ミドル級要の一人カザフスタン出身のゴロフキン、一体どこのホスト局と契約を交わすのだろうか。どうやら、PBCの事実上カジをきるアル・ヘイモン氏も本腰を入れ、ゴロフキン獲得に向け動いている。36歳を迎えキャリア後期に入ったゴロフキン、最も稼げるカネロが最大のオプションだと考えられていたがそうでもないようだ。

 そして、ここにきて、エディ・ハーン氏率いるマッチルーム・ボクシングと契約するIBF世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブス(米)が米プレミアム・ケーブルTV局HBOとの契約が満了しフリー・エージェントになることが分かった。カネロを中心に動くミドル級トップ戦線は今後どのような展開を迎えるのだろうか。

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 現状、ゴロフキンはネット配信会社DAZN(ダ・ゾーン)、ESPN(米スポーツ専門チャンネル)、米プレミアム・ケーブルTV局Showtimeと各方面からオファーを受けている。ここ数日内でShowtime、FOXと契約しPBC(プレミア・ボクシング・チャピオンズ)を主宰する北米で最大級の影響力をもつアル・ヘイモン氏と契約に向け会談。米リング誌によれば、ゴロフキンの新規契約先は2018年内クリスマス近くにアナウンスされる見通しだという。

 DAZN、PBCのゴロフキンのオプション、ジェイコブス、カネロ、ミドル級トップ戦線の動向と合わせ最新情報を見てみよう。

ゴロフキンはDAZNと会談

 12月4日、ゴロフキンは居住する米ロサンゼルスでDAZNを傘下に収める英パフォーム・グループの執行役員を務めるジョン・スキッパー氏、DAZNと提携し米国でマッチルーム・ボクシングUSAを立ち上げたエディ・ハーン氏と4時間に及ぶ会談を行った。

DAZNは具体的な報酬額を掲示

 この日、東京で仕事を終えたスキッパー氏は、東京からロサンゼルスへ飛び、ハーン氏と共にゴロフキンとの会談に臨んだという。米メディアによればエディ・ハーン氏は会談の中で、ゴロフキンに対し具体的な金額を掲示し構想中の計画を話したという。各局もゴロフキン獲得に向け躍起、クリスマス近くに発表であれば、交渉は大詰めを迎えているのだろう。

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ゴロフキンはカネロとの3戦目がトップ・プライオリティではない?

 DAZNがゴロフキン獲得に成功すれば、DAZNと巨額契約を締結したWBA・WBC世界ミドル級統一王者サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)との3戦目が規定路線となることは間違いない。しかし、ゴロフキンはまだカネロに対し不信感を持ちカネロとの3戦目に固執してないという。

 米リング誌によると、ゴロフキンは第1戦の判定だけでなく、再戦の判定結果にも納得がいかない様子。米ラスベガスで行われた再戦は、カネロが2−0(115-113,115-113,114-114)の判定でゴロフキンを下した。ゴロフキンは珍しく試合後のリング・インタビューをパスし、控室に直行している。

カネロのドーピングで計画が狂ったゴロフキン

 ゴロフキンがまだカネロに不信感を持つのも無理もない。初戦は疑惑の判定でドロー、再戦が公式発表されたものカネロのドーピングにより計画を狂わせられたのである。

 もともと、再戦は2018年5月に決まっていたもの、2月にVADA(ボランティア・アンチ・ドーピング)による薬物検査で、カネロの検体から禁止薬物として指定されているクレンブテロールの陽性反応を示し、再戦は急遽中止。ゴロフキンはその後、計画を大幅に変更することを余儀なくされたのである。

 カネロとの再戦が流れ5月の防衛戦を予定どおり行いたいゴロフキン陣営は、バネス・マーティロスヤン(アルメニア)戦を強行。IBFタイトルを失うことになる。

 ゴロフキンは、WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)の3団体の王座を保持、WBA、WBCはマーティロスヤン戦に難色を示すも、これまでのゴロフキンの功績もあり認めた。

 しかし、メジャー4団体の中でも厳格なIBF(国際ボクシング連盟)は、バネス・マーティロスヤン(アルメニア)戦をタイトルマッチとして認めない姿勢を示していた。

IBFはゴロフキン対マーティロスヤン戦を条件付きで承認

 これは、マーティロスヤンがSウェルター級の選手でミドル級の実績がなく直近の試合は24ヶ月前という理由だけではない。カネロ再戦が中止になった以上、IBFはマーティロスヤンではなく当時ランキング1位指名挑戦者セルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)がゴロフキンの次点の挑戦者として認識していたのである。

