”Making History”、強烈なノック・アウト劇を誰が予想しただろうか。筆者は判定でカネロ勝ちを予想していたがこの結末は予想していなかった。コバレフ相手にプレスをかけ後退させ最後は、パワフルなショットで完全に沈めた。2019年のKOオブ・ザ・イヤー候補に挙がることは間違いない。メキシカンの象徴カネロがWBO世界ライトヘビー級王者セルゲイ・コバレフ(ロシア)と対戦し11回KO勝ち。カネロは、スーパーウェルター級からライトヘビー級王座獲得に成功したトーマス・ハーンズ(米)、シュガー・レイ・レナード(米)らに並ぶ史上4人目となった。

 ミドル、スーパーミドル級の王座を同時に保持しながらWBO世界ライトヘビー級王座奪取に成功した。厳密に言えばスーパーミドル級はWBA(世界ボクシング協会)セカンド・タイトルで、同時3階級制覇したヘンリー・アームストロング(米)とは時代も異なり比較にはならないが、偉業を達成したことにちがいはない。

 2階級を上げてもスピードは失わず、パワーはコバレフに十分通用した。そして、高等スキルに加え屈強のディフェンス力、コバレフはライトヘビー級では最強とは言えないが、カネロがライトヘビー級で多くのことを証明したことは間違いない。

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コバレフは危険な相手だった

photo by:boxingscene


 カネロは成長著しいが、コバレフは危険極まりない相手だった。コバレフは全盛期を過ぎ下り坂であるが殺傷能力の高いパンチはいまだ健在。カネロはミドル級でも小柄、ゴロフキン戦で信じられないほどのタフネスを示しているが、2階級あげてのライトヘビー級は全く未知の領域だ。カネロのスピードは戦いのなかで大きなアドバンテージになるが、タフネス、メンタルと多くのことがテストされる戦いだった。

 一方、コバレフは36歳となり勢力は衰えたとはいえ、ナチュラルなライトヘビー級の住人で破壊力あるパンチは健在。直近、アンソニー・ヤード(英)戦は劣勢だったもの最後は左ジャブでヤードを完全にストップ、サバイブして強い存在感を示している。

 オッズは、カネロに傾いていたが体格差は歴然、圧倒的なサイズとパワーの違いがあった。ただ、コバレフはメンタル、コンディショニングに不安はあった。今戦は8月終わりのヤード戦から僅か2週間後にトレーニングをはじめる必要があり、十分な休息期間はなく、アンドレ・ウォード(米)との再戦に敗れ、酒浸り心身ともにダメージを負った過去があるコバレフはメンタルが少なからず不安視されていた。が、カネロ戦はキャリア最高額の1200万ドル(約13億2400万円)、断る理由はなかった。

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カネロ、コバレフ戦は簡単ではなかった


 カネロは完璧な勝利を飾ったが、コバレフを打ち落とすのは簡単ではなく11回まで、両者に大きな開きはなく、公式スコアカードは、1者が95−95ドロー、2者96−94カネロだったが、試合が終わるまでの米ESPNのスコアは97−94コバレフと採点は割れていた。

 カネロは正確性、的中率でコバレフに差を付けた。Compuboxによると、カネロは345発中、39%にあたる133発を的中させた。一方、コバレフはゲーム・プラン通り進めたもの745発中、115発と的中率は15%、ジャブは577発とカネロの4倍以上出したが的中率は僅か11%、カネロは23%、パーワーショットでもカネロが48%、コバレフ31%と大きく差を付けた。

 「彼はガードを固く閉じていた。彼がポイント・メイクに徹していたことはわかっていた」
 ジャブでカネロの前進を止めることを最優先とし、無理に攻勢には転じずいつもの力強いコンビネーションは封印し、ポイント・メイクに徹しとにかくジャブで手数をだし続けたが正確性にかけた。必要以上にカネロのカウンターを警戒していたようにも見えたが、それも踏まえて陣営の戦略だったのかもしれないが、カネロを脅かすほどのクリーン・ショットを与えることはできなかった。

 カネロは、コバレフとの距離をじりじり詰めたが距離は遠く。ボディはもちろん、接近戦に持ち込み得意のアッパーを打てる距離を作ることに苦労していた。おそらく、カネロ自身も階級の壁は感じていただろう。いつもながら、ヘッド・スリップ、スウェーを多様するが、オンガード・ポジションにおき硬いブロッキングが中心。確かに、的中率ではカネロだったが、見方によってはコバレフに傾くラウンドも多かった。

 なかなか突破口を開けずにいたもの、時より放つ得意のボディ、左フックはコバレフの体力を着実に削り、ダメージを蓄積していったことは間違いない。中盤以降、スロー・ダウンしはじめたコバレフは9回急速に失速、クリンチ・ワークが明らかに多くなり疲れが見え始め、これまでジャブを出していたもの手数が減り、パワーも感じられなくなっていた。

