DAZN(ダ・ゾーン)に方針を決めたのはオファー金額だったのだろうか。米プレミアム・ケーブルTV局HBOがボクシング中継から撤退。フリー・エージェントとなっていたWBA世界ライトヘビー級王者ディミトリー・ビボル(ロシア)がマッチルーム・ボクシングと提携することが分かった。


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 これまで、ビボルはHBOのサポートもあり米本土でようやく露出が増えたもの、親会社タイム・ワーナーの業績不振を受けHBOは大きな打撃を受けた。予算は大幅に減少、低予算興行を強いられ、それまで強い関係性を築いていたトップランク社がHBOを離脱。ESPNと大型契約を結んだ。

 トップランク傘下のロマチェンコ、クロフォードといった人気選手を手放したHBOは、低予算で済む軽量級にシフト。Superflyを開幕し新たな市場を開拓。メキシカン・アイドル、カネロ、ゲンナディ・ゴロフキン、ウォード、コバレフといった選手をメーンにイベントを開催してきた。

 しかし、AT&T傘下となり、AT&Tの意向からHBOはボクシング中継から撤退を表明。フリー・エージェントとなったライトヘビー級戦線の要の1人ビボルが、今後どのホスト局とパートーナー契約するか注目が集まっていた。

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ビボル次戦はジョー・スミスと防衛戦

 「ディミトリー、ジョー、双方に大きなパワーがある。2人の戦いは避けられなかった戦いだと思う。エディ・ハーン、DAZNと関係強化することを楽しみにしている」

 ビボルの新規契約先はESPN(米スポーツ専門チャネル)、DAZNとビボルのマネージャーを務めるワディム・コルニロフ氏が交渉に従事していた。今後は、ビボルをプロモートするワールド・オブ・ボクシングはマッチルームを率いるエディ・ハーン氏と提携。主戦場はDAZNとなる。

 中継パートーナーとあわせ2019年3月米国でジョー・スミスJr.(米)/26戦24勝(20KO)2敗(1KO)と防衛戦を行うことも合わせて発表された。

 もともと、ビボルは2018年11月にジョー・スミスとの防衛戦の交渉が進んでいたが直前で破断。これは、直前でスミス陣営がDAZNと契約していたIBF世界ライトヘビー級王者アルツール・ベテルビエフ(ロシア)から好条件のオファーを受けたのが理由。一旦は、2018年12月開催で基本合意したが、ベテルビエフ陣営が準備期間が短いことを理由に延期を求めていた。

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ビボルはSミドル級も視野に

 
 「ビボルは168ポンド(Sミドル級)のタイトル、175ポンド(ライトヘビー級)の他団体王者との統一戦に関心を示していている」

 ビボルのマネージャーはこう語っているもの実際は、ビボルがDAZNと契約したことでライトヘビー級で他団体王者との統一戦は不透明感が増した。現在ライトヘビー級の中心選手、WBO王者エレイディル・アルバレス(コロンビア)、セルゲイ・コバレフ、IBF王者ベテルビエフ(ロシア)らはESPN傘下だ。統一戦であればESPNと契約したほうが合理的。オファー金額が良かったのだろうか。

 ビボルのオプションは多く契約先によっては好カードが期待できた。ただ、近年にないほど大金が動ているもの、実はビッグマッチは実現し難くなっている。ライトヘビー級はビボルを含めハイ・クォリティなカードが期待できるクラスだ。

米国では4局体制となり好カード激減が懸念される

 HBOがボクシング中継から撤退を表明。米本土でボクシングを中継する局は4局体制となりとりわけ懸念されるのが好カード激減、マッチメーク水準の低下だ。

 現在、米ボクシング界のホスト局はESPN、DAZN、Showtime、FOX。各局がマッチルーム・ボクシングやトップランク、GBP(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)、プロモーターと契約を交わしている。つまり、プロモーターが違えば基本的にどちらが歩み寄らない限り交渉難航は必至だ。現在のライトヘビー級選手の動向を見てみよう。

 PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)の仕掛け人アル・ヘイモン氏は、米地上波FOXと新たな契約を締結。FOXの年間予算は5000万ドル、これまで、FOXとの契約はヘイモン氏がFOXの中継枠を買い取る形だったが、FOXがPBCに放映権を支払う形で契約を結ぶことに成功。FOXも本格的にボクシングに力を入れ始めている。

