戦に方針を固めていたことは間違いない。

 コバレフ戦が破断になったカネロ。米メディアからカネロとGBP間の不仲説が浮上。暗雲が立ち込めるなかで、当初、大方が回避する見方をしていたデレイビャンチェンコとの指名戦の交渉がスタート。だが、合意に向けとりわ懸念されていたのは米ニューヨーク、ブルックリン在住だが北米でネーム・バリューのないデレイビャンチェンコをDAZNが承認するかどうかだった。

 DAZNは、カネロの報酬を減額する代わりデレイビャンチェンコを対戦相手として承認。交渉は進み10月という具体的な日程が出たがIBFが決定した期限までに合意することはできなかった。もしかすると、デレイビャンチェンコ陣営は合意形成する意思はなく、決裂を望んでいた可能性が高い。米メディアによれば、交渉がまとまらない場合、カネロの王座は剥奪されることが決まっていたという。

 指名戦の交渉が決裂した場合、カネロの王座は剥奪されるが、デレイビャンチェンコは指名挑戦者の権利はそのまま。しかも、王座決定戦になればIBFは指名挑戦権をもつデレイビャンチェンコと同級2位元ミドル級統一王者ゲンナディ・ゴロフキンの両陣営に対し王座決定戦が命じられることは確実視されていた。

 IBFの入札は、たびたび延期となり米メディアから合意が近いと報じられていたが、報酬面をクリアする必要があった。GBPは、この金額ならデレイビャンチェンコがサインするとい自信があったのか分からないが、最終期限が設置され焦っていたに違いない。

 米メディアによるとGBPは、デレイビャンチェンコ陣営に550万のオファーを掲示。もちろん、デレイビャンチェンコにとってキャリア最大の報酬となるが、デレイビャンチェンコ陣営は700万ドル(約7億3700万円)を要求した。強気にでたデレイビャンチェンコ、550万ドルの報酬は言うまでもなくキャリア最高額、報酬額を釣り上げる気だったのだろう。

 ”I’m very upset and ashamed with my fans, to be unfairly stripped of my belt by the IBF, but specially when I did not have the knowledge of the agreement that GBP match maker had signed,”
 王座を剥奪されたカネロ陣営はツイッターを通じて、GBPとIBFの間であった契約を知らなかったと主張。GBPのロバート・ディアス氏がカネロの交渉窓口だった。

 交渉で大きな進展があったとしてIBFは、複数回に渡り交渉期限の延期を認めていたが、7月29日を最終期限として決めた。米ESPNによれば、IBFは7月29日午後3時までに合意できなかった場合、さらなる交渉期限の延期はなし。興行権の入札は行われずタイトル剥奪が決まっていたという。

 翌日、あわてたGBPはIBFにWBO世界ミドル級王者デメトリアス・アンドレード(米)との統一戦の承認をリクエストしたが、認められなかった。IBFは規定で指名戦を回避できるが、指名戦が命じられた段階でIBFの条件を飲む必要があった。

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カネロはコバレフ戦か?!

 カネロは、コバレフ戦に向かう公算が高い。一旦、カネロ対コバレフの交渉は決裂したが、カネロ陣営はゴロフキンとの3部作目には興味はなくコバレフとの交渉を再スタートさせたい意向を示している。

 一方のコバレフは、アンソニー・ヤード(英)と戦い苦しいながら何とか勝ち進んだ。マネージャーのクリマス氏と、トレーナーのマクガード氏はカネロ戦にゴー・サインを出し、コバレフは巨額の報酬が舞い込むカネロ戦をのぞんでいる。交渉がスタートすれば直ぐにでも合意する雰囲気さえ漂うが、先行きは不透明だ。

 11月2日がDAZNがホールドしている日程で、コバレフが同意すれば1000万ドル前後の高額報酬が転がり込むが、ヤード戦から準備期間は約2ヶ月と非常に短期間で臨むことになりリスクも伴う。

 マクガード氏は、短期間でも問題ないと強気の姿勢を示しているが、ヤード戦からリフレッシュする十分な休養はとれない。この辺りのリスクを最終的にコバレフをプロモートするキャシー・デュバ氏がどうは判断するのか不透明感が漂う。ただ、11月2日開催であればタイム・リミットは迫っており近日中にもはっきりしそうだ。

(Via:boxingscene

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