「ノックアウトする」未来を約束されたウェルター級プロスペクトの1人エロール・スペンスJr.(米)は、レオナルド・ブンドゥ(シエラレオネ)との試合前の記者会見でそう語っていた。やや地味な印象があるが、自らの立ち位置を認識し、求められていることを有言実行する。ブンドゥとの試合で、ファン、米ボクシング・関係者に対し最高のパフォーマンスを披露。ファンを釘付けにしたのは言うまでもない。

 8月21日米ニューヨーク州ブルックリンにあるコニー・アイランドでIBF世界ウェルター級挑戦者決定戦が行われ、エロール・スペンスJr.は、レオナルド・ブンドゥを6回KOで下し、IBF世界ウェルター級王者・ケル・ブルックへの挑戦権を得た。これでスペンスJr.の戦績は21戦全勝(内18KO)となる。

米国期待の新星スペンスJr.はアルジェリ戦以上の大舞台が用意された

 アルジェリ戦に続き、米4大地上波ネットワークNBCでの中継が再び決まった。しかも今回の放送枠はリオ五輪のバスケットボール決勝戦の後という大舞台。つまり、高視聴件数が見込まれる舞台にスペンスJr.が抜擢されたのである。

 なんと、視聴件数はPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)史上最大の600万件数を超えたという。もちろん、この結果はリオ五輪バスケットボール決勝戦の後に中継された好条件も大きく影響したと思われる。

 PBCを仕掛けるヘイモン、ルー・ディベラ プロモーター、NBCはこの機会を利用して米国期待の新星スペンスJr.を全米にPRする計画だったのだろう。だとすれば、関係者のスペンスJr.に対する期待値はかなりのもの。何れにせよ、大観衆が見守る全米地上波に残したインパクトは計り知れない。

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スペンスJr.、40歳のベテラン、ブンドゥに圧勝

 「ノックアウトすることを狙っていたよ。NBCを視聴してるファンの前で、私は最高の試合を魅せることを望んでいたんだ」。試合前、スペンスJr.はKO宣言をしていたのである。

  この一戦は、IBF世界ウェルター級挑戦者決定戦として行われた。スペンスJr.が、WBA世界ウェルター級王者・キース・サーマン(米)が倒しきれなかったブンドゥを相手にどんな試合内容を魅せるのか。スペンスJr.のKO宣言もあり、ファン、関係者の間で多くの関心が持たれスペンスJr.にとって世界戦を前にした重要な一戦であった。

 一方で、40歳のベテラン、ブンドゥは技巧派の実力者。筆者もそうだが、KOは難しいと大方が見ていた。しかし終わってみれば、圧倒的な実力差を見せつけ6回鮮烈KO撃で幕を閉じた。いい意味で期待を裏切った形となった。

 40歳のベテラン、レオナルド・ブンドゥを相手に圧倒的な実力差を示し勝利したことは、ボクシング・ファン、米ボクシング関係者、TV局に大きなインパクトを残したことは間違いない。アルジェリ戦に続き着実にステップ・アップし、試合内容でファン、関係者を魅了していることは見てのとおり。

 そして、1試合を終える毎にファン、関係者にに対し、何か強い期待感を抱かせる選手に成長していることは事実。40歳のブンドゥとはいえ、強引なKOを狙えばリスクは高まる。そんな中、リスクを恐れずKO劇を演出。自らの立ち位置を認識し、有言実行するスペンスJr.のスタイルは好印象を与え称賛に値する。ファン、人気、知名度、評価全てがうなぎ登りだろう。

エロール・スペンスJr.真の実力者へ

 エロール・スペンスJr.はアマチュア経験豊富なオリンピアンである。一方で、クリス・アルジェリ戦前、実力者との対戦がなかっただけに、その実力に疑問を呈す声も少なくなく。ポテンシャルを感じさせるが、あの有名なスパーリングの都市伝説が一人歩きしている感があった。

 ファンも知ってのとおりそのスパーリングとは、エロール・スペンスJr.がエイドリアン・ブローナー(米)をKO。フロイド・メイウェザーJr.(米)を圧倒したという話である。

 スパーリングの中身の事実関係は不明だが、メイウェザーJr.がロバート・ゲレロ(米)との対戦で、スペンスJr.をスパーリング・パートナーとして招きいれ、メイウェザーJr.自身がスパーリングを通じて、スペンスを高く評価し太鼓判を推していたのは事実である。

