3カ国語をマスターし国際舞台で活躍するリナレス、日本でキャリアをスタートさせスター候補と言われたが、GBPと契約した矢先にサルカドにストップ負け、そのキャリアは決して順調ではなかった。英国に舞台を移しアンソニー・クローラ(英)との再戦を経て米リング誌のライト級王座を獲得、米ニューヨークのメッカ”MSGアリーナ”でようやくロマチェンコとのビッグファイトを掴んだ。ダウンを奪うも惜しくも敗戦を喫したベネズエラ人はどこへ向かうのだろうか。

 本来、ノックアウト負けをすれば商品価値を落とすことが殆ど、しかし、ロマチェンコとの戦いでノックアウト負けしたリナレスの評価は落ちるどころかむしろ上昇、”復帰戦”という言葉は相応しくないかもしれない。9月29日米カリフォルニア州インディオにあるファンタジー・スプリング・リゾート・カジノで、リナレスは、アブネル・コット(プエルトリコ)/26戦23勝(23KO)3敗と対戦し3回TKO勝ちを収め再起に成功。プロ戦績を49戦45勝(28KO)4敗(4KO)とした。

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イベントはFacebookが全世界へ配信

Jorge Linares vs Abner Cotto

Jorge Linares vs Abner Cotto LIVE, and only on Facebook.

Golden Boy Fight Nightさんの投稿 2018年9月29日土曜日

 リナレスは、帝拳プロモーションズと共に米国ではゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)がプロモートしている。GBPは米プレミアム・ケーブルTV局HBOと密接な関係にあったが、イベントは、Facebook社のFacebook Watchでグローバル配信された。

 GBPは2018年7月米Facebook社と業務提携することを発表。キャシー・デュバ氏が率いるメイン・イベンツ社と共同し2018年5つのイベントをFacebook社の動画配信サービスWatchで「GOLDEN BOY FIGHT NIGHT」としてイベントを打ち出していく方針であることを示していた。すでに、2018年8月11日米ロサンゼルスにあるアバロンで開幕し、10月13日、GBPとメインイベンツ社の共催で、WBO世界ライトフライ級王者アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)の防衛戦が予定されている。

 ついにFacebook社は、第1四半期に月間アクティブ・ユーザーが22億人に到達。ユーザー数であれば、ネットフリックスやAmazonプライムを圧倒する規模である。2017年度の広告収入は400億ドルに達し今後、成長の柱の1としてスポーツの動画配信に力をいれていくことは間違いない。

 米forbes誌によれば、Facebook社はイベント毎に25万ドル(約2842万円)から100万ドル(約1億1370万円)の放映権をGBPに支払うことで合意しているという。この規模は、HBO、SHOWTIMEに匹敵する金額である。

 Facebook社は2018年3月、MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)と25試合の独占配信権を獲得した。これまで、UEFAのチャンピオンズ・リーグの放映権をFOX社と提携し獲得していたが、同社が独占契約を結んだのはこれがはじめてのこと。米メディアによれば3000万ドルから3500万ドルで放映権を獲得したと言われている。

 GBPがFacebookと提携したのは、HBOの予算の見通しが立たないことが背景にあるが、世界的にもスポーツのストリーミング配信サービスはDAZN、Amazonプライムをはじめコンテンツは争奪戦、急成長を見せている。各社が放映権を巡り、MLB、NFL、NBAなどへ巨額の投資が目立つがボクシングは、多くの視聴件数を見込め他のコンテンツよりコストを抑えることができるメリットもあり、トップランク社と契約したESPN(米スポーツ専門チャンネル)の他、DAZN、米Facebook社などボクシング・イベントの新たなプラット・フォームは増加している。

 しかし、実際には放映権が絡み米国でスタートしたエディ・ハーンが提携しボクシング・イベントを中継する米DAZNや、ESPN+などは残念ならが日本から視聴することは出来ない。こうした状況下で配信地域を限定せず、過去の動画も視聴できるFacebook社のプラット・フォームは日本のボクシング・ファンにとっては有り難い。

