2016年「ファイター・オブ・ザ・イヤー」はこの男。この男の真のポテンシャルを発揮できる選手はこの階級に居ないと断言しても過言ではない。ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)は、スーパーフェザー級へ階級を上げローマン・マルチネス(プエルトリコ)を戦慄KOし、あのニコラス・ウォータースを7回に戦意喪失させたのである。

 ボクシング・ファンの間でもパウンド・フォー・パウンド(PFP)上位にランクするロマチェンコとスーパーフェザー級で評価の高いニコラス・ウォータース(ジャマイカ)の一戦は、関心の高い試合であったことは間違いない。

 ロマチェンコ有利とはいえ、パワーで勝るウォータースの一撃がロマチェンコを襲えば危ない場面もあるとの見方もすくなくなかった。しかし、おわってみればロマチェンコ劇場。圧倒的な実力差をみせつけて圧勝した。

 WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチが、2016年11月26日ネバタ州ラスベガスにあるザ・コスモポリタンにある「ザ・チェルシー」で行われ王者・ワシル・ロマチェンコが7回TKOでニコラス・ウォータースを下し初防衛戦に成功した。

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 ロマチェンコは、持ち前のスピードを活かした回転のはやい連打。多彩なフットワークを活かしたボクシングを披露。ウォータースはロマチェンコの変幻自在の攻撃にディフェンスが精一杯、自慢のカウンターを狙うもロマチェンコの回転の速い連打に阻まれた。

 ウォータースは、7回終了時に試合放棄。自身の攻撃が通用せず勝利する見通しが全く無いと判断したからだろう。それまで致命的な被弾がないウォータースは12回フルラウンド戦える体力は残っていたことは明白。試合放棄の決断は今後のマッチメークに影響がでることは免れないだろう。

 7回、試合は一方的な展開となった。ロマチェンコは、フットワークを使いポジショニング、アングルを変えウォータースを翻弄。安全圏を作り回転のはやい連打をまとめていった。

 ウォータースもカウンターを狙いパンチを放つも打ち終わりには既に、ハイテクの異名をもつロマチェンコはおらず逆に迎撃された。ウォータースが放つパンチはさばかれ、ロマチェンコにコネクトすることは殆ど無かった。

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階級を上げ更に評価を上げた

 「ウォータースは素晴らしいファイターだけど、実際戦ってみると自分が思っていたほど難しい相手ではなかったよ。」

 ロマチェンコは、ウォータースに勝利した後のインタビューでそう語っていた。スーパーフェザー級での統一戦も現実路線であるが、同階級にロマチェンコと肩を並べるファイターは居ないといっても過言ではなく、階級を超えたビッグマッチの期待を抱いたのは筆者だけではないはずだ。

 ロマチェンコは、2016年6月、米ニューヨークでタフなローマン・マルチネスを戦慄KOした記憶が新しい。スーパーフェザー級でのパワーが通用するか疑問視する声も多かったが、マルチネスをフィジカル、パワー、スキルで圧倒。2階級制覇以上にファン、関係者に与えたインパクトは計り知れない。

 ロマチェンコをプロモートするトップランク ボブ・アラム氏は、ロマチェンコを絶賛。将来的にロマチェンコ、パッキャオ戦を考えていることを明かしていた。そういった経緯もあり、ニコラス・ウォータースとの一戦はロマチェンコがどんなパフォーマンスを披露するか、関係者の間でも話題となっていた。

今後、ロマチェンコはトップランクの新たな顔に

 勿論、試合まえにプロモーターがいう言葉はプロモーションもかねており全て鵜呑みにはできない。ただ、長きにわたりトップランクの看板を背負ってきたパッキャオも復帰したとはいえ37歳。キャリアは終盤に差し掛かっていることは事実だろう。階級の問題をクリアすればボブ・アラム氏の言うことも非現実的とはいえない。

 パッキャオは復帰を表明したが残る試合は数試合。長きに渡りトップランクの看板をつとめ、世界のボクシング界をけん引してきた。トップランクとしては、次世代のトップランクの顔となるスター誕生を願っているのが本音だ。

 アラム氏は「メイウェザーJr.、パッキャオのような偉大な選手はいるが、ロマチェンコのようなボクサーは居ない」そう語っていたとおり、アラム氏が将来性のあるロマチェンコに大きな期待感を示していることは確かである。

2017年ロマチェンコ、パッキャオは本当に実現するのだろうか

 とはいえ、スーパーフェザー級のロマチェンコが来年(2017年)早々に階級を2階級あげるとは考え難い面もある。ロマチェンコ自身はライト級は問題ないがスーパーライト級は調整が必要と話している。