 10回、コバレフは後退を強いられる場面も多くなってきた。ジャブでカネロの前進を阻むことが難しくなり、カネロがインサイドに入りやすくなり、カネロのハード・ショットが当たるシーンが多くなってきた。11回、カネロは的中率の高いハードなジャブで前進し接近戦でアッパー、ボディを突き刺した。

https://twitter.com/Canelo/status/1190880931147501569
 11回、カネロ・コールが湧き上がる中、勝負は残り1分で決まった。コバレフは手数で応戦するも疲労困憊、左右のフック、コバレフがクリンチにいったところカネロが右フックでほどき、左フックでグラつかせ、陥落寸前のコバレフの顎を打ち抜きKO勝ち。コバレフは崩れ落ちた。

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カネロの次戦はどうなるのか

 WBO世界ライトへビー級王座を獲得したカネロ。追い求めるのはレガシーだ。ミドル、スーパーミドル、ライトヘビー級と3階級を見渡せるカネロのオプションは多い。

 まず、カネロがWBAタイトルを保持するミドル級は、タレントが豊富に揃うがライトヘビー級でコバレフを倒した今、名声を上げられる選手は殆どいないのが現状でミドル級で試合をする可能性は極めて低い。トリッキーで相性は最悪なWBO王者デメトリアス・アンドレード(米)、WBC王者ジャーモール・チャーロ(米)はカネロと契約するDAZNと敵対するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)傘下でTV局の障害が大きく立ちはだかる。

 そして、160ポンド(ミドル級リミット)から175ポンド(ライトヘビー級リミット)と2階級あげたカネロの次戦が2020年5月だとしても2階級下げることは身体にもかなりの負担がかかる。1階級下げ保持するWBA世界スーパーミドル級で防衛戦をするか、ライトヘビー級に留まるかの何れかになるだろう。

 4階級制覇を達成したカネロだが、厳密には4階級制覇とは言えない。保持するスーパーミドル級王座はWBAセカンド・タイトルでスーパー王者にはWBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)スーパーミドル級で優勝したカラム・スミス(英)が君臨しているからだ。


 米メディアを含めWBAの他団体、WBO(世界ボクシング機構)、IBF(国際ボクシング連盟)はセカンド・タイトルは王者として認めていないのである。それに、WBAスーパーミドル級王座を奪取した相手はロッキー・フィールディング(英)で実力者とはいい難い。カネロが、関心を示すか分からないがカラム・スミス戦が締結すればメリットは大きい。スミスを下せば正真正銘の4階級制覇となるからだ。

 カネロの本拠地米ラスベガスも有力視されるが、英国で開催したほう興行規模は大きくなる。ウェンブリー・スタジアムで米英をかけるメガ・ファイトは世界的に大きな注目を浴びる戦いになることは間違いない。スミスは統一王者ではないがWBAとリング誌のタイトルを保持し評価は高い。村田と戦ったエンダムを完璧に支配。1回に強烈な左フックのカウンター、2回に左フックで追加のダウンを奪い、3回ショートの右を炸裂させ終わらせている。

 もちろん、今後はゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との第3戦目も交渉テーブルに乗るにせよ、ライトヘビー級で強烈なインパクトを残した今、ゴロフキンとの再戦の必要性は感じないが、購読者数を確保したいDAZNの意向を含め、北米ではゴロフキン再戦の実現を臨む声は多い。スーパーミドル級に移し再戦が検討される可能性は十分ある。

カネロはPFP1位にランクアップする可能性も

 あと、気になるのがWBC・IBF世界ライトヘビー級統一王者アルツール・ベテルビエフ(ロシア)/15戦全勝全KOとの3団体統一戦にカジを切るかどうかだ。


 ただ、既に下り坂のコバレフとは異なり危険度は段違いになる。「我々は最高の戦いを提供する。サウルのキャリアを成長させる最高の相手を探す」カネロと強い信頼関係を結ぶレイノソ、トレーナーは試合前、175ポンドに留まるプランも示唆している。

 ただ、ベテルビエフは直近、WBC王者グウォジクとの統一戦に勝ちIBF・WBCの2団体を統一、米リング誌では1位の評価を得ている。これまで強いフィジカルと豪腕が目立ったが、グウォジク戦後はスキル面でも評価を上げている。ベテルビエフ戦は商業的な面を含めてもリスキーで、カネロ陣営が踏み切るとは考えにくいが・・・・。


 何れにせよ今回の勝利でカネロは、パウンド・フォー・パウンド(PFP)首位のWBA・WBC・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を下げさせ首位に躍り出る可能性は極めて高い。暫くはカネロの動向でミドル〜ライトヘビー級はかき回されそうだ。

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