 しかし、メイウェザーJrが高く評価し、高いポテンシャルを感じさせる選手に違いなかったが、スペンスJr.の実力はどこか疑問視されていた。もっとも、本人自身は強豪との対戦を望んでいたという。

 そんな中、実力者2人と対戦し、センセーショナルなKO劇を収めことの意味は大きい。あの”パッキャオが仕留めることができなかったクリス・アルジェリ(米)をストップ”、”WBA世界ウェルター級王者・キース・サーマン(米)がKO出来なかった”レオナルド・ブンドゥを一蹴したのである。

 ブンドゥとの試合を通じて、スペンスJr.の評価は確かなものへ変化したことは、今日試合を観戦したファンの共通認識ではないだろうか。そして、サーマン、ガルシアと次期スター候補生達が凌ぎを削るウェルター級で、スペンスJr.が一歩突出したことは間違いない。

スペンスJr.、ブルックへ挑戦か?!

 スペンスJr.、ブンドゥの一戦は、IBF世界ウェルター級挑戦者決定戦として行われたが、現IBF世界ウェルター級王者・ケル・ブルック(英)は9月10日英国にあるO2アリーナで、WBA・WBC・IBF世界ミドル級統一王者・ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)への挑戦が決定している。

 IBF(国際ボクシング連盟)は、ケル・ブルックがゴロフキンに勝利した場合、10日以内にミドル級、ウェルター級どちらの王座を保持するか決定するよう指示。

 仮にブルックがゴロフキンに敗戦しウェルター級へ階級を戻す場合、スペンスJr.との指名防衛戦が命じられるという特例となっている。

 ただ、普段170パウンドありウェルター級で大柄なブルックが、仮にゴロフキンに敗戦し一度作り上げたミドル級からウェルター級へ落とすことは考え難い。米・メディアなどは王座を返上し、スーパーウェルター級へ階級へ上げるとの見方をしている。

エロール・スペンスJr.、次世代のスターへ

 スペンスJr.は挑戦者決定戦を制したことで、事実上IBF世界ウェルター級ランキング1位となる。ブルックの返上は濃厚。王座決定戦となれば、コンスタンチン・ポノマレフ(ロシア)と争うことになるだろう。しかし、ポノマレフは拳を負傷していることもあり、王座決定戦に出場できるかは不透明である。

 もっとも、ファンはビッグ・ネームとの対戦を望んでいることは間違いない。仮に王座決定戦となりコンスタンチン・ポノマレフとの対戦となれば、落胆する声も出てくることが予想されるが、2016年内に王座決定戦が行われ、スペンスJr.がIBF世界ウェルター級王者となれば、2017年統一戦の機運が高まってくるだろう。

 「私は、147パウンドでトップファイターの1人だ。私は、今日の試合でそれを証明した。」

 スペンスJr.は、試合後のインタビューでそう語っていた。勿論、筆者もスペンスJr.に異論は無い。PBC開幕時、実力者との対決が早期に実現することが期待されていたが、なかなか実現せず視聴者も不信感が募ったことは事実だろう。

 しかし、ここにきてShowtime(米・大手ケーブルTV局)は2017年激戦区ウェルター級での王座統一戦を示唆。PBCは、キース・サーマン、ショーン・ポーターの好カードをマッチメークしてきた。一連の流れは、米国期待の新星スペンスJr.と、2017年ビッグマッチへ向けての準備ではないだろうか。

 実力者サーマンとは言え、ウェルター級での実績は少ない、2016年ポーター戦前にキャリアを積ませる。こう考えれば、ダニー・ガルシア(米)も、ロバート・ゲレロ戦を経て、ベルト、オルティスの勝者と戦うのも納得ができる。

 今後は、ヘイモンの思惑もありスペンスJr.のマッチメークがどうなるか不透明。しかし、サーマン、ポーター戦は米地上波CBSのプライム・タイムに実現した。今後ビッグマッチへ向けてのPRも含めての全米地上波での中継となったのだろう。こう考えれば、スペンスJr.、サーマンが実現する可能性は高い。

 そして、世界のボクシング界をリードしてきた、フロイド・メイウェザーJr.、マニー・パッキャオの「世紀の一戦」の宴も終わり、ボクシング界は次世代のスーパースター誕生を待ちわびている。そんな中、11月5日復帰するフィリピンの英雄マニー・パッキャオが復帰するという。

 2017年世代交代を掛けたメガマッチが実現すれば面白い。ファンはこういったスリリングな試合を望んでいるはずだ。いずれにせよ、スペンスJr.には大きな期待感が持てる選手に成長していることは間違いないだろう。

(Via: ESPN

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