 もっともIBFが指名戦を命じたのは、デレイビャンチェンコをプロモートするルー・ディベラ氏がゴロフキンに対しデレイビャンコとの指名戦をIBFへ要請したことも大きな理由としてある。

 IBFは厳格として知られているが、規定で条件付きで指名戦を回避することも可能だ。過去にも元ライトヘビー級統一王者セルゲイ・コバレフ(ロシア)が特例として条件付で指名戦を回避することを認めている。IBFはゴロフキン陣営と話合いのもと、条件付きでマーティロスヤン戦をタイトルマッチとして認めることを決定した。

 その条件は、ゴロフキンがマーティロスヤン戦後にデレイビャンチェンコと指名戦を行うことだった。ゴロフキンはこの条件にマーティロスヤン戦前までにサインする必要があったが、ゴロフキン陣営はその条件に応じることはなかった。

 サインをしなかった理由は他でもない、マーティロスヤン戦後2018年9月メキシコの独立記念日の週にカネロとの再戦を締結させたいゴロフキン陣営の思惑があったことは間違いない。事実、カネロの罰則が8月に解けることが確定。ゴロフキン陣営は、カネロの罰則が決まった後にマーティロスヤン戦を発表している。

 米ニューヨーク、ブルックリンを拠点とするデレイビャンチェンコは、ウクライナ出身300戦を超えるトップアマで、衰えが指摘されるゴロフキンとのマッチアップは好カードだが、残念ながら北米ではほとんど知られてなく報酬は期待できない。カネロとの再戦となれば最低でも20億円以上の報酬が保証される。選択の余地はなかったはずだ。

ゴロフキンのIBF王座は剥奪

 ゴロフキン陣営はIBFとの取り決めに同意することなく、マーティロスヤン戦を強行。当然、IBFは厳しい決断を下すことになる。結局、IBFはマーティロスヤン戦を承認せず、公式にWBA、WBCのタイトルマッチとして行われることになった。

 その後、ゴロフキンを抱える360プロモーションズ、トム・ローフラー氏とIBFの間で話し合いが行われたが、IBFはゴロフキンの王座を剥奪することを決定した。IBFが認めない試合を行った場合タイトル剥奪の規定があり、ゴロフキンのタイトル剥奪は免れないものだった。

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ゴロフキンはヘイモン陣営と会談

photo by:boxingscene

 ゴロフキン獲得に熱心なのは、DAZNやESPNだけでなく北米で影響力が大きいアル・ヘイモン氏も獲得に意欲を示している。現地時間12月2日、米ロサンゼルスで挙行されたワイルダー対フューリー戦の観戦に訪れたゴロフキン、目的は観戦だけでなくヘイモン陣営との会談だった。

 米リング誌によれば、ゴロフキンとヘイモンの関係者らの間で契約に向け会談が行われ、ヘイモン陣営はゴロフキンに対し米プレミアム・ケーブルTV局Showtime、FOXでのオファーをしたという。

 ヘイモンがゴロフキンと契約することに成功すれば、PBCで開催されるミドル級トップ戦線は大きな推進力を得る。チャーロの知名度不足の問題も解決に向かいそうだ。PBCについては、別途特集予定だが簡単に触れ、ゴロフキンが契約した場合どうなるか占ってみたい。

ヘイモンは2015年PBCを開幕

 ヘイモンは中量級特にウェルター級の有力選手を多く傘下に収めるが、ミドル級ではWBC暫定王者ミドル級王者ジャーモール・チャーロ(米)の存在感こそ強いがまだ知名度は低く、売りだすにもPBCはトップクラスのミドル級選手の獲得が大きな課題だった。

 謎が多いヘイモン、2015年までは表舞台に現れなかったが、GBP(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)傘下でマネージメントしていた選手を一気にGBPから離脱させ、同年、3月PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)を開幕させ北米での影響力を強めている。

 PBC開幕にあたりABC、NBC、CBS、FOX、米地上波4大ネットワークと次々と契約し勢力圏を拡大。数十年ぶりに米国の地上波にボクシング中継が復活することで、米国で減退するボクシング市場の起爆剤となると言われていた。

