タイトルマッチはどうなってしまうのだろうか。メキシカン・アイドル、カネロが1年ぶりにゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)と再戦しミドル級頂上決戦を制覇。これまで停滞していたミドル級戦線が一気に動き出すはずだったが、現地時間10月20日米ボストンでデメトリアス・アンドレード(米)と防衛戦を行う予定のWBO世界ミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(英)が薬物検査で陽性反応を示し、タイトル剥奪の可能性がでてきた。

 8月30日、サンダースの地元英国シェフィールドでVADA(ボランティア・アンチ・ドーピング機関)によって行われた薬物検査で、サンダースの検体から禁止薬物として指定されているオキシロフリンの陽性反応を示した。試合を管轄するマサチューセッツ州のコミッションは現地時間10月8日サンダースのライセンスを発行するか協議し結論を出すことになっている。

 サンダースは、直近で2018年9月24日UKAD(イギリス・アンチ・ドーピング)で行われた薬物検査を含め今年行われた検査は全て陰性結果となっている。WBO(世界ボクシング機構)は、この問題についてコミッションがライセンスを発行しない場合、サンダースの王座剥奪、ライセンスを発行した場合も引き続き薬物問題を調査し、その上で結論を下す方針を示している。

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WADAの規定では違反とはならない

 「WADA(世界アンチ・ドーピング機関)の規定に沿うUKAD(イギリス・アンチ・ドーピング機構)では使用が認めらている」
 サンダースをプロモートするクィーンズ・ベリー・プロモーションズを主宰するフランク・ウォーレン氏は問題ないと強調。サンダースはSNSを通じて、一般的な鼻づまりを抑えるスプレーの影響で故意ではことを主張している。

 薬物検査では、常に禁止されている物質と競技中に禁止されている物質がある。オキシロフリンはWADAの規定では、競技時に禁止薬物として指定されているが、競技前には禁止薬物としては指定されていない。今回、サンダースの母国BBBofC(英国コミッション)が処分対象としなかったのは、BBBofCの規定がWADA、UKADに沿う形で禁止薬物が定められているためである。

 だが、2018年10月20日マサチューセッツ州ボストンのTDアリーナで行われるデメトリアス・アンドレード(米)との防衛戦の契約ではVADAによる薬物検査が義務付けられており、VADAの規定ではオキシロフリンの使用は常時使用することが禁止されているため、サンダースの王座は剥奪される可能性がある。

 「ビリー・ジョーのライセンスが発行されれば、タイトルマッチとして開催する。最も重要なのは、10月20日にデメトリアス・アンドレードが世界タイトルを獲得することだ」。

 米本土でDAZNの初興行を主宰するマッチルーム・ボクシングのエディ・ハーン氏は「ビリー・ジョーにライセンスが発行されなければ、ウォルター・カウトンドクワ(ナミビア)とサインする」。とはやくもプランBがあることを示唆。ウォルター・カウトンドクワはWBOミドル級2位にランクしている。WBOがサンダースの王座剥奪を決めれば、WBOは1位デメトリアス・アンドレードと2位のウォルター・カウトンドクワに対し王座決定戦が発令されるだろう。

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トラブル続きのサンダース

 2017年12月、デビッド・レミューを大差の判定で勝利し評価の上がるサンダースだが、ここ最近リング外ではトラブル続いている。

 2018年6月、タイソン・フューリーの試合を英国に観戦しに行ったWBC世界ヘビー級王者デオンテイ・ワイルダー(米)とレストランで乱闘騒ぎ、最近では薬物中毒の女性に一般人を襲わせた映像がソーシャル・メディアに流出し問題となりコミッションから10万ポンドの罰金処分が科せられている。

 サンダースの戦績は26戦全勝(12KO)、実は2015年12月にアンディ・リーから王座を奪取して以来、自身の怪我、対戦相手の怪我やトラブルがあり、たった3度の防衛しか行ってない。ミドル級ウォーズの中心にいたが自国に籠もる一方で、米国への関心を示しゴロフキンや、カネロのダシに使われていた感がある。

