米ESPNは、パウンド・フォー・パウンド(PFP)のランキングを更新した。上位は変わらず1位WBA・WBO世界ライト級統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、WBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)は2位を維持した。

Sponsor Link

ESPN 20194月 PFPランキング

1位 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
2位 テレンス・クロフォード(米)
3位 サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)
4位 エロール・スペンスJr.(米)
5位 オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)
6位 ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)
7位 井上尚弥
8位 マイキー・ガルシア(米)
9位 シーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)
10位 アンソニー・ジョシュア(英)

 PFPランキングと聞くと老舗の米リング誌が思い浮かぶが、ESPNも独自にPFPランキングを選定している。パネラーには、シニア・ライターのダン・レイフィール記者、元WBO世界ウェルター級王者ティモシー・ブラッドリー、ESPNアナリストのテディ・アトラス氏、ベテラン記者ナイジェル・コリンズ氏、スティーブ・キム氏などが評価している。

クロフォード、カーンに圧勝

photo by:boxingscene

 まさか、こんなエンディングになるとは思わなかった。6回、偶然のローブローを受けたカーンはコーナーに戻り暫く休息。戻ってくると思ったが、カーンのトレーナー、バージル・ハンターが棄権を決めた。あのまま、続けていたとしても結果は見えていた。

 クロフォード対カーン戦は、米ニューヨークの”メッカ”、マディソン・スクウェア・ガーデンで行われ14,091人の観客を動員。クロフォード勝ちのアナウンスがあると場内は唖然、大ブーイング、後味の悪い試合となった。

 「ローブローを受けた。戦い続けることは難しかった。僕は戦士だしいつもなら最後まで諦めずに戦うけど、とても戦い続けられる状態ではなかったんだ」

photo by:boxingscene

 確かにローブローだった。ダメージは本人にしかわからない。「彼を圧倒した。これは時間の問題だったはずだ。コーナーが棄権の決断を下したことは残念だけど、バージルは素晴らしいトレーナーだ。彼が続行させるべきでないと決断したことは間違ってなかったと思う」

 クロフォードが試合後にこう語っているとおり、クロフォードが有利に戦いを進め、スピード・スター、カーンを序盤から圧倒した。カーンの棄権という思いもよらぬ結果となったが、クロフォードがカーンより優れた能力を持っていたことは疑いようのない事実だった。

 マルコス・マイダナ(アルゼンチン)に勝ち、スーパーライト級時代ダニー・ガルシア(米)と統一戦を争ったカーンは、ビッグネームの一人だった。しかし、クロフォード戦でquitter(諦めたり、与えられた責務を果たさずに放棄したりする人)のレッテルを貼られたカーンの商品価値は暴落。トレーナーのバージル・ハンター氏は、カーンに引退勧告ともとれるコメントを残している。

 ハンド・スピード、といった観点で言えばカーンはウェルター級のなかで最も速いスピードを持つと言っても過言ではない。一方、クロフォードはライト〜Sライト級を制圧。左右のスイッチが特徴的だが、高い適応能力を持っている。

 1回、クロフォードはオーソドックス。カーンのダブル・ジャブ、ハンド・スピードも色あせない。しかし、クロフォードの右クロスがカーンの顎を捉え 、バランスを崩したところを追撃の左フックでダウンを奪い、はやくもクロフォードがペースを掴んだ。

 クロフォードは、匠にスイッチを使いこなし、顔面、ボディとパワー・ショットを上下に打ち分けカーンの体力を着実に削った。序盤こそカーンは、手数が多かったものダウンを奪われクロフォードがスイッチを使いだしてからは手数が減り、持ち味のスピードを生かせない厳しい状態が続いた。

 Compuboxのパンチ・スタッツによると、クロフォードはトーナル211発中、88発がヒット(42%)、ジャブは95発中、30発がヒット(32%)、パワー・ショットは116発中、58発がヒット(50%)、カーンはトータル182発中、44発がヒット(24%)、ジャブは59発中、13発がヒット(22%)、パワーショットは123発中、31発(25%)となっている。

ロマチェンコはPFP首位の実力を改めて証明

 総合力で見れば、PFP首位はクロフォードかもしれない。ただ、米リング誌PFP首位に君臨するのはロマチェンコだ。ライト級にあげ階級の壁を感じさせたもの、アンソニー・クローラ(英)戦でそういった印象を全て払拭。改めてPFP最強であることを証明してみせた。

 ロマチェンコは、ホセ・ペドラサ戦で思わぬ苦戦を強いられた。依然として高い機動力を活かしたスタイルと、高等スキルは健在だが、被弾も多くパワーが通用しなくなった面も見られ、Sフェザー級で対戦相手をことごとく戦意喪失に追い込んだ超人的な強さは感じられなかった。