 FOXはこれまで、PBCのプロモーションに力を入れてこなかったが2018年12月15日、”INSIDE PBC BOXING”を発表。PBCの著名なタレントであるWBC世界ウェルター級王者ショーン・ポーター(米)やアブネル・マレス(メキシコ)をアナリストに迎え、PBCファイターのプロファイルや、情報番組の提供を開始した。

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ヘイモンが陣頭指揮をとるPBC

 ヘイモン氏と協調関係にあるイボン・ミシェル氏が抱えカナダに本拠地を置くアドニス・スティーブンソンがリネラル王者として君臨、Showtimeのヘッドラインを飾っていたが暫定王者アレクサンデル・ゴズディク(ウクライナ)との統一戦に敗れ現状PBC傘下に王者はいない。

 PBC傘下にチャンピオンは不在だが、近くWBA暫定王者が誕生する見通し。いまさら、言及するまでもないがWBAの王者乱立は留まることはない。正規王者ディミトリー・ビボル(ロシア)は2018年11月にパスカルと防衛戦をこなしたばかり。暫定王者を設置する理由は見当たらない。

  2019年1月19日米ラスベガスで行われるパッキャオ対ブローナーのアンダーカードで、メイウェザー・プロモーションズと契約を結んでいる元WBA世界ライトヘビー級王者バドゥ・ジャック(スウェーデン)が、同級2位マーカス・ブラウン(米)とWBA暫定ライトヘビー級王座決定戦を行うことが決まっている。

 勝者は本来であれば、バドゥ・ジャック、マーカス・ブラウンの勝者と王座統一戦が義務付けられることになる。プライム・タイムのジャックやブラウンと、ビボル戦がまとまれば好カードだが、ビボルがDAZNと契約した以上実現は望めそうもない。

 ビボルのマネージャーは、詳細は明かしてないがPBCは契約の選択肢から外れることを示唆していた。米メディアによれば、PBCはブラウン、ジャックの他、近いうちにSミドル級からライトヘビー級へ階級を上げる選手が数名いるという。

トップランク、ESPN連合

 トップランクと契約したESPNは、契約期間を7年延長、以前より勢力を拡大している。提携関係にある帝拳プロモーションズに加え、英国の老舗プロモーター、クイーンズ・ベリー・プロモーションズとも提携。年間18興行をメーンのESPNで中継。アメリカ国内の12興行、国外の24興行をESPN+でストリーム配信することを発表した。

 ESPNがトップランクと提携し大量に資金を投入するのは、コンテンツ確保のためである。実はボクシングの中心地である米国では、衰退されたと言われているもの、未だ人気は根強くスポーツの中では高視聴件数を誇るコンテンツであることは間違いない。

 米4大リーグ、NBA、NFLなどと比較するとボクシングの放映権は安値。その上、米地上波で人気選手の試合となれば300万件は優に超えるコンテンツ力を持っている。

 実際、ESPNでのボクシング中継の平均視聴件数は、60万件〜80万件、2018年5月ESPNで中継されたロマチェンコ対リナレス戦は200万世帯を突破。この件数は、ESPNが中継するNBAのレギュラー・シーズンの視聴件数に相当。スポーツの放映権が高騰、放映権の覇権争いが始まっているが、ボクシングは眠れるコンテンツなのである。

 インターネットが急速に発展、人々のライフ・スタイルが変化したこともあり、これまでの常識が通用しなくなり、米本土におけるTV事情を取り巻く環境は劇的に変化し、ESPNやケーブルTV事業者も苦戦を強いられている。

 Amazonや、ネットフリックスが勢力圏を拡大。Facebookもスポーツの放映権を獲得、ストリーミング配信に力を入れ始め存在感を示している。これまで、米国ではケーブル事業者が力を握っていたが、ケーブルTVを解約しネットフリックスやAmazonに乗り換えるコード・カッターが急増。ESPNは、2011年に契約者は1億人を超えていたが、2017年には8722万人と13%減少。ケーブルTV局事業者を揺るがす存在となっている。

 2017年、ネットフリックスのコンテンツ投資額は63億ドルで、米地上波CBSを抜き去りESPNに迫る勢いだった。そして、2019年ついにESPNの親会社であるウォルト・ディズニーの予算を上回る100億円を超える見通しとなっている。

 ESPNがトップランクと再びタッグを組み、2018年ストリーム配信サービスESPN+をローンチしたのは、ネット配信事業者ネットフリックスやAmazonの対抗措置。中でも老舗トップランク社と契約したことは合理的だったと言える。もちろん、トップランクーESPNの最終目標は北米のボクシング市場独占であることに議論の余地はない。

