尾川堅一の敵地アウェイ米国での王座獲得は実に36年振りの快挙である。しかし、薬物検査で陽性反応。尾川はIBF王座剥奪の危機に面している。問題は薬物を故意に摂取した否かではなく、こうした結果がでたことにある。本来であれば王座返上が筋である。

尾川堅一の薬物問題の経緯

 2017年12月9日米ネバダ州ラスベガスにるマンダレイ・ベイ・イベントセンターで尾川堅一(帝拳)はテビン・ファーマーと空位のIBF世界Sフェザー級王座決定戦を争い12回2-1の判定勝ちを収め王座獲得に成功した。

 しかし、喜び束の間2018年1月19日、試合を管轄したNSAC(ネバダ州アスレチック・コミッション)の月例会議で、12月5日試合前にWADA(世界アンチ・ドーピング機関)により行われた薬物検査で尾川の検体から陽性反応が出たことが判明。尾川は調査が完了するまで資格停止処分となった。

 尾川の尿サンプルから禁止薬物として指定されているアンドロスタネディオル(合成物質テストステロン)が検出。サンプルA、サンプルBともに陽性反応を示した。試合後に実施された薬物検査は陰性結果であることが分かっている。

Sponsor Link

NSAC(コミッション)の裁定は先送りに

 NSACは、2月14日に公聴会で裁定を下す予定だったが延期。延期理由は明らかになってないが、米メディアは裁定がくだるまで1ヶ月程度かかる見通しだと報じている。

 現状、尾川はNSACから資格停止処分となっているが、これは結論がでるまでの暫定的な措置。NSACは2015年5月に薬物に関する罰則強化を実施。薬物違反を犯した場合、今まで以上に厳しい罰則が科せられる。

 NSACが尾川を黒と裁定を下した場合、軽減措置がとられず現行のNSACの罰則規定が適用された場合、3年間の試合出場停止処分と、報酬50%〜70%の処分が科せられる。

尾川は限りなく白だろう

 一連の薬物報道を受け尾川が所属する帝拳プロモーションズは、薬物検査で陽性反応となった件についてメディア向けに報告書を提出している。

 「陽性反応が出た事実は認めなければなりませんが、禁止薬物を意図的に摂取したことは絶対にありません」。
 帝拳プロモーションズがメディア向けの報告レポートから尾川は故意ではないと主張している。

 「検査時に通訳が不在で言葉が通じず、アトピーの薬で申告漏れがあった。飲んだ薬地についてNSACに報告済みで問題ないと思っている」。
 帝拳本田会長がいうとおり、医療行為(TUE)としてアトピー薬を処方していることをコミッションへ申請し忘れたのだろう。

陣営のミス

 申告漏れだということを前提に話しを進めれば、残念な結果としかいいようがない。しかし、問題は薬物摂取が故意か否かではなく検査で陽性反応がでてしまったことである。帝拳プロモーションズは世界屈指のプロモーターであることを考えれば誤算である。

 帝拳プロモーションズは、北米を拠点とするゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)、トップランク、K2プロモーションズといった有力プロモーターと太いパイプがあり日本で行う世界タイトルマッチだけでなく多くのイベントを米国で開催している。

 米国のリングで所属する日本人選手の世界タイトルマッチの交渉にも従事。多くの日本人選手達をリングに上げている。

 本田会長は世界ボクシング殿堂入りを果たし、米メディアの中でも有数プロモーターとして度々名があがる。恐らく、所属する日本人選手以外で米国で試合をする場合の窓口としても大きな役割を果たしているのは間違いない。

 帝拳に所属していた西岡利晃は、2011年10月に尾川と同じ米・ネバダ州ラスベガスの地でラファエル・マルケス(メキシコ)と対戦。三浦隆司は、2015年11月にラスベガスでフランシスコ・バルガス(メキシコ)を相手に防衛戦を行っている。

 だからこそ、米国における抜き打ちのランダム薬物検査の厳しさ、薬物問題に誰よりも精通し熟知していたはずである。

 さらに禁止されている薬物はWADA(世界アンチ・ドーピング委員会)により国際基準として定められ公開されている。禁止薬物は市販の薬に含まれているケースも有り、風薬、サプリメントなども細心の注意が必要。プロ・アスリートとして薬物問題の最低限の知識は保身も含めて知っておく必要がある。

尾川堅一の裁定が覆るかどうか

 尾川陣営は、コミッションへ事実関係を明白にする責任があるにせよ、申請漏れでとおるほど米国のコミッションは甘くはない。オリンピックの場合、医療行為だとしても事前申告し承認を受けなければ違反行為となるケースがある。

 米国のコミッションは、山中対ネリ戦で沈黙し再戦を容認したJBC(日本ボクシングコミッション)とは一線を画する。過去に、薬物検査でサンプルA、B両検体で陽性反応を示し、裁定が覆されたケースは筆者の記憶にはない。

 日本のファンならば忘れもしないだろう2015年5月1日に米・ネバダ州ラスベガスで粟生隆寛(帝拳)がベルトラン(メキシコ)とWBO世界ライト級王座決定戦を行いベルトランが2回TKO勝ちを収めた。

 しかし、その後の薬物検査でベルトランから禁止薬物として指定されているスタノゾロールの陽性反応が出た為、NSACは試合を無効試合とすることを決断。ベルトランは報酬30%にあたる罰金25,500ドル、9ヶ月の出場停止処分となった。

 前述したとおり、NSACは2015年5月に薬物違反の罰則ルールを全面的に見直し厳しくなっている。尾川のケースを現行の罰則規定に当てはめると3年間の出場停止処分となる。

 しかし、これは最長で3年間の出場停止処分であり、調査の結果次第では軽減措置がとられる可能性も十分ある。ただ、軽減措置がなされても公聴会で無効試合と決定すれば、IBF(国際ボクシング連盟)はコミッションの裁定に従い尾川の王座剥奪を決断する公算は高い。

 米メディアは、尾川の王座剥奪の可能性は極めて高い見方をしている。現時点で裁定が覆るかは不透明。王座を返上することはリスキーだが一旦は筋を通すことになる。公聴会で処分が決定しIBFから王座を剥奪される最悪のケースは免れることができる。

 冒頭で伝えているとおり、薬物摂取が意図か否かは問題ではなく、TUE(医療行為)の申告漏れだとしても陽性反応がでたことは事実。公平性を考えれば違反扱いになる可能性は高い。コミッションは本件の事情を理解し軽減措置がなされても厳しい結果になるだろう。何れにせよ、近いうちに結論がでることになる。

Sponsor Link