 PBCは有力選手を多く抱えファンは次々とビッグ・ファイトが実現すると大きな期待を抱いたはずである。しかし、初回こそ312万人と高視聴件数を記録したもの、何時になっても強豪同士のカードは発表されず、顔見世的なマッチメークが続き、低水準なマッチメークは到底評価できるものではなかった。

 一時は、市場を独占しトップランク(米大手ボクシングプロモーター)、GBPの脅威になると言われていたが、商品価値の高いキース・サーマン(米)、ショーン・ポーター(米)、ダニー・ガルシア(米)、エイドリアン・ブローナー(米)らの潰し合いはせず温存、方向性も見え難く投資した資金を回収できるか不透明な面も多かった。
 
 その後、視聴件数は伸び悩み至るところで、コスト・カットの影響が見え始めた。それまで、PBCはリング設営などド派手な演出をしていたが、派手な設営は撤去された。開幕当初、シュガー・レイ・レナード(米)などを解説に起用していたが、いつしかレナードの姿を見ることはなくなった。

 米スポーツ専門チャンネルESPN、NBCは、PBCの中継をしてきたが撤退することを決定。米地上波と契約したPBCだが、実はバックに有力ファンドを持つヘイモンは、ファンドから資金調達し米地上波の中継枠を買い取っていたのが実態だった。

 本来であれば、カードを提供しTV局から放映権を得て資金を捻出するのが一般的な形。ただ、TV局側はスポンサーから資金を集める必要はなく、PBCを中継することは全くノーリスクだったのである。資金繰りが苦しくなったヘイモンは、資金がかかるカードは、放映権が支払われるShowtimeへ移行していった。
 
 2016年6月、1年越しでようやくファン待望のWBA世界ウェルター級王者キース・サーマン(米)対ショーン・ポーター(米)戦が米ニューヨークで実現。この時、PBCブランドでCBSが中継しShowtimeの番組「チャンピオンシップ・ボクシング」という複雑な形態で行われている。

2019年、PBCは地上波FOXと新たな契約を締結

 2018年9月、PBCがFOXと4年契約することを発表。ようやく、PBCが評価された形となった。公式アナウンスはないもの、米メディアによれば、年間あたりの予算は5000万ドル(約56億円)から6000万ドル(約68億円)だという。
 
 これまで、PBCはFOXの中継枠を買い取りイベントとして開催してきたが、今回の契約でFOXが放映権を支払う形で新たに契約出来た意味は大きい。PBCが開幕して3年の歳月を経てようやく認められた。

 PBCは米東海岸ニューヨークの新たな拠点なったバークレイズ・センターを運営するブレット・ヨーマーク氏と業務提携し、ビッグイベントは米ニューヨークではバークレイズ・センターで積極的に開催してきている。

ゴロフキンがヘイモンと契約した場合どうなるのか

ゴロフキンの筆頭はチャーロ

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 ゴロフキンのトレーナーのアベル・サンチェス氏によれば、ゴロフキンはあと数試合で引退することを示唆している。複数戦契約で最低報酬が決められた形がベストだろう。

 ヘイモンと契約した場合、ゴロフキンのオプションはどうなるのだろうか。まずは、ミドル級でとりわけ強い存在感を示すWBC暫定ミドル級王者ジャーモール・チャーロ(米)が第一候補となってくる。

 チャーロは、米で最も権威あるリング誌の6位につけている。メディアでもチャーロの評価は高いもの、まだ実際にはワールド・クラスと呼べる相手とは戦ってなく、ミドル級での実力がどの程度なのかはっきりしていない。実力者相手に持ち前のパワーが通用するかどうか。タフネス面でも未知数な部分が多い。

 ミドル級ではホルヘ・セバスチャン・ヘイランド(アルゼンチン)、ウーゴ・センティーノ(米)に勝っているが何れもミドル級トップではなく対戦相手の水準アップが求められていた。

 次戦は、2018年12月22日米ニューヨーク、ブルックリンで開催されるウィーリー・モンローJr.(米)戦が決まっていたが、モンローJr.がVADAの薬物検査で陽性反応を示し試合は急遽中止。対戦相手が同イベントのアンダーカードへ出場するマット・コロボフ(ロシア)へ変更されることが正式アナウンスされている。

 ロシア出身のコロボフ、一時は村田諒太(帝拳)の対戦候補として熱望されたこともあった。モンローJr.戦が中止となったことは残念だが、チャーロのミドル級での力量を測る上で、コロボフは最適。年齢こそ34歳、全盛期は過ぎているもの実績は十分、興味深い一戦になるに違いない。