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 王座奪取後、4団体統一を掲げる当時WBA・IBF世界統一ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)からオファーを受け、交渉が具体化したが英国開催を希望するサンダースと報酬を含め契約条件の折り合いをつけることができず交渉は決裂した。

 その後、2016年4月にマックス・ブルサックと初防衛戦を行う予定だったがサンダースがスパーリング中に左拳を骨折したため延期。9月米テキサス州アーリントンで行われるカネロのアンダーカードで、興行を主宰するGBP(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)からウィリー・モンローJr.戦のオファーを打診されるが、ゴロフキンに負けていることを理由に出場を辞退。10月にアルツール・アカボフと初防衛戦を行う予定だったが、アカボフの書類不備が見つかり12月3日に延期となった。

 タイトル奪取から実に12ヶ月を経てようやくアルツール・アカボフとの初防衛戦が決定。12回3−0の判定勝ちを収めて初防衛に成功した。ようやく、初防衛戦を終えたがその後もすんなりと試合は決まらず、トラブルが付きまとう。

 WBOがカネロを指名挑戦者として認定するが、1位のアフタンディル・クルツィゼが不服申し立てを行い、2017年7月に指名戦を行うことが決まっていたが、試合直前にクルツィゼがニューヨークを拠点とするロシア系犯罪組織の1人として逮捕され、試合は急遽中止となった。

 その後、フランク・ウォーレン氏は、ゴロフキン陣営と交渉し報酬面を含め全ての条件に同意したことを明らかにしていたが、WBO会長は統一戦の要請が無いことから実現はないと声明を発表。3団体統一王者ゲンナディ・ゴロフキンとの交渉が浮上したが、実際にはゴロフキン陣営は、桁違いの報酬を得るカネロ陣営と水面下で交渉が続けられていた。

 2017年3月ジェイコブスとタフファイトを繰り広げたゴロフキンは、6月予定していた防衛戦をキャンセルすることを決定。2017年5月5日、カネロがチャベスJr.との対戦に勝利した後、会場はプレス・カンファレンス場へ変貌を遂げ、ゴロフキンと9月メキシコの独立記念日に戦うことが電撃発表された。

 この時に発表したのは他でもなくメイウェザー対マクレガーの交渉が進んでいたことが理由である。GBP陣営は、メキシコの独立記念日を死守するため日程を確保したかったことは間違いない。会場にはテキサス州アーリントンにあるAT&Tスタジアムも候補に挙がるが、メイウェザー対マクレガーが米ラスベガスで開催すること、誘致も含め実際はベガス以外に選択の余地はなかったはずである。

 ゴロフキン戦が消滅したサンダースは、9月に一度は断ったウィリー・モンローJr.(米)と対戦し12回3-0の判定勝ちを収め2度目の防衛に成功した。2018年3月にマーティン・マレー戦が決まるが、直前でサンダースの怪我が伝えられていた。

 「カネロとの再戦が決まらなければ、我々はBJサンダースと取引するつもりだった。8月米ロサンゼルスで合意していた。ゲンナディはサンダース戦を自らの挑戦と捉えていた。彼は無敗の王者だしね」。

 実際にサンダースの怪我がどの程度だったのか不明だが、この時ゴロフキン対カネロの再戦交渉が進められ、交渉決裂の恐れもありゴロフキン陣営のK2プロモーションズ トム・ローフラー氏がプランBとして、カネロとの再戦が消滅した場合8月に米ロサンゼルスにあるフォーラムでサンダースと王座統一戦の取引が成立していたことを明かしていた。

 ゴロフキン対カネロ再戦の交渉はエスカレートし、いつ破断になっても不思議ではなかったが急転直下ゴロフキン対カネロの再戦が合意、サンダースはまたもビッグマッチを取り逃すことになってしまった。サンダースは、10月20日マサチューセッツ州ボストンにあるTDガーデンで行われるアンドレード戦ではキャリア・ハイの220万ドル(約2億5000万円)の報酬が確約されているが、VADA基準であれば王座剥奪は免れることは出来ない。マサチューセッツ州のコミッションがどういった結論を下すのだろうか。

The Ring)

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