“My Career is over”試合後の記者会見でそう語った、フロイド・メイウェザーJr.は、正式に現役引退を表明。試合終了のゴングと同時にリングにひざまづいたメイウェザーJr.の姿は、一時代の終わりを告げるかの光景に見えた。「これが俺のラスト・ファイトになる。いつかは引退しなければならない。今その時が来たんだ。調子は、良いしまだできるけど、現役を引退するよ」とメイウェザーJrは正式に引退を表明した。

メイウェザーJrは、49戦目、アンドレ・ベルトに3-0の大差の判定で勝利。49戦全勝したフロイド・メイウェザーJrは、ヘビー級ロッキー・マルシアーの49戦全勝の記録並ぶ偉業を成し遂げた。

ベルト戦はリスク回避なのか?!

フロイド・メイウェザーJ.は、ラスト・ファイトもいつもどおりクルーズ・コントロール。自身のボクシングを終始展開。作戦があると話していたアンドレ・ベルトは、序盤かメイウェザーJr.のスピードに圧倒され、攻勢に転じるも戦術面に乏しく攻撃は単調。なす術が無かったと言え力量差は明らかだった。ベルトの他にも候補がいる中、ラストファイトの相手としては力不足であったことは事実だろう。”High Stakes”とキャッチ・フレーズがついたこの試合がラストファイトであればキャッチフレーズとはウラハラにリスク回避の動きが見え隠れする。

アンドレ・ベルトは、メイウェザー2世とも呼ばれた時期があったが、キャリア中盤で、ビクター・オルティス、ロバート・ゲレロ、ヘスス・ソト・カラスに敗戦。手術から回復し復帰戦に勝ちホセシト・ロペスに勝利しWBA暫定ウェルター級王者となっているが、ウェルター級のトップ戦線からは外れていた。ベルトの他にも、IBF王者ケル・ブルック、アミール・カーン、キース・サーマン、ダニー・ガルシアとの試合も可能だったはずだ。アンドレ・ベルトとの試合は、50戦目に向けての”調整試合”と思っていたが、試合後の記者会見を見る限り引退は本当かもしれない。

米・メディアの報道にもあるように、パッキャオとの世紀の一戦を終え、ボクシングへのパッション(情熱)、モチベーションは薄れていたという。パッキャオ戦終え、何も証明する必要がなくなったメイウェザー、ラスト・ファイトの対戦相手の拘りは無かったように思える。

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ボクシングの本質

フロイド・メイウェザーJr.は、キャリアを通じて慎重に対戦相手を選択してきたと言われ、一部ではリスク回避した相手もいると言われるが、カスティーリョ、コラレス、ジュダー、デ・ラ・ホーヤ、カネロ、マイダナと強豪と対戦し勝利。ウェルター級戦以降は、フィジカル的には厳しい中、自身のキャリアを通じて得たスキルを統合し、今のスタイルを築き上げたと言って良いだろう。しかし、ベルト戦を経て引退を表明したメイウェザーに対し、SNSでは批判が多く集まる。

批判の焦点は、メイウェザーのスタイルが1つにある。多種多様な価値観がある中、ボクシングに”何を求めるのか?”によって見解は別れるだろう。倒す余力を保持しながらリスクを冒さず勝つことに徹底している点が挙げられる。フロイド・メイウェザーJr.は、現代ボクシングの象徴でもあり、”倒す”ことがボクシングの本質として考えられてきたが、ディフェンス重視、的確にポイント・アウトする。より、競技性の強いものに考え方を変化させたのは間違いないだろう。

筆者は、どちらだと言えば”倒す”ことがボクシングの本質だと考えている。元ヘビー級統一王者のマイク・タイソンのトレーナーであるカス・ダマト氏の「ボクシングはエンターテイメントだ。エキサイティングでなければならない」この考え方に賛同する。ただ、メイウェザーJr.のスタイルも否定はしない。メイウェザーのスタイルが増えるという懸念もあるが、彼が築き上げたスタイルは、誰にでも真似できるものでは無い。

もう1つ、フロイド・メイウェザーJr.が歴代の王者、モハメド・アリ、シュガー・レイ・ロビンソン、に並ぶ「偉大なのか」という問いがあるが、何を基準に偉大なのかを決めるかによって変わってくる。歴代の王者との比較も時代が違うの比較することは難しい。

しかし、マイク・タイソン、オスカー・デ・ラ・ホーヤの時代が終わり、メイウェザーはパッキャオを共にボクシング界を牽引したことは事実。PPV、観客動員数の数値から見れば、タイソン、デ・ラ・ホーヤ氏の記録より遥かに高い数値を記録している。この結果から見れば、人気・実力ともにあったことは確かであり、世界最高峰のボクサーの1人だと考えている。ただ、様々な意見があるのは当然。見解は、歴史家に委ねるとしよう。

メイウェザーが引退したことにより、「ボクシングとは何なのか?」シンプルな疑問だが、深く考えさせられた。ただ、ボクシング・ファン含め、記録だとか功績だとかではなく「心に刺さる試合」が観たいことは共通認識ではないだろうか。そして、毎年5月、9月を楽しみにさせてくれ、同じ時代を共有できたメイウェザーJr.に感謝したい。

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