アンダードッグのロブ・ブラントが村田に牙をむいた。ベガスで行われた最終記者会見は盛況だった。それだけ注目度が高かった証なのだろう。しかし、ロブ・ブラント戦の関心よりもその先にある元統一ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)とのビッグマッチの話題でもちきり、村田が勝って当たり前の雰囲気さえ漂っていた。

 2018年10月22日米ネバダ州ラスベガスにあるパーク・シアターで、WBA世界ミドル級タイトルマッチが行われ、王者村田諒太(帝拳)はロブ・ブラント(米)に0−3(110−118、2者109−119)の大差の判定負けで2度目の防衛に失敗し王座から陥落。村田が負けたことにより、ゴロフキンとのドリーム・ファイトは霧散した。

 現地のオッズの掛け率は村田が1.8倍、ブラントが4.5倍で村田が優位とみられてた。ただ、村田優位は揺るがないもの決着は10回、11回、終盤に持ち込まれ村田の判定勝ちと長期戦になる見方も少なくなかった。

目次

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ブラントは村田を研究していた

 「彼は基本に忠実でワン・ツー・スタイルのボクサーだね。彼は真っ直ぐにでてくる。そのスタイルが彼の良いところだけど、今まで村田が戦ってきた相手は、彼にとって丁度いい相手だった。彼らは、はじめから村田を恐れていたしね。俺は、村田のスタイルが多くの問題を抱えていると思っている」

 試合前、ブラントは米リング誌のインタビューでこう語っていた。試合直前の最終記者会見でも、村田から王座を奪取することに自信をみなぎらせていた。ブラントが村田を相当熱心に研究していたことは間違いない。

 リングで対峙した2人、記録上は村田のほうがリーチがあるがブラントのほうがリーチがあるように感じた。ブラントは村田戦に向けトレーニングで課題を着実にこなし、本番でもそれをやり遂げたのだろう。徹底した村田戦の戦略は見事だった。

 ブラントの12ラウンド通して劣らなかった手数はCompuBoxによると、トータルパンチ数は1262発だという。WBSSのSミドル級トーナメントに出場しピークが過ぎたブレーマーに敗戦を喫したミネソタ州出身のブラントは、米リング誌のミドル級ではトップランキング圏外、評価は高いものではなかった。今戦でインテリジェスを発揮し、最終ラウンドまでガス欠を起こすことなく驚異的なスタミナ、スキルを誇示し村田に勝ち多くのことを証明し、ミドル級で大きな存在感を示したことは間違いない。

 序盤からブラントは自身のアドバンテージとなるスピード、回転の速さを活かし、村田が入り込めない長い距離から速いジャブを村田に浴びせ1回から攻勢をかけていった。スピーディーなジャブは幾度となく村田の顎を跳ね上げ、終始試合をコントロールした。

 一方、村田はビッグショットを狙うも、ブラントはディフェンス面でも村田を上回っていた。いつもの村田ならリングをカットしビッグ・ショットを当て込むが、この日ばかりは為す術がなく機能不全に陥った。ブラントは、打ち終わりには左サイド、右サイドへ、ビジーに動き村田のビッグショットの照準を外し、村田は打ち終わりにブラントの回転の速い連打に阻まれた。

 10回、相変わらず村田は不気味な笑みを浮かべるが顔面は腫れ上がり、時より足元もおぼつかないシーンもありダメージが蓄積し、疲労困憊だったことは明白だった。一方で、主導権を握るブラントのスタミナは落ちることはなく、ダブルのジャブ、右オーバーハンドから右サイドへポジション移動を終始ビジーに動きフットワークも終盤まで機能し続け12回、ブラントが村田を追い詰めグラつかせる場面も見せた。村田は最後まで打開策を見出すことが出来なく完敗した。

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村田はベガスでこれ以上ない舞台が用意された

 今戦は、米ネバダ州ラスベガスにあるおよそ5000人を収容できるMGMリゾーツ社が保有するパーク・シアターで開催された。ファンから、収益面から日本でやるべき試合という批判的な意見も少なくなかった。その理由のほとんどが、ミネソタ州出身のブラントが、米国人でありながら米国ではほとんど無名で求心力に乏しいというのが理由だった。
 
