ビッグマッチが少なくなると言われた2016年、ボクシング界の枠を超えたビッグマッチは実現しなかった。しかし、ボクシング好きであればこのマッチメークはこの年の最高のカードであったことは間違いないだろう。

 ライトヘビー級で事実上のトップである2人がパウンド・フォー・パウンド(PFP)最強の称号をかけて戦う。カネロ、ゴロフキンに次ぐ、現状考えられる最高のマッチメークである。

 WBA・WBO・IBF世界ライト・ヘビー級3団体統一王者・セルゲイ・コバレフ(ロシア)、スーパーミドル級からライトヘビー級に階級をあげたアンドレ・ウォード(米)双方がキャリア・ピークに差し掛かっている時に、試合が実現したことは今までのボクシング界からすれば奇跡といっていいだろう。

 プロモーター、TV局は選手の商品価値を最大化したいがため、商品価値低下を恐れキャリアのピークに差し掛かっている選手同士の試合をマッチメークすることを避けることは珍しくない。

 キャリア、ピーク同士の選手がぶつかりあえば、敗戦した選手の商品価値低下は免れない。プロモーターのかかえる選手がドル箱スターであれば尚更、選手が負けたときプロモーターとして受けるダメージも大きい。

 ただ、こういった選手の商品価値を優先し、プロモーター、TV局の事情でメガファイトが先送りになりファン離れが加速。ボクシング人気の低迷に繋がっていることは事実だろう。

 2015年1月ウォードはグーゼンとのプロモーター問題を解消。米HipHop界の大御所であり、NBA選手らとの契約も持つJay-Z率いる新鋭ロックネイション・スポーツと電撃契約を果たしたのである。

 その後、アンドレ・ウォードは復帰戦を経て、米・大手ケーブルTV局HBOと3試合を契約。契約条件にセルゲイ・コバレフとの契約が含まれ、まだ試合は決まってないが事実上コバレフとの決戦は決まっていたという話もあった。

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窮地から立て直しに成功

 それまでアンダーカードが凡戦だったこともあり、1ラウンド、コバレフのジャブがウォードにクリーン・ヒットしウォードがグラつき会場にいたファンが一斉に湧いた。その後、2ラウンド、ウォードがコバレフの右ストレートを貰いキャリア初となるダウンを喫したのである。

 ウォード有利とはいえキャリア初のダウンを喫し、キャリアでもっとも窮地にたたされKO負けさえ感じさせた2ラウンド。ここからウォードがコバレフからペースを掌握すると予想した人は少ないのではないだろうか。

 中盤以降、リスクを最小限に抑えコバレフの脅威となるパンチを回避し、立て直しに成功したのはキャリアをとおして得たスキルとウォードがもつポテンシャルだろう。

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ラスベガス判定?、不当判定を思いおこす試合ではなかった

 この試合が、「ラスベガス判定だ」とまるで何か陰謀があったのかのような意見もあるが、そんな話しがでるような試合ではなかった。

 ラスベガス判定というのは、勝者が逆であるような試合を指すという。つまり、明確にポイント・アウトしたように見えるが、判定で勝者と敗者が逆転する現象である。

 今回の試合、果たしてそこまで明確にコバレフがポイントアウトしただろうか。筆者は、前半はコバレフが明確にポイント・アウト。10ラウンドまではコバレフがポイントでリードしていたと見方をしている。

 2回ダウンを喫したウォードは、コバレフから中盤以降ポイントアウトし、11、12回でコバレフからポイントアウトし逆転。今回のジャッジの判定は妥当なものであると考えている。

 確かに、コバレフのパンチは集計上多い。ただ、コバレフが中盤以降ウォードに対して有効なクリーン・ヒットは少なかったように見える。事実、コバレフの右はほとんどウォードにコネクトしていなかった。

 ただ、決定打が少なかっただけに、ジャッジは難しい判断を迫られたのは間違いない。ウォードのジャブがヒットすれば、その後コバレフのジャブがヒットする場面もあり、互いに印象的なパンチが無かった。

 特に、中盤以降はシーソーゲームのような展開が続き、どちらかにポイントを付けることは難しいラウンドが重なった。つまり接戦だった状況が続き、「ラスベガス判定」や、不当判定といえるような試合ではなくジャッジがコバレフに付け勝利しても不思議では無かった。

 物議をかもす判定は珍しくない。ただ、そんなこと以上に最高の2人がリスクをテイクし、時期を逃さずに試合が成立したこと、プロモーター、TV局に感謝するとともに、素晴らしいパフォーマンスを披露したという印象のほうが強かった。

 試合直後「ラスベガス判定」の意見がでてきた。むしろこういった意見がでたことに対して驚きを隠せなかったというのが本音である。

 契約に再試合条項があり再戦は必至だろう。ウォードが学習してくる以上、コバレフがウォードに勝利するには初戦以上に苦労することは言うまでもない。

 もともと、ウォードはノックアウト欲求はそこまで高くない。初戦でえた経験を基に必要最小限のリスクを犯しコバレフからポイントアウトしてくるだろう。

 最新の情報によると、再戦は2017年4月か6月、ニューヨークかラスベガスで予定。再戦条項には、再戦の開催地としてウォードの地元である米・カリフォルニア州オークランド、コバレフの故郷ロシアは再戦の開催地として除外されている。
 
 会場は、ニューヨーク、バークレイズ・センターかマディソン・スクウェア・ガーデン・アリーナ、ベガスは「T-Mobileアリーナ」が予定されているという。

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