 旧ソ連勢だけあり豊富なアマチュア経験がある。2005年、2007年の世界選手権ミドル級で優勝、2008年北京五輪ロシアの代表権を得ている。2003年、タイ・バンコクで開催された世界選手権でゴロフキンに敗戦を喫したもの、2005年中国で開催された世界選手権で、ダニエル・ジェイコブス(米)に勝利している。

 プロ転向後は、トップランク社(米有力ボクシング・プロモーター)と契約を交わした。2014年、米ネバダ州ラスベガスで空位のWBO世界ミドル級王座決定戦をアンディ・リー(英)と争うも6回逆転KO負けを喫し王座獲得に失敗。その後、再びタイトル挑戦を狙うも叶わずトップランクを離脱している。

ハードもゴロフキンの対戦候補になりえる

 実は、チャーロ以外にも対戦候補になりえる選手はPBC傘下には多い。WBA・IBF世界Sウェルター級統一王者ジャレット・ハード(米)もその1人だ。今記事では詳細には触れないが、直ぐには上げてこないものウェルター級で最も評価の高いIBF王者エロール・スペンスJr.も将来的にミドル級まで視野に入れてくるだろう。

 ハードはSウェルター級ながら、身長185cm、リーチ194cmと大柄の部類に入り、試合当日、Sウェルター級どころか、2階級上のSミドル級くらいの選手に見えるほど膨れ上がる。2019年以降、同級WBC王者ジャーメル・チャーロ(米)との統一戦の機運も高まっているが、ゴロフキンがヘイモンと契約した場合、対戦の有力候補としてあがることは間違いない。

 メリーランド州アコキークで生まれのハード。米国の選手はアマチュア、キャリアが豊富な選手が多いが、戦績は40戦38勝2敗とキャリアは厚くない。ワシントンD.Cゴールデン・グローブで3度優勝、2008年ナショナル・ゴールデン・グローブにミドル級で出場し2回戦で敗退している。

 2012年プロ・デビュー、アル・ヘイモン氏と契約。チャーロは当初、WBC世界Sウェルター級王者ジャーメル・チャーロ(米)に照準を定めていたが、チャーロの兄がミドル級へ階級をあげ王座を返上。空位の王座決定戦をトニー・ハリソン(米)と争い王座獲得に成功した。

 初防衛戦では、オースティン・トラウト(米)を下し、2度目の防衛戦でキューバの技工派エリスランディ・ララと統一戦を行い、ララのカウンターが幾度もハードを捉えたがハードは前進を止めることなく、最終ラウンドにはダウンを奪い僅差の判定で勝利。IBF(国際ボクシング連盟)のタイトルに加えWBA(世界ボクシング協会)の王座をまとめ、2018年12月時点では米リング誌Sウェルター級1位に躍り出ている。

ゴロフキンの最有力候補はどこなのか

 36歳を迎え、キャリア後期に入っているゴロフキン、契約において重要なことな何だろうか。報酬はもちろん、勝つことで名声が得られるファイトが実現するかどうかだ。DAZNが参入し人気選手獲得は資金力勝負となっているが、Showtimeも魅力的なマッチ・アップが可能だ。

 ESPNは資金力があるが、ミドル級ではWBA世界ミドル級王者ロブ・ブラント(米)と有力選手は少ない。ブラントは2019年2月に2012年ロンドン五輪ミドル級銀メダリストのエスキバ・ファルカオ(ブラジル)と初防衛戦を行うことが決まっている。

カネロ第3戦が実現するかは不透明

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 有力視されるDAZNはどうなのか。資金力があるが、カネロ戦が締結しなければゴロフキンのオプションはそう多くない。DAZNと契約した場合カネロとの3戦目がトップ・オプションとなるが、カネロの先行きは不透明で3戦目が実現する保証はどこにもない。

 2018年12月15日、ロッキー・フィールディング(英)を下しWBA世界Sミドル級王座獲得に成功。この日、米ニューヨークの殿堂MSGアリーナに初登場したカネロ、アリーナにはたくさんのヒスパニックが詰めかけ2万人以上の観客を動員、MSGアリーナは満杯となった。
 
 ロッキー・フィールディングを下し3階級制覇を成し遂げたが、WBA同級にはスーパー王者カラム・スミス(英)が君臨。厳密に言えば3階級制覇とは言えない。WBA他の承認団体をはじめ米主要メディアは、WBAセカンドタイトル・ホルダーをチャンピオンとして認めてないからである。