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ESPNはライトヘビー級選手を多く抱える

WBO王者エレディル・アルバレス

 現状、ライトヘビー級トップ選手を抱えるのがESPN、トップランク連合だ。傘下に収めるのは、WBO世界ライトヘビー級王者エレイディル・アルバレス(コロンビア)。アルバレスは、セルゲイ・コバレフ(ロシア)を下しビッグアップセットを起こし悲願のWBO世界ライトヘビー級王座を獲得。その後トップランク社と複数戦契約を締結した。

 そのアルバレスに痛恨のKO負けを喫したコバレフは、再戦条項を行使することを決め、2019年2月米テキサス州でアルバレスと再戦することが決まっている。コバレフは、HBOがボクシング撤退を決めフリー・エージェントだったが、トップランク社と複数戦契約を果たしている。

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WBC王者グウォジク

 WBCはウクライナのオレクサンデル・グウォジク(ウクライナ)がタイトルを抱える。グウォジクは2018年12月、リネラル王者アドニス・スティーブンソン(カナダ)を粉砕し王座を獲得。グウォジクのマネージャーは、トップランク社との関係が深く今後、防衛戦はESPN傘下に纏まる可能性が高い。

 マネージャーは、米リング誌PFP(パウンド・フォー・パウンド)首位のウクライナの傑作ワシル・ロマチェンコ、クルーザー級4団体統一を果たしたウシク、セルゲイ・コバレフ(ロシア)らを取りまとめるエグリス・クリマス氏である。

 2019年2月2日米テキサス州フリスコで、WBO世界ライトヘビー級王者エレイディル・アルバレスは、セルゲイ・コバレフと再戦。再戦の決着が付けば、勝者はIBF王者ベテルビエフとのタイトル統一戦の機運が一気に増すだろう。

 「バドゥ・ジャック対マーカス・ブラウンの勝者は、グウォジクの指名挑戦者となる」

  WBA暫定王座決定戦がジャック対ブラウンのあいだで争われるが、実はこの試合はWBC(世界ボクシング評議会)がWBC世界ライトヘビー級挑戦者決定戦として承認。勝者は、王者グウォジクへの指名挑戦者となることが決定している。

 スウェーデン出身で米ラスベガスに拠点を置くバドゥ・ジャックは強豪との連戦だ。Sミドル級でジェームス・デゲール、ライトヘビー級でアドニス・スティーブンソンと接戦を繰り広げたばかり、相手のブラウンはライトヘビー級トッププロスペクトの1人、欧州勢が勢力を強める中、アンドレ・ウォード以降アフリカ系アメリカ人として期待されている大型ホープである。

 ニューヨークを拠点とするマーカース・ブラウンは、2012年ロンドン五輪米国代表のオリンピアン、主要4団体にランクイン。まだ強豪との対戦経験はないもの、2017年2月トーマス・ウィリアムズJr.(米)と戦い圧倒的な力量差をみせテスト・マッチをクリア。スティーブンソンと接戦したジャック戦は言うまでもなくビッグ・テストだ。

 ビボルのライトヘビー級統一戦が難しくなってしまったことは残念だが、本人はSミドル級に階級を下げることは問題ないと話しているとおり、今後はSミドル級にも視野を広げることは間違いない。

 Sミドル級は英国人王者を中心に、ビボルが契約したマッチルーム傘下のWBAスーパー王者カラム・スミス(英)、クリス・ユーバンクJr.(英)、ジョージ・グローブス(英)と英国人タレントが豊富なクラスだ。

 2019年、HBO、ShowtimeがリードしていたケーブルTV局時代から大きな転換期を迎えている。ESPN、PBC(Showtime/FOX)、DAZNと4局体制。各局も中継枠確保のため優秀な人材確保のため躍起だ。これまでにないほど大金が動き、選手にとってみれば以前よりもプロモーターと契約しやすい環境に改善されている。

 ただ、実際にはプロモーターとホスト局が契約している関係上、事実上リーグ戦となり懸念されるのがビッグマッチの減少だ。

 たとえば、ファンから熱望されるIBF世界ウェルター級王者エロール・スペンスJr.(米)と、WBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)との統一戦は果たしてまとめられるだろうか。

 どちらもPBC、ESPNの看板選手。興行権を巡り交渉難航は目に見えている。4局体制となりかつてないほど札束が飛び交うもの、ファンが求めるマッチメークを実現させることができるかどうか。再びボクシング人気に火をつけることができるかどうか。2019年重い課題がのしかかる。

(Via:boxing scene)

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