 ペドラサ戦の不調理由を肩の怪我だと明かしていたが、階級の壁にぶつかった感は否めなかった。ペドラサ戦は、2018年5月ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)との対戦で負傷した肩の関節鏡視下手術明けの試合だった。

 元WBA王者クローラ戦は、良い意味で期待を裏切った試合だった。ライト級でリナレスから王座を奪取、オリンピアンでWBO王者ペドラサを撃破。クローラは実力者とはいえ役不足感は否めなかった。

 クローラが粘り強さをみせるといった見方もあったが、現代最高傑作と称されるロマチェンコは、元WBA王者クローラを全く寄せ付けなかった。

 ゴングが鳴り対峙すると、やはりナチュラルなライト級クローラは一回り大きい。ロマチェンコはヘッドムーブ、頭の位置を変え照準を外し、前後、左右とビジーに動き相手を翻弄。上下の打ち分け、アッパーで起こしフック、クローラの固いブロックを無効にした。
 
 3回以降、ロマチェンコはギアを上げ、クローラは後退を強いられ防戦一方。ロープ際の猛攻でクローラは、スタンディング・ダウンをとられた。4回、ロマチェンコはロープに追い込み右フックでクローラを沈めた。

ロマチェンコ、クロフォード次戦以降の対戦者は

 PFPランキングは、ロマチェンコ、クロフォードと米トップランク社(ボクシング・プロモーター)のツー・トップが先行するもの、今後とりわけ懸念されるのが対戦者選びだ。

 PFP首位を走るロマチェンコは、マイキー・ガルシア(米)とのビッグファイトを切望するもTV局の障害があり実現性は限りなく低い。トップランクはESPN(米スポーツ専門チャンネル)と提携、マイキーはライバル局のFOX、Showtimeと契約するアル・ヘイモン氏が契約している関係で対立構図が生まれるからだ。

 そして、マイキーはライト級でロマチェンコ戦に関心を示していたもの、Sライト、ウェルター級でのビッグ・ファイトに方針を固め保持するWBC世界ライト級王座は返上する見通し。以前、トップランク社と契約問題で揉め法廷闘争に発展、長期ブランクを強いられた過去もあり面倒な交渉は避けたい。やはり、ウェルター級王座獲得、5階級制覇が最優先事項だろう。

 現時点で、ロマチェンコは英国でWBCライト級1位ルーク・キャンベル(英)とのビッグ・ファイトに関心を示しているが、締結するかは不透明だ。

 キャンベルをプロモートするエディ・ハーン氏は、マイキーがWBC世界ライト級王座を明け渡せば、空位のWBC王座決定戦をルーク・キャンベルと、新たにマッチルーム・ボクシングUSAと契約を結んだライト級プロスペクト、デビン・ヘイニー(米)/21戦全勝13KO戦を目論んでいる。

 一方、クロフォードは同級IBF王者エロール・スペンスJr.(米)戦が待望されるが、スペンスのオプションは多い。スペンスは、時間がかかるクロフォード戦にカジを切る必要はなく、ビッグ・ファイトが可能だ。

 すでに、スペンスは同級WBC世界ウェルター級王者ショーン・ポーター(米)との統一戦の交渉が進み近いうちに合意する見通し。はやければ年内か来年にはウェルター級3団体王座統一戦がスペンスと契約するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)内で現実味を帯びてくる。

 ポーター戦をクリアすれば、スペンスは7月合意に向け交渉が進められている同じくアル・ヘイモン傘下のWBA世界ウェルター級スーパー王者キース・サーマン(米)対マニー・パッキャオ戦の勝者とWBA・WBC・IBF3団体統一戦が実現する可能性は極めて高い。

 ライト級、Sライト級とリネラル王者となり文句なしの実績を残し、米ニューヨークMSGに14000人近くを動員するまでに成長を遂げたクロフォード。しかし、トップランクはウェルター級選手の駒は少なく、今後の対戦者探しは容易ではない。トップランク率いるボブ・アラム氏は、今後、どうやってクロフォードの価値を引き上げてゆくのか手腕の見せ所だ。

(Via:ESPN)

Sponsor Link

関連記事はこちら

スペンスESPNのPFPランキングが4位に上昇!

スパーリングでメイウェザーを圧倒、ブローナーをダウンさせた。そんな、都市伝説が独り歩きしたこともあった。当時、実力者と戦ってないことから過大評価だと指摘する声もすくなくなかった、しかし今では正真正銘の”The Truth”(本物)になった男、それがエロール・スペンスJr.(米)だ。 …

スペンスが米リング誌のPFPランクを5位にあげた

米国で最も権威あるリング誌は、PFP(パウンド・フォー・パウンド)のランキングを2019年3月更新。マイキー・ガルシア(米)に勝ったIBF世界ウェルター級王者エロール・スペンスJr.(米)を5位にランク・アップした。 Sponsor Link米リング誌のPFPランキングは以下のとおり。  1位ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)  2位テレンス・クロフォード(米) …

Sponsor Link