WBA世界フェザー級スーパー王者レオ・サンタ・クルスとのメキシカン対決に敗れたアブネル・マレス、メキシカン・レジェンドらと肩を並べることができるだろうか。負ければ踏み台、デービスとのリスキーな一戦に挑戦する。

 2019年2月9日米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊にあるディニティ・ヘルス・スポーツ・パークで、WBA世界Sフェザー級スーパー王者ガーボンタ・デービス(米)/20戦全勝19KOが、アブネル・マレス(メキシコ)/35戦31勝(15KO)3敗(1KO)を相手に防衛戦を行うことが正式に決まった。

 ここは、スタブハブ・センターだったが、2019年スポンサーがディニティ・ヘルスとなり名称が変更となっている。

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photo by:boxingscene


 「デービスへ挑戦することを臨んでいたんだ。準備も順調だし、Showtimeのヘッドラインで2月9日5つのタイトルと4階級制覇を達成する」

 マレスは、デービスに勝てばバンタム、Sバンタム、フェザー、Sフェザー級と4階級制覇を達成。将来殿堂入りが確実視される4階級制覇を達成したファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、エリック・モラレス(メキシコ)らと肩を並べることになる。

 しかし、今回ばかりは相手が悪すぎる。決戦地はマレスの本拠地ホーム、ロサンゼルスとは言え会場は、あのジョニー・ゴンサレス(メキシコ)に痛恨のノック・ダウン負けを喫したスタブハブ・センターだ。

 マレスは興行的にはAサイドだが、今戦はアンダードッグであることは否めない。デービスは米リング誌Sフェザー級2位、サイズこそSフェザー級では小さいが躍動感あふれる攻撃力、身体能力は階級最強と言っても過言ではない。

 サイズで勝る元オリンピアンのホセ・ペドラサ(プエルトリコ)、リアム・ウォルシュ(英)に対しスピード、クイックネスを最大限に活かし、クロス・レンジで多彩なカウンターを放ちことごとく撃破。マレスは、文字通りハイリスク・ハイリターン、これがラスト・チャンスになるだろう。

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ガーボンタ・デービスの経歴

 米メリーランド州ボルチモアで生まれ育ったデービス、両親は麻薬中毒で刑務所へ収監。幼少の頃は恵まれた家庭とはほど遠い環境で育っている。デービスは親戚の家を転々とし、5歳の頃おじに連れられてボルチモアにあるアップトン・ボクシング・ジムに連れてこられたという。

 米国でもボルチモアの治安はよくない。なかでも、デービスの地元、ウェスト・ボルチモアのサンドタウン・ウィンチェスターはボルチモア市内で最も犯罪が多発する地域だ。ボクシング・ジムは言わば避難所。デービスにとってボクシングは希望だった。

 「デービスには才能があった。彼は何をすべきか理解していたし同じことを2度言う必要はなかった」こう語るのはアップトンジムのカルバン・フォード氏である。「フォード氏は素晴らしいコーチであり、理想の父親の姿だと思う」デービスは、カルバン・フォード氏と共にトレーニングに励み強い絆を築いていった。

 荒れた幼少期を過ごしたデービス、ボクシングと出会い徐々に変化してゆく。「彼は生意気だったし、対戦相手を馬鹿にしていた。彼にはたくさんの怒りが溜まっていたようだった。でも、今彼は対戦相手のリスペクトを忘れないし、ファンとも対話をするようになった」デービスの友人だったカーターは、幼少の頃のデービスをこう振り返った。

 デービスは、ジュニア時代に数々のトーナメントを制覇。将来は言うまでもなく有望だった。ジュニア・オリンピックで2度優勝、2006年〜2008年、3年連続ナショナル・シルバー・グローブで優勝をはたしている。

 アマチュアで輝かしい戦績を残したデービスは、2012年ロンドン五輪を目指すが17歳の年齢制限に阻まれ断念。2016年リオ五輪まであと4年、キャリアを停滞させたくないデービスは、2013年プロ転向を決意する。

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メイウェザーの秘蔵っ子のデービス

image source to:The Ring

 アマチュアで好成績を残したデービス、周りからの噂もあったのだろう。プロ・デビュー後2年が経過、米本土で影響力のあるアル・ヘイモン氏と契約。フロイド・メイウェザーが設立したメイウェザー・プロモーションズと契約を結んだ。

 スターになるには実力はもちろん、有力プロモーターと手を組むことも重要。ヘイモン氏と契約したことの意味は大きい。ヘイモン氏は、PBC(プレミアム・ボクシング・チャンピオンズ)を主催する事実上のプロモーター、マッチメークの大きな権限を握っている。

 もともと、デービスはメイウェザー・プロモーションズが主催するイベントでメイウェザーと親交があったが、メイウェザーとはじめてあったのは、メイウェザーが運営する米ネバダ州ラスベガスにあるメイウェザー・ボクシング・クラブだった。