 パッキャオとの対戦が決まり、印象的な勝ち方をすればロマチェンコの米国に置ける知名度は上がる。ただ、中継するホストHBO(米・最大手ケーブルTV局)の予算の都合もあり、試合はおおくて年3試合。

 次戦をスーパーフェザー級での防衛戦、その後直ぐにスーパーライト級にあげるだろうか。勿論、ライト級〜スーパーライト級のキャッチウェイトという選択肢もあるが、いくらロマチェンコとはいえ調整試合なしではあまりにリスキーな選択ともいえる。

 ただ反面、ロマチェンコが負けたとしても相手がパッキャオであれば、米国で全国区レベルとなっていないロマチェンコの商品価値はそこまで下落しないとの見方もできる。

 仮に、パッキャオに敗れたとしてもライト級でマイキーらとのビッグネームとのマッチメークも可能。陣営がリスクをテイクしパッキャオ戦に踏み切ってもおかしくはない。

 事実、関係者の間で評価が高いが、ウォータースに勝った今も北米における人気・知名度はさほど変っていないことも事実であり、スターダムにのし上がるにはビッグネーム狩りが必要な状況に変わりはない。

トップランク、パッキャオの後継者は

 ロマチェンコの他にもパッキャオとの対戦に近いポジションにいるのが、WBO世界スーパーライト級王者・テレンス・クロフォード(米)である。クロフォードは幾度となくパッキャオの対戦候補として浮上している。

 クロフォードもロマチェンコと同様、確かなスキルを持つ次世代のトップランクのスター候補。しかし、オマハで絶大な人気があるが人気・知名度は全国区とは言い難くどこか地味な存在である。ロマチェンコ同様スターダムにのし上がるにはビッグネーム狩りが必要だ。

 トップランク傘下には、オスカル・バルデス、ヒルベルト・ラミレス、フェリックス・ベルデホ、スター候補生達は居るがまだ売り出し中の選手。確かな技術力はあるが、現状のロマチェンコ、クロフォードほどのインパクトがあり今後に大きな期待を抱ける選手としてはまだ成長していない。

 一方で、パッキャオがライト級からウェルター級にあげオスカー・デ・ラ・ホーヤ(米)に挑戦しスターダムにのし上がったようにロマチェンコもまた同じシナリオで米国で衝撃を与えるプランがあると予想する人もいるだろう。

 ただ、これが本当に実現したとしてロマチェンコの地位がどこまで登りつめるかは不透明。パッキャオがデ・ラ・ホーヤを破り、米国で衝撃を与えたようなインパクトを与えられるだろうか。こう考えたときに、パッキャオ戦前にビッグネーム狩りをしておきたいところ。

 パッキャオはデ・ラ・ホーヤに挑戦する以前、ラスベガスの聖地MGMでメーンを務めるまでに成長。すでにPPVスター候補の地位を確保していた。つまり、デ・ラ・ホーヤに勝利すればスターの座が約束されていたのである。

 ロマチェンコは米国でメーンを張れる選手へ成長を遂げているがまだ小さい箱が限定。パッキャオが米国に衝撃を与えた状況とは異なる。周りにロマチェンコとライバルとなる選手も見当たらないのが残念なところ。パッキャオがあそこまで昇りつめたのは、切磋琢磨するライバル達がいたからでもある。

 何れにしても、ロマチェンコの次戦は現実的にみればオルランド・サリド(メキシコ)との再戦だろう。サリドは三浦隆司(帝拳)とのWBC世界スーパーフェザー級王座決定戦が怪我で流れた。

 激戦が続いてるオルランド・サリドも36歳。リスキーなフランシスコ・バルガス(メキシコ)、三浦隆司(帝拳)らとの試合より、高い報酬が見込めるロマチェンコ戦に方針を固めても不思議ではない。

 ロマチェンコ、パッキャオとのビッグマッチは、現段階で試合数を考慮しても2017年に実現する可能性が少なからずある。ただ、ロマチェンコにとってパッキャオ戦は大きなチャンスとはいえ、調整試合なしに2階級上げるのは大きなリスクがある。

 パッキャオは上院議員となり政治活動に専念。年齢を考えればいつ引退してもおかしくない。トップランク次世代のスター候補をパッキャオにぶつけ実現を目指すなら、2017年内が期限だろう。

 パッキャオ、クロフォードも現実路線であることは間違いない。ただ、ロマチェンコが2階級を超えパッキャオ戦が実現すれば大きなサプライズとなる。つまり、クロフォード戦のインパクトを超えるドリーム・ファイトになることは間違いない。何れにせよ、ボブ・アラム氏のパッキャオの後継者選びがキーになってくるはずである。

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