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リナレス、コットとの再起戦は難なくクリア

 新しいヘア・スタイルで登場したリナレス、ライト級時代より明らかにビルドアップされていた。今回は減量苦の影響もありライト級から階級を上げ140ポンド(Sライト級)で行われた。アブネル・コットは、Sライト級試運転の相手としては最適な相手、大方の予想どおりフィニッシュまで時間を要することはなかった。

 コットは、27戦23勝(12KO)4敗(3KO)を誇るが勝利したその殆どの相手がワールド・クラスとは言い難く、元世界王者ハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)、フランシスコ・バルガス(メキシコ)、オマール・フィゲロア(米)といった、Aクラスのファイターには敗北を喫している。まさに、リナレスの再起戦の相手としておあつらえ向きな相手だったと言える。

 1回、ムービン・センスが光るリナレスは、序盤からプレスをかけシャープなジャブを上下に散らしはやくも攻勢をかける。コットはリナレスのうち終わりを狙うが、リナレスとの戦力の違いは悲しいほど明白だった。

 「コンディションはすごく良いよ、前回よりもスピードも力強さも感じている。今は、減量の最終段階で3ポンド落とすだけだし、ライト級だと6ポンドから7ポンド落とさないといけないしね。これが、140ポンドに移した理由なんだ」

 試合後のインタビューでリナレスは、階級を上げ手応えを感じていた。1階級あげると、スピード、フィジカル、パワーが通用しなくなるケースも少なくない。しかし、リナレスは階級をあげてもハイ・スピードは健在、相手に対する反射スピードも鈍った感はなくシャープなジャブから、高速ステップで踏み込み、ワン・ツーを繋げていく姿は見ていても気持ちがいい。

 2回、ワンツーのタイミングがあってきたリナレスは終盤、上下にジャブを散らし、ワンツーでカウンターを当て込みコットからダウンを奪った。俄然、戦力で劣るコットは早くも劣勢に立たされた。階級を上げるとパワー・レスが目立つ選手も少なくないが、減量苦から開放されたリナレスはパワー・アップした感さえある。

 2回、何とかピンチを凌ぎ逃げ切ったコットだったが、リナレスに捕まるのは時間の問題だった。2回のダメージが抜けないコットはリナレスの、ハイスピードについていけるはずはなく、右から追撃のワンツーで再度ダウン。その後、コットは立ち上がるもリナレスの猛攻を受けボディのローブローをレフェリーにアピールも虚しく、レフェリーは認めずリナレスの追撃を逃れることなく崩れ落ちた。

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リナレスの次戦はどうなるのか

photo by:boxingscene

 「まだ、ロマチェンコとの再戦やマイキーと戦うオプションを諦めてないよ。ロマチェンコとの再戦、マイキーと戦うことになればファンにとって興味深い戦いになるはずだしね。」

 試合前リナレスは、ロマチェンコとの再戦、PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)を主催するアル・ヘイモン氏が抱えるエースのマイキー・ガルシア(米)戦ついて言及。7年間主戦場にしていたライト級で減量苦であることを明かしたが「135ポンドに落とす場合の唯一のオプションはロマチェンコだ」ライト級での限定オプションを公にしている。

 3階級制覇を達成したリナレス、本人も言及している通り今後は、Sライト級王座への挑戦、4階級制覇達成も視野に入れビッグ・ファイトを模索していくことになる。現在、ライト級からSライト級はスター候補生達で溢れている。その中でも、リナレス、ロマチェンコ、そしてマイキー・ガルシアこの3人がとりわけ存在感が強い。

 GBPと提携関係にあった米プレミアム・ケーブルTV局HBOが2018年内でボクシング中継から撤退を決め、今後はリナレスを米国で帝拳プロモーションズと共同でプロモートするゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)がどのホスト局と契約するかによって、対戦相手も具体化してくるはずである。