カネロはWBAスーパー王者カラム・スミスも候補

 ただ、Sミドル級へ参戦した本当の理由は3階級制覇だけでなくオプションを広げるといった意味合いが強い。今後、WBAスーパー王者カラム・スミス(英)が候補になることは十分考えられる。もちろん、リスキーだがそれ以上に得られるリターンは大きい。

 英国はボクシング・バブル絶頂期だ。英国ボクシングの象徴であるアンソニー・ジョシュアの試合となれば、観戦チケットはプラチナ・チケットになる。2017年4月ウェンブリー・スタジアムで開催されたウラディミール・クリチコ(ウクライナ)戦は9万人を収容できるウェンブリー・スタジアムのチケットは何と1時間で完売、後から主催者側が追加チケットを販売している。

 次戦で激突する可能性は低いとはいえ近未来に、カネロ対スミス戦が実現し、カネロが賞金獲得トーナメントWBSSで優勝したスミスに勝てば、Sミドル級の実績は揺るがないものとなる。興行的にも壮大なスケールになり成功が約束される。会場は超満員になり桁違いの報酬を生み出すことになるだろう。

 もちろん、カネロの本拠地である米ネバダ州ラスベガスに拠点を置く統合リゾーツ会社MGMからの誘致を考えれば、ゲート収益(チケット代金、グッズ等の売上)はウェンブリー・スタジアムと同等になることが予想される。ただ、それ以上に米英をまたにかけるイベントは世界中で注目されるビッグ・イベントになることは間違いない。

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 実はゴロフキンがDAZNと契約したとしても現段階では、カネロ以外は、WBO世界ミドル級王者デメトリアス・アンドレード(米)/26戦全勝、GBP傘下で一度戦っているデビッド・レミュー(カナダ)/44戦40勝(34KO)4敗(2KO)や、トリアーノ・ジョンソン/22戦20勝(14KO)2敗(2KO)とビッグ・ファイトに繋がるビッグネームは現状いない。だが、ゴロフキンがカネロ同様にSミドル級に上げれば、カラム・スミスを含めカネロとの3戦目の機運は高まってくる。

ジェイコブス、マッチルームとの契約はそのまま

 そして、ゴロフキンと同じくフリー・エージェントになったのがIBF世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブスだ。古巣のPBCのヘイモンと再び手を組むという噂もある。しかし、ジェイコブスとマッチルーム・ボクシングとの契約は継続、カネロ戦へ方針を固めDAZNへ移籍する公算は高い。

 エディ・ハーン氏は、近いうちにカネロ陣営と交渉をスタートさせる方針であることを明らかにしている。エディ・ハーン氏はDAZNと契約している関係上、ミドル級要の1人のジェイコブスをやすやすとShowtimeやESPNに簡単に移籍させるとは考えにくい。

 DAZNと提携関係にあるGBPにしてもSミドル級試運転と調整試合を終えたカネロの相手として、ミドル級ではジェイコブスが理想の対戦相手。カラム・スミスは現時点で次戦で戦うにあまりにリスキーすぎる。

 すでに、GBPはカネロの次戦2019年5月メキシコの祝日にあたるシンコ・デ・マヨに米ネバタ州ラスベガスにあるT-Mobileアリーナを仮押さえしたことを明らかにしている。この時期に仮押さえした理由は来年5月に噂されるメイウェザー対パッキャオ再戦をベガスから追い出す戦略の一環だろう。

 ジェイコブスは2017年11月にマッチルーム・ボクシングと契約し、米プレミアム・ケーブルTV局HBOと電撃契約することを発表。それまで、アル・ヘイモン氏と契約していたがライバル局のHBOに移籍することでヘイモン氏との契約は解消、ジェイコブスのマネージャーはこれまで通りキース・コノリー氏が務めている。

 ジェイコブスがHBOに移籍したのは、ミドル級でビッグ・ファイトを実現するためである。2017年3月、ゴロフキンに判定負け、ゴロフキンと再戦するにしてもHBOに移籍することがベストの選択だった。一時は、ヘイモン氏との契約は維持と伝えられていが、米メディアによれば契約は解消している。

 当時、ミドル級はゴロフキンが3団体(WBA、WBC、IBF)の王座をまとめ、カネロがミドル級転向を決めたこともあり主戦場はHBOの舞台だった。一方、ヘイモン氏はHBOとはライバル局のShowtimeと協調関係にあり、当時はミドル級のタレントが困窮していたという事情もあった。