 それまで、デービスの奇才を聞いていたメイウェザーは、デービスの実力がどれほどのものか自分の目で確かめたかった。メイウェザーはデービスのスパーリングの相手に、アテネ五輪金メダリストのレジュメをもつユリオルキス・ガンボア(キューバ)を用意。「フロイドに、自分の実力を証明することができたと思う」。デービスはガンボアとのスパーリング直後、自信げにこう語っていた。

デービス、迎えた世界初タイトル

 プロ通算16戦全勝、22歳のデービスにタイトルチャンスがやってきた。デービスは同じメイウェザー・プロモーションズ傘下のバドゥ・ジャック(スウェーデン)がメインを務めるアンダーカードで、元オリンピアンのIBF世界Sフェザー級王者ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)へ挑戦することが決まった。

 当初、WBA世界Sフェザー級王者ジェイソン・ソーサ(米)との対戦が具体化し交渉が進められていたもの決裂。デービスと同じヘイモン傘下のIBF王者ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)戦が急遽まとまった。

 合意に向けペドラサの指名戦の問題があったが、IBF(国際ボクシング連盟)に指名戦回避の特例を認めてもらい合意。ペドラサは、IBFから当時IBF同級1位リアム・ウォルシュ(英)との指名戦が義務付けられていた。

 「デービスは、126ポンドの中でも本当にエキサイティングなファイターだ。彼が集中すれば、明るい未来が待っている。私は、彼が世界チャンピオンになると確信している」

 ペドラサは、デービスにとってそこまでリスキーな相手ではなかった。ペドラサは元オリンピアンで、アマチュア、プロでも実績を上回るが、デービスを脅かすほどの戦力はもちあわせてなかった。実際、デービスはペドラサよりキャリアは薄い。ただ、類まれな身体能力、パワーは決してタフでないペドラサを墜落させるには十分な破壊力を持っていた。

 ペドラサは南米プエルトリコ出身。2008年北京五輪の代表権を得てライト級に出場するが2回戦で敗退。2009年世界選手権で銀メダルを獲得している。当時、プロ戦績は22戦全勝(12KO)、エドナー・チェリー(米)、ステファン・スミス(英)に判定勝ち、デービスよりプロ・キャリアは厚い。

 ペドラサは、基本はオーソドックスだがサウスポーにもスイッチする器用さをもつテクニシャン。スピード、パワー、攻撃能力はそこまで高いものを持ち合わせてないが、コンパクトにパンチをまとめ主導権支配に長ける選手である。

 初タイトルチャンスを迎えたデービス、身体能力を活かし鋭い踏み込みからジャブ、コンビネーションも多彩。中間距離でもペドラサを凌駕した。スピードで劣るペドラサは、デービスを迎撃できるほど余裕もなく接近戦に変更し無謀にも打ち合った。一時はデービスをロープに追い詰め効果的なパンチを浴びせるも、デービスの猛攻にキャンパスに沈んだ。

デービスは次世代のスター候補として名乗りを上げることができるか

 「2019年、リングの中だけでなくボクシング界において次世代のスターであることを示したい。全てが順調にいけば、2020年にはペイ・パー・ビュー(PPV)のヘッドラインを飾りたい。マレスを倒せば素晴らしいマッチアップが待っている」
 
 デービスは、WBA世界ライト級スーパー王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)戦が度々取り上げられるが、デービスはマレス戦が初のメイン・イベントだ。現状ではロマチェンコよりネーム・バリューは劣り、米本土でまだ求心力はなくPPVイベントはまだ時期相応である。ただ、米ロサンゼルスを本拠地としている人気者マレスに印象的な勝ち方ができれば、デービスの商品価値は一気に上昇、2019年好スタートを切れることは間違いない。

 一方、マレスはフェザー級でサンタ・クルスとのタフな再戦を経て、ヘスス・クエジャール(アルゼンチン)戦でWBA世界フェザー級王座を獲得。しかし、Sフェザー級の実績はゼロだ。戦力で上回る相手をどうやって抑え勝機を見出すのか。

 バンタム級あがりのマレスは身長は164cmで、体こそ大きいがフェザー級でも決して大きいほうではなく、フィジカルでデービスを抑え込むことは難しい。かといって、距離を取れば鋭い踏み込みからデービスが一気に襲いかかってくる。

 高い身体能力を誇るデービスは、接近戦でも引き出しは多く、タフが売りなマレスでも一筋縄ではないかない。マレスが接近戦に転じればクロス・レンジから巧みなカウンターが炸裂するだろう。

 マレスのコーナーにはマイキー・ガルシアの実の兄で名匠ロバート・ガルシア氏が付いている。ガルシア氏が対デービス戦でどんな戦略を描くのか興味深い一戦である。

(Via:boxingscene)

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