Easyな戦いではなかった。ファンにとって記憶に残る素晴らしいファイトだった。ウェルター級屈指の強豪IBF世界ウェルター級王者エロール・スペンスJr./25戦全勝21KOWBC世界ウェルター級王者ショーン・ポーター/33戦30勝17KO2敗1分戦はやくも年間最高試合の呼声も高い。

 試合後の記者会見に現れたスペンスの右目は腫れ上がり激闘を物語っていた。ウェルター級強豪クラスのショーン・ポーター(米)相手にフル・ラウンド戦い抜き、消耗戦となった11回打ち合いのなか左フックでポーターの顎を打ち抜きダウンを奪い見せ場を披露、苦しかった戦いを勝ち取った意味は大きい。ただ、ポーター戦を通じてウェルター級強豪相手だと苦戦を強いられ、無敵感はなくなった。今後は、マイキー・ガルシア(米)らとマニー・パッキャオ(フィリピン)の争奪戦が予想されるが、恐らくパッキャオは、まだスペンスをピック・アップすることはないだろう。

 米カリフォルニア州ロサンゼルスにあるステイプルズ・センターで行われたIBF・WBC2団体王座統一戦は、IBF世界ウェルター級王者エロール・スペンスJr.(米)がWBC世界ウェルター級王者ショーン・ポーター(米)を2−1(116−111スペンス、115−112ポーター、116−111スペンス)の判定勝ち。IBF王座防衛に成功、WBC王座を獲得し2団体王座を統一したスペンスは全勝レコードを26戦全勝に伸ばした。ポーターは34戦30勝17KO3敗1分、負けはしたが出し惜しみないファイト・スタイルで多くファンを魅了した。

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 ポーターは、ブルック、サーマン、ガルシアら強豪クラスとの対戦経験があり、今回が初のペイ・パー・ビュー(PPV)イベント。オッズはスペンスに傾いていた。米アナリストらの大半はスペンスの判定勝ち。倒される見方もあった。が、スペンスの強打をもらっても怯まない驚異的とも言えるメンタル、タフネスを披露。まだまだ、ウェルター級トップ戦線には残りそうだ。

スペンスは初のウェルター級強豪ポーター戦

 現時点で、ウェルター級トップはスペンス、クロフォード、パッキャオこの3人だ。なかでも、スペンスの評価は高かいが強豪クラスとの経験は浅くキャリアはそう厚くない。クリス・アルジェリ(米)を葬り、サーマンを追い詰めたレオナルド・ブンドゥ(伊)に勝ち、順当にキャリアを構築。ポーターが初の強豪相手、ウェルター級で実力を示す絶好の機会だった。

 これまで世界水準に到達する相手はケル・ブルック(英)だけだ。しかし、当時のケル・ブルックがウェルター級強豪と呼べるかは疑問が残る。IBF王座をケル・ブルックと戦い勝ちとったが、ブルックは直近、無謀にも2階級上げミドル級帝王ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に挑み眼窩底骨折を負い壊された感は否めない。

 ラモント・ピーターソン(米)相手に文句なしの勝ち星を得たが、そもそもピーターソンはスーパーライト級の選手でウェルター級での実績はゼロだ。マイキー・ガルシア(米)に対し高い戦術を示し勝ったことは事実だが、マイキーはライト級から2階級あげての挑戦で、もともとウェルター級がナチュラルなクラスではない。もちろん、これまでウェルター級エリート・クラスのキース・サーマン(米)らがスペンスを避けていたことがあり、スペンス自ら実力者との対戦を切望していた状況ではあった。

 一方のポーター、直近ウガス戦では苦戦をしたが、サーマンに善戦しダニー・ガルシア(米)と空位のWBCウェルター級王座を争い王座を手にした。これまで、エイドリアン・ブローナー(米)、アンドレ・ベルト(米)、デボン・アレキサンダー(米)、ポール・マリナッジ(米)に勝りウェルター級では一次リーグに位置し、米リング誌ウェルター級ではサーマンの次点5位にランクしている実力者だ。ただ、最近はKO率50%自慢の強打が炸裂しなくなっている。

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スペンスは苦労したがウェルター級での存在感を強めた

photo by:boxingscene


 スペンスは、フィジカルのアドバンテージを有効に使い、強いジャブで相手を後退させることも出来るし、ジャブを使い相手の前進を阻み左ストレートで迎撃することだって出来る。しかし、今回の相手はタフが売りなポーター、時には頭から突っ込みダーティ・ファイトをすることもある。12ラウンド通じてペースを掴みきることは難しく、11回 ダウンまではシーソー・ゲーム、スコアほどの差は感じられず余裕は全くなかった。

 前半、ポーターは小刻みにフットワークを使い出入りしてスペンスの出方を伺う。当然、ポーターはスペンスとの距離を潰して強引に入り込みパワー・ショットを浴びせるのが狙い。多少の被弾は想定の範囲内。ロープ際のエスケープ、ポジションの入れ替えは見事だった。

 スペンスは、ポーターが距離を縮めステップ・インに合わせカウンターの左の打ち下ろしを見舞うが、ポーターはお構いなしに入ってくるので攻めきれないシーンが続いた。接近戦の打ちあいでポーターの左、右のクリーン・ショットを貰い顎を跳ね上げられる場面もあった。

 ポーターもクロス・レンジでカウンターを狙うが、パンチの正確性では明白にスペンスが上だった。745発中221発を的中(30%)、ポーターは744発中172発(23%)。接近戦に持ち込みたいポーターだが、スペンスの的確なボディ・ショットを貰い、ロープ際で左ボディ・ストレートが突き刺さる場面ではタフなポーターが一瞬とまるシーンもあった。

https://twitter.com/PBConFOX/status/1178177608220958722
 ポーターのラフ・ファイト、クリンチ・ワークでペースを掴みきれないスペンスだったが11回、クロス・レンジで左フックでポーターの顎を打ち抜きダウンを奪った。ポーターは完全に意識が飛んだように写ったが、驚異的なメンタルで立ち上がってきた。この戦いにかける意気込みは並大抵ではなかったことは間違いない。

 スペンスは、全ラウンド通じてペースを掌握しきれなかったが2−1の判定勝ち。タフなポーター相手に12ラウンド戦い抜いた。これまで、自分と同レベルの相手と戦った際の打たれ強さタフネス面で疑問を呈する声もあったが、厳しい戦いの中で証明したことは多くウェルター級で存在感を強めたことは間違いない。

 今後、スペンスは同じPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)傘下のマニー・パッキャオとWBA含めた3団体王座統一戦で実現させ、一気にスターダムに駆け上がりたいところだが、おそらくパッキャオはより稼げるマイキー・ガルシア(米)戦に向かう公算が高い。パッキャオはフィリピン議会が閉会となる2020年第1四半期頃にリングに戻る予定だ。

 となると、スペンスの有力候補は試合後にリングに現れたダニー・ガルシア(米)なのだろうか。もちろん、両陣営が臨めばPBC傘下だけにマッチメークは難しくないがポーター戦を見る限り、ガルシアを倒すことは難しくなるに違いない。何れにせよ、完全に蚊帳の外でライバルのWBO王者テレンス・クロフォード(米)を含め、2020年ウェルター級でビッグ・ファイトの期待が高まりそうだ。

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