 確かに、アッサン・エンダムとの再戦で商品価値を跳ね上げた村田であれば、横浜アリーナでブラント戦であっても、チケット・セールスは期待できる。ただ、前回の初防衛戦でMGMがスポンサーに手を挙げたことで、今戦はMGMから誘致がありベガスでまとまった可能性は高い。後のゴロフキン戦を視野に入れれば、ベガスで試合をすることの意味は大きく、村田が印象的な勝ち方をすれば、ネームバリューは一気にあがり、ゴロフキン戦合意に向けての好材料にもなる。

 この会場は、ベガスの新たな主要会場となったT-Mobileアリーナに隣接する会場で、MGMリゾーツが運営していたモンテカルロ劇場を取り壊し新しく建設された会場である。

 ボクシングの聖地といわれるラスベガスでこの規模の会場で、日本人がメインで防衛戦を行うことは実は村田がはじめてのことである。日本のメディアで、2011年10月にベガスで行われたWBC世界Sバンタム級王者西岡利晃とラファエル・マルケス戦がMGMで行われたと報じられているが、実際はメインのアリーナではなくボールルームだった。

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村田対ゴロフキン戦は消滅

photo by:boxingscene

 「帝拳の本田会長、トップランク社ボブ・アラム氏とも良い関係にある。村田戦は起こるべきして起こる戦いだと思う。ゲンナディは世界中を渡り歩き戦ったジャーニーマンだしね。村田は日本でモンスター級の視聴率を叩き上げアリーナを完売させる集客力もある」。

 ゴロフキンをプロモートするローフラー氏は、試合前に村田をゴロフキンの復帰戦の候補に挙げていた。現地視察に訪れたローフラー氏もショックだったに違いない。村田がブラントに破れたことで、ゴロフキン戦は全て白紙となった。

 村田がブラントに勝ち、両陣営が前向きであれば交渉締結は容易だったはずである。トム・ローフラー氏は、村田をプロモートする帝拳プロモーションズ本田会長と米国で共同でイベントを開催し、友好なビジネス関係にある。交渉が具体化したというソースはなかったが、ゴロフキン陣営にとって極東にあるビッグ・マーケット、村田諒太戦は最大のオプションだったことは間違いない。

 ゴロフキンはカネロとの因縁の再戦に破れはしたもの、商品価値は落ちることはなかった。カネロとのトリロジー・マッチを目指す方針のゴロフキンの復帰戦の相手としても村田は最適な相手で、ビッグ・マネーが入るこれ以上ない相手だった。

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村田の今後は

 「はい、次にという気持ちにはなれない」
 村田が言う通り、最高の舞台が用意されただけに進退についての結論をそう簡単にだすことはできないだろう。WBAのセカンド・タイトルは実際には、米メディアをはじめタイトルとして認められてないが、タイトルを失ったことにより村田は実質、トップ戦線から外れることになり失ったものは大きい。完敗だっただけに、再起をするにしても混戦が続くミドル級で再びタイトル挑戦できるか懸念が残る。

 おそらく、今後ミドル級の主要な選手はDAZNと契約し舞台はDAZNに移る公算が高い。ゴロフキンは、HBOがボクシング中継から撤退を表明しフリー・エージェントだが、村田が負けたことにより、おそらくWBA・WBC世界ミドル級統一王者サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)とのトリロジー・マッチに方針を固め、DAZNと契約を結ぶ可能性は極めて高い。

 DAZNは、カネロと5年11試合で3億6500万ドルの大型契約を結び業界を揺るがしている。10月27日米ニューヨークMSGシアターで挙行されるダニエル・ジェイコブス(米)とセルゲイ・デレイビャンチェンコ(ウクライナ)による空位のIBF王座決定戦の勝者も、おそらくDAZNと契約を果たすだろう。ジェイコブスはHBOと契約しているが、今戦が最後の契約でHBOが撤退することにより、プロモートするエディ・ハーン氏が契約しているDAZNへ移籍することはほぼ間違いない。

 さらに、セルゲイ・デレイビャンチェンコもDAZNと契約する可能性がでてきている。デレイビャンチェンコは、ヘイモンと協調関係にあるルー・ディベラ氏傘下だが、ディベラ氏は最近、マッチルーム・ボクシングを率いるエディ・ハーン氏とIBF世界Sフェザー級王者テビン・ファーマー(米)を共同プロモートする契約を結んでおり、もしデレイビャンチェンコが勝てばDAZNとの契約が具体化する可能性は高い。

 こうした状況もあり、今後ミドル級を取り巻く情勢は一気に変わってくる。こうした中で、村田が再びタイトル挑戦の機会を作ることは容易なことではない。再起するのであればタイトル挑戦が見えなければ厳しい決断を下すことになるだろう。

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