村田諒太(帝拳)が保持するWBAセカンド・タイトルをめぐり事態は急展開を見せている。一般的に認められていないWBAセカンド・タイトルとはいえ、苦労して手に入れたWBA世界ミドル級王座を手放す必要があるのだろうか。WBA(世界ボクシング協会)が命じたWBA世界ミドル級王者村田諒太(帝拳)とロバート・ブラント(米)戦の交渉が決裂、村田陣営はWBAタイトルを辞さない方針を示している。

 WBAの興行権入札が現地時間2018年8月13日WBA本部があるパナマで行われ、ロバート・ブラントをプロモートするグレッグ・コーエンが20万ドル(約2200万円)で興行権を獲得。村田をプロモートする帝拳プロモーションズ、トップランク社は入札には参加しなかった。

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photo by:boxingscene


 「剥奪された場合、WBAに抗議する」
 トップランク社ボブ・アラム氏は米メディアを通してWBAに対し強く反発。トップランク カール・モレッティ氏は、次戦予定通り、10月20日米ネバダ州ラスベガスで挙行。ジェイソン・クイッグリー(アイルランド)戦実現に向け交渉を継続していく方針を示している。

 村田陣営はWBAに対し強く反発しているが、時系列から検証するとWBAの指令、興行権入札となった経緯については問題ないようにみえる。むしろ、ロバート・ブラントとの指名戦は村田諒太がミドル級王座決定戦に進む時に決まっていたことである。しかし、WBAに落ち度がなかったわけではない。

 WBAの他メジャー4団体では、一定期間のあいだ王者側に対しWBAが指名する指名戦が義務付けられている。WBAの規定では例外をのぞき拒否した場合はタイトルは空位、つまり村田諒太の王座は剥奪される公算が高い。

 もちろん、WBAと指名挑戦者陣営のあいだで話し合い、WBAと指名挑戦者サイドへ待機料を支払い指名戦を回避し、選択防衛戦を行うことは可能だ。ただ、関係者のあいだで同意し最終的にWBAに承認を得ることが必須。しかし、今回に限っては指名戦の回避は2度目で指名戦の回避は難しかっただろう。

 実は、ロバート・ブラント(米)は村田がWBA世界ミドル級王座を獲得するまえから王者への指名挑戦権を持っていたのである。もともと、WBAはダニエル・ジェイコブス(米)がWBAスーパー王者ゲンナディ・ゴロフキンとの統一戦に敗れ、空位となった王座決定戦にアッサン・エンダム(フランス)対村田諒太戦を命じ、勝者に対し指名挑戦者であるロバート・ブラントとの対戦を120日以内に行うように義務付けていた。

 2017年5月20日東京・有明コロシアムで行われたエンダム対村田の王座決定戦は、エンダムが判定勝利を収めたが判定結果がソーシャルメディアを通じ世界各国で大きな波紋を呼んだ。事態を収集するためWBAヒルベルト・メンドサJr.会長が自ら検証に乗り出し、チャンピオンシップ委員会に再戦を要請することで一旦落ち着いた。

 その後、WBAは採点結果に問題があったことを認め、採点したグスタボ・バティージャ(パナマ)、ヒューバート・アール(カナダ)2人のジャッジを6ヶ月の資格停止処分とし、WBA世界ミドル級王者アッサン・エンダム(フランス)と村田諒太(帝拳)に対し即時再戦を命じることを発表した。

 ブラントは、エンダム対村田の勝者へ挑戦することを約束されていたが待機を余儀なくされた。いつ再戦が行われるか不透明、ブラント陣営は賞金獲得トーナメントWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)への参戦を決定。これで、指名挑戦者から外れると見られていたが、WBAはブラントが待機されたことを考慮しWBSS参戦を認めている。つまり、ブラントの指名挑戦権はまだ有効だったのである。

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50%の報酬分配は当初から決まっていた

 「50−50の報酬分配は2017年はじめ関係者のあいだで同意されたもので当時、反対意見はなかった」
 ブラントを抱えるクレッグ・コーエン氏は、当時をこう振り返っている。通常WBAの規定であれば、報酬分配は王者側が75%、挑戦者側が25%受け取ることになっている。争点ともなっている報酬分配がなぜ、50%となったのだろうか。