 しかし、結局ジェイコブスのビッグ・ファイトは叶わなかった。ジェイコブスとHBOは3戦契約。おそらく、HBOは2018年5月に行われるゴロフキン対カネロ再戦の勝者と、9月メキシコの独立記念日の週末にジャイコブスをぶつけるシナリオを描いていたはずである。しかし、ゴロフキン対カネロの再戦が5月から9月にスライドしたことにより、HBOの目論見は外れてしまうことになった。

 もちろん、カネロ戦が合意できなければ、ヘイモンと再び手を結ぶ可能性はある。ただ、ジェイコブスの最優先はWBC暫定ミドル級王者ジャーモール・チャーロ(米)戦ではなく、桁違いのカネを生み出すカネロとのビッグ・ファイトであることは間違いない。

 カネロにしても、米リング誌ミドル級2位に付けるIBF世界ミドル級王者ジェイコブス戦に決め勝てば3団体統一ミドル級の実績にもなる。 ジェイコブスは現時点で、トップクラスの実力者であることに異論はない。勝てばミドル級での評価につなげることができる。

 ジェイコブスは、ゴロフキンに負けてはいるものミドル級では、同法のピーター・クイリン(米)、トップコンテンダーのマチエ・スレツキ(ポーランド)、トップアマ出身のテクニシャン、セルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)と実績ある選手に勝ち星を得ている紛れもなく強豪である。

ゴロフキンはヘイモン(PBC)が有力

 ゴロフキンがミドル級でカムバックするのであれば、やはりShowtime/FOXと契約するPBCが有力になるだろう。カネロとの3戦目に固執しないのであれば、DAZNと契約する必要はない。

 ゴロフキンはカネロ再戦でリング・インタビューをパスし、メディアはカネロとの第3戦目を煽っているが、そこまで米国内で需要があるだろうか。初戦、再戦の判定結果に納得がいかないゴロフキンがカネロとの3戦目に向かうかは雲行きが怪しい。

 はっきりいって、3戦目は新鮮味はない。実際、3戦目が行われてたとしても、再戦と同じような結果になると感じているファンも少なくない。来年(2019年)再戦が行われると仮定してゴロフキンは37歳、アスリートとしては下り坂で全盛期はとうに過ぎている。一方、28歳、成長著しい今がプライムタイムのカネロが再戦より有利な展開を作りだすだろう。

 日本のファンのあいだでは、再戦はカネロ勝利の見方も少なくないが、米主要メディアはゴロフキン勝利の論調。米リング誌の記者をはじめ、ESPN、Showtimeのアナリスト、他記者達の投票ではゴロフキン勝ちが40人、引き分けが17人、カネロ勝利が2人、HBOがツイッターで行った投票ではゴロフキン勝ちが62%、カネロ勝ちが28%、引き分けが10%という結果となっている。

 新鮮味という観点では、WBC(世界ボクシング評議会)が指令したWBC暫定ミドル級王者ジャーモール・チャーロ(米)との一戦のほうがファンの期待に応える形となるだろう。

 米ボクシング界は近年ではかつてないほど巨額のカネが動き、競争力が増しミドル級では好カード実現の期待感は高まっている。しかし、HBOがボクシング中継から撤退し、米国では実質4局体制となり、ミドル級有力選手は各局に散らばり、好カードの実現が難しくなっている。

 現状、中継局はDAZNが新規参入を果たし選手にとっては売り手市場となっている。トップランクと契約したESPNはWBA世界ミドル級王者ロブ・ブラント(米)/25戦24勝(16KO)1敗、ヘイモンはWBC暫定ミドル級王者ジャーモール・チャーロ(米)/28戦全勝(21KO)、GBPとマッチルームのDAZN連合はWBA、WBC世界ミドル級統一王者カネロ/54戦51勝(35KO)1敗2分、WBO世界ミドル級王者デメトリアス・アンドレード(米)/26戦全勝という構図だ。

 実際、WBCが指令しているチャーロ対ゴロフキンが締結しても勝者がカネロと統一戦を実現するには、TV局の壁が大きく立ちはだかる。いずれにしても、2019年4月に37歳を迎えるゴロフキン 、年内にはキャリア後期の方向性がはっきりしミドル級トップ戦線の行方はっきりするはずだ。

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