2016年5月7日、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが東京・有明コロシアムで行われ、王者・井上尚弥(大橋)が、指名挑戦者・デビッド・カルモナ(メキシコ)を12回判定(3-0)で勝利を収め、2度目の防衛に成功。試合後、メディアのインタビューで、両拳を負傷していたことを明かした。

 井上尚弥は、2回にカルモナに当てたパンチで古傷の右拳を痛めた。その後ラウンド終盤に左拳を痛めたが、最終ラウンドには、カルモナからダウンを奪った。最終ラウンド、レフェリーは止めなかったが、ストップしてもおかしくなかった。実質TKO勝利だろう。

 会場には、WBO(世界ボクシング機構)パコ・バルカルセル会長も来日し観戦した。開始早々、井上のパワフルなワンツーがヒットし、早くも場内がどよめき今回も早々な決着かと思われたが2回、「右拳に異常を感じた」井上は、早々に決着をつけたかったと述べ、カルモナのこめかみ付近を打って右拳痛めたことを明かした。

 序盤、使えていた右も2回以降はパワー・レスに加え右を使う場面も減った。視聴していたファンも気づいた方が殆どだろう。中盤以降は左拳も痛めファイト・スタイルの変更を余儀なくされた。

 左手のガードを下げ左リードから、フットワークで小刻みにリズムを作り、ディフェンスはスリッピング・アウェイ、スウェーを主体。見切りの良さ、ポテンシャルを感じさせるが、今後、強豪クラス(ロマゴン)との試合でこのディフェンス・ワークは危険を感じるのが正直ところ。

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 もっとも課題を残したとは言え、プロ僅か10戦のキャリア。これから、いくらでも修正はできる。倒しきれなかったとは言え、左手だけでランキング1位の選手に対し力量の差を見せつけたのは紛れもない事実だ。次戦以降は北米でのリングとも言われている。

 「見せ場は作らなきゃいけない」本人も認識しているとおり勝ち負けでなく、インパクトのある勝ち方、内容が求められるのが米国のリング。それを、両拳を負傷しながらこの試合でダウンを奪い果たした井上尚弥のプロ意識の高さには脱帽しかない。

今後の不安材料はケガ

 既に、井上尚弥は、米で最も権威あるボクシング・メディア リング誌をはじめとする米国メディアで注目を集めている。米国進出で一番懸念されるのは右拳の負傷だ。コンスタントに試合をこなさなければ、たとえ印象的な試合をしてもボクサーとしての存在感が薄くなってしまう。

絶対王者・オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を葬り、その後1年間のブランクの影響は大きい。今後、右拳の怪我の慢性化しキャリアに影響がでることが一番の懸念材料だろう。

米国でナルバエスとの再戦

 オマール・ナルバエスとの初戦の契約条件に再戦条項(オプション)が有り、次戦はナルバエスとの再戦が濃厚。ナルバエスも次戦が6月に決定していることからまだ、交渉は行われておらず現時点では、国内なのか米国なのか、試合を行うのかもわからない状態だ。

 初戦のナルバエス戦の衝撃を考えれば、再戦が米国で実現できればその意味は大きい。世界のボクシング界に衝撃を与えたナルバエスとの再戦が米国で実現すれば話題性も十分。勿論、初戦の再現を米国で行うことが出来れば米国でのファンの心を掴むことは間違いなく、WBC世界フライ級王者・ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)とのスーパーマッチの機運が世界的に生まれてくるはずだ。

 しかし、米・ボクシング関係者からの知名度は有るとはいえ、米国で一般ファン層への浸透は低いのが現実。リング誌でパウンド・フォー・パウンド(PFP)の上位ランキングに入ったとは言え、米国で確実な人気・知名度を得ているわけではない。

 人気・実力ともに要求されるHBOのマッチメークの承認を得ることは簡単では無いが、井上の米国進出をHBO(米・最大手ケーブルTV局)が目論んでいるという話もあり、米国進出の期待感が高まっているのは事実だ。
 
 次戦は、国内なのか米国なのか不確定要素が高く難しいが、ローマン・ゴンサレスのアンダーカードに決まれば最高だ。ゴンサレスの次戦は、WBA・WBO世界フライ級統一王者・フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が挙がっている。エストラーダもスーパーフライ級参戦を表明。今後、スーパーフライ級を担うであろう3人が同一興行に出場となれば最高の舞台だ。

 ゴンサレス、エストラーダはHBOも興味を示していることから、井上の試合がアンダーカードとして組まれても不思議では無い。憶測の域を出ないが、いつサプライズ発表があってもおかしくはない。