 2016年、村田諒太はWBA王座決定戦に出場するにはランキングをあげる必要があった。世界的にみてもアジア人が欧米が舞台となるミドル級の世界タイトルマッチに挑戦すること自体が難航を極める。プロモーター、統括団体の思惑もあり商品価値が優先がされる。ところが、WBAが命じていたWBAスーパー王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対ダニエル・ジェイコブス(米)の統一戦が締結しミドル級の情勢が一転、村田にもタイトルチャンスの可能性がやってきたのである。

 当時、ゴロフキン対ジェイコブスが締結するまえ2016年11月のWBAランキングでは、村田のランキングは4位、3位がロブ・ブラントだった。1位のアルフォンス・ブランコは暫定王者だったが、エンダムとの暫定王座決定戦に敗れ、2位クリス・ユーバンクJr.は階級をあげている。

 実際、ブラントを抱えるコーエン氏が主張するとおり、この時期にWBAと関係者のあいだでランキングや指名挑戦権、報酬分配などが協議された可能性は高い。その結果としてこれまで、ブラントの次点だった村田が2016年12月のWBAランキングでは2位にランク。WBAが2位に滑り込ませたと考えればWBAが決定した50%の報酬分配は納得できる。

 同年12月、ゴロフキン対ジェイコブスが締結すると、1位WBA暫定王者アッサン・エンダム、2位村田諒太、3位ロバート・ブラントとブラントを出し抜き村田が2位に躍り出た。おそらく、ブラント陣営は王座決定戦を村田に譲るかわりに、指命挑戦権と報酬分配を要求したのだろう。50%の報酬分配は通常であれば空位となった場合の決定戦に適応される。つまり、ブラント陣営は一旦は王座決定戦を譲り渡しが王者側の村田と同等の立場だった。

 ただ、WBAに落ち度がなかったわけではない。WBAは、エンダム対村田の王座決定戦から13ヶ月以上が経過した2018年6月12日に再戦を正式に命じている。少なくても、2018年4月ブランダムラ戦がおわった段階でWBAは正式に指名戦を命じるべきだった。報酬分配に関してもすでに13ヶ月以上が経過、ブラントのランキングも変動し1位から降格、当時と状況は大きく変わり村田陣営の理解を得られることは難しいだろう。ブラント陣営と正式に契約を交わしたか不明だが、ブラントとの指名戦を命じる際に、再度WBA、関係者らを集め協議していれば、こうした大きな混乱は起きなったはずである。

村田のWBA王座はどうなるのか

「知名度もなくつまらない相手。やる意味も指名理由もない」

 陣営はメリットがないと強調。WBAに対する不信感も理解できるが、WBA王座を剥奪してまでクイッグリー戦を強行したい理由が見当たらない。もちろん、クイッグリーはゴロフキンやカネロを最終目標にする村田のステップ・アップする相手として適任だ。しかし、WBAセカンド・タイトルとはいえ王座剥奪してまで対戦する相手だろうか。

 プロ・ボクシング界では、ビッグマッチを優先し指名戦を回避するケースは珍しくない。しかし、村田との対戦が具体化した相手はGBPが抱える売出し中のホープで、まだワールド・クラスの相手と拳を交えた経験はなく、WBAから命じられているブラントと商品価値に大きな差はない。

 日刊スポーツによれば、ゴロフキン対カネロの勝者とやることが両陣営から約束されているという。10月20日米ラスベガスで予定している次戦をクリアするのがミッションであれば、ブラント、クイッグリーどちらへ進み勝ったとしも村田の評価が大きく変わることはない。

 村田陣営は、クイッグリー戦締結に向け交渉を続けるだろう。経緯をみればWBAは慎重に再戦を命じるべきだった。もし、村田がWBA王座を剥奪された場合、ゴロフキン戦にカジをきるとはいえ、具体的に話が進んでいるかは別としてもゴロフキンが勝つ保証はどこにもない。かといって、米本土に大きなバックグランドを持つカネロ戦が締結するとは到底思えない。そうなった場合、たとえセカンド・タイトルであっても失うことにより大きなチャンスを失うことに変わりはない。今後、関係者のあいだで最終的な落としどころが協議されることになるだろう。WBAは、トップランク、帝拳プロモーションズとも関係が深い。いったい、どんな結論を下すのだろうか。

(Via:ESPN
ESPN

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