 近年では、プロモーターとTV局が契約することが一般的、ゴロフキンとの再戦を制したGBPが抱えるPPVスターWBC・WBA世界ミドル級王者サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)は、年内にも中継するホスト局を決めるという。ホスト局が決まればジェットコースターのように試合が決まっていくだろう。

 最近、ロシアのキエフでWBC(世界ボクシング評議会)の年次総会が行われ、WBCはリナレスとエイドリアン・ブローナー(米)のあいだで次期WBC世界Sライト級挑戦者決定戦を命じることを発表した。もちろん、挑戦者決定戦であり指名戦ほど拘束力のあるものではなく、両陣営が前向きであっても交渉が長引けば、消滅する可能性は高い。

 集客力があるブローナーがAサイドとなるが、それでも、ロマチェンコ戦で100万ドルを稼いだリナレスのオプションとして、”トラブルメーカー”ブローナー戦はオプションとして十分検討の余地がある。しかし、ブローナーはアル・ヘイモン氏が抱えるファイターで交渉は簡単にはまとまりそうにない。

 現時点で、GBPとヘイモンの関係は過去の訴訟問題に加え、元GBPリチャード・シェイファー氏との確執もあり良好ではない。しかし、GBPはHBOが資金難だった影響もあるが、主力選手をライバル局へレンタルしている。ロマチェンコ戦ではESPNへリナレスを差し出し、今年にはGBP期待のホープ、ジョセフ・ディアス(米)をSHOWTIMEへ貸し出し、結果的に好ファイトとなった。

 ブローナーは相変わらず、リング外で問題行動が絶えることはないが、SHOWTIMEでは高視聴件数を叩き出す常連で商品価値は高く2018年4月のジェシー・バルガス戦では、直近のマイキーに敗戦したが100万ドルの報酬を受けといっている。自ら商品価値を誇示するブローナーは、差別発言、暴行容疑、逮捕は数え切れない。日本では考えられないが、それでもSHOWTIMEは集客力のあるブローナーをメインの舞台に起用し続けている。

 まだ交渉が具体化されたわけではないが、ウェルター級実力者のショーン・ポーター(米)、マイキー・ガルシア(米)、ジェシー・バルガス(米)、マルコス・マイダナ(アルゼンチン)とSライト級からウェルター級の中で全盛期の実力者と戦い一定以上商品価値を保持するブローナー戦は、リナレスにとってメリットは大きい。

 実際、リナレスは再起戦で勝ったとはいえ、コットはSライト級でAクラス以上のファイターではない。耐久力やパワーが、レジス・プログレイス(米)/22戦全勝(19KO)や、WBC王者ホセ・カルロス・ラミレス(米)/23戦全勝(16KO)といったSライト級の実力者に通用するか未知数。そういった意味でも類い稀の身体能力をもつアフリカ系アメリカ人のブローナーであれば、リナレスのポテンシャルを引き出すには十分、Sライト級で実力測る相手としても最適である。

 しかし、”トラブルメーカー”ブローナーは140ポンドからウェルター級までオプションは豊富で、リナレス戦に関心を示すだろうか。噂されるマニー・パッキャオ(フィリピン)、フロイド・メイウェザー(米)の復帰戦の話や、実際にウェルター級であればリナレスより稼げるオプションは多い。さらに、交渉締結に向け懸念されるのがブローナー側のウェイト問題である。

 ブローナーは体重超過の前科もあり、マイキー戦では1ポンド50万ドルのペナルティが契約に盛り込まれ、ようやくSライト級リミットを作っている。直近のバルガス戦は144ポンド、減量が厳しい140ポンドに落としそれに見合う報酬が得られるかどうか実現に向け課題は多い。次回のシリーズで、マイキーの動向を見てみよう。

(Via:ESPN)

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