WBC世界バンタム級タイトルマッチがカザフスタンの首都ヌルスルタンで行われ王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)がアーサー・ビジャヌエバ(フィリピン)と対戦し6回終了TKO勝ちで初防衛に成功。王者は1回からエンジン全開、スピード、手数でビジャヌエバを圧倒、6回に左アッパーから右フックでダウンを奪い6回終了時ビジャヌエバ陣営が棄権した。

 ウーバーリは16戦全勝12KOとし、王座奪取に失敗したビジャヌエバは37戦32勝18KO4敗(2KO)1分。ウーバリは次戦、同級WBC暫定バンタム級王者井上拓真(大橋)との対戦が義務付けられる。井上陣営は年内にも王座統一戦を行いたい方針を示している。今記事では、井上拓真の対戦相手のウーバーリのキャリアの紹介とビジャヌエバ戦のレビューと今後の行方を記載する。
 
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中央アジア、カザフスタンで開催

 今戦は、アマ・エリートを数多く輩出している中央アジアに位置するカザフスタンで行われた。イベントは、トップランク(米有力プロモーター)と契約したMTKグローバル社が共同でカザフスタンで打ち出すはじめての興行。トップランク社ボブ・アラム氏は、米国に次ぐ拠点としてトップ・アマを輩出する中央アジア出身のファイターに機会を与えマーケット成長に期待を寄せる。

 トップランク社とMTKグローバル社は英国、アイルランドで行う30のイベントをトップランク社と提携するESPN(米スポーツ専門チャンネル)で独占中継することを合意。カザフスタンの首都ヌルスルタンにあるアイス・ホッケー会場で行われた今イベントは興行面からもどれだけ集客できるか注目されたイベントだった。

ウーバーリ対ビジャヌエバ

 2大会連続でオリンピック出場経験をもつWBC世界バンタム級王者ノルディ・ウーバーリは、アマ・エリートで現役フランス人で唯一のタイトルホルダー。プロ通算15戦全勝11KO、軽量級ではKO率7割超えと高いのが目立つが、それよりも機動力に優れ抜群の安定感がある。

 いま、バンタム級の話題は、賞金獲得トーナメントWBSS(ワールドボクシング・スーパー・シリーズ)バンタム級決勝IBF世界バンタム級王者井上尚弥(大橋)対WBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(フィリピン)で持ちきり。

 その勝者との統一戦を臨むウーバーリ、宣言すれば当然求められるのはインパクトだ。相手のビジャヌエバはキャリアはあるが格下、テテ、ネリ、マックジョー・アローヨとトップクラスには負けている。今戦は勝つことはもちろん、井上尚弥が大きくクローズ・アップされるなか、バンタム級でどれだけ大きな存在感を示すことができるか内容が問われる試合だった。

 フィリピンの貧困家庭で育ったビジャヌエバ。これまでプロ戦績は32勝(18KO)3敗1分、バンタム級では中堅クラスでトップ・クラス相手には結果を出せていない。マックジョー・アローヨ(プエルトリコ)、ゾラニ・テテ(南アフリカ)と世界タイトルマッチのチャンスを得るが何も失敗。ルイス・ネリー(メキシコ)にTKO負け、今タイトルマッチを逃せば一次リーグから消える恐れもあり後がなかった。

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ウーバーリは五輪出場経験のあるアマ・エリート

WBC世界バンタム級王者ノルディ・ウーバーリ
プロ戦績:15戦全勝11KO
アマチュア歴:
2012年ロンドン五輪フライ級 ベスト8
2008年北京五輪フライ級 2回戦敗退
2007年シカゴ世界選手権銅メダル
 
 ウーバーリの母国フランス、ボクシングではあまり馴染みがない。どちらかといえばサッカー欧州強豪国の印象が強い。最近では、2016年リオ五輪スーパーヘビー級で優勝を果たした端正なルックスで話題になったトニー・ヨカが有名だ。

 歴史的にみると、ジョルジュ・カルパンチェ、マイセル・セルダンらを輩出。しかし、第二次世界対戦後は、元WBA・WBC世界クルーザー級統一王者ジャン・マルク・モルメク、ファブリス・ディオゾ、元WBA世界スーパーバンタム級王者マヤル・モンシプールらを輩出したが、際立ったボクサーは不在だった。

 北京、ロンドン五輪2大会連続出場したウーバーリ。北京五輪は、2回戦でゾウ・シミン(中国)に敗れ2回戦敗退におわったが、2016年ロンドン五輪では、米国で史上初のオリンピック3大会連続出場を果たしたラウシー・ウォーレンに勝ちベスト8に進出した。

 プロ通算15戦全勝11KOと快進撃を続けるウーバーリ。盛り上がる筋肉、身体は筋骨隆々、特徴的なのがスピーディーなコンビネーション・ブローだ。何より、攻防のバランスもよく安定感がある。プロ11戦目で元世界王者でこのクラスでは中堅クラスのフリオ・セサール・ミランダ(メキシコ)に勝ちWBA地域タイトルを獲得。

 その後、亀田和毅(協栄)と対戦し判定負けしたアレハンドロ・エルナンデス(メキシコ)と対戦。フットワークとスピードで翻弄。左右のパンチはどれも強くエルナンデスの打ち終わりを狙い精度の高いパワー・ショットを集め、タフなエルナンデスをグラつかせダウンを奪っている。

photo by:boxingscene


 その後、ロンドン五輪で1ポイントの僅差で勝ったラウシー・ウォーレン(米)と空位のWBC世界バンタム級王座決定戦を争うことが決定した。ウォーレンはバンタム級では期待されていたもの、思うような結果を出せずにいた。

 当時WBA世界バンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)と2戦し1勝1敗、その後ザナット・ザキヤノフ(カザフスタン)に判定負けを喫し王座から陥落したが、米国で有力プロモーターと繋がりもあるウォーレンは、マックジョー・アローヨ(プエルトリコ)に判定勝ち。しぶとく世界のラインに留まっていた。

 ウォーレン戦は米国で行われたが、オッズはウーバーリに大きく傾きウーバーリの評価は高いものだった。ウォーレンの軽打に苦しめられたが手数でウーバーリが追い上げ3−0(115−113,116−112,117−111)で王座獲得に成功した。

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ビジャヌエバのバックグラウンド

アーサー・ビジャヌエバ
プロ戦績:36戦32勝18KO3敗1KO1分

 「いつも海外で試合をして母国フィリピンを代表していることを誇りに思う。今回、相手は強豪だけどビッグネームになるチャンスだ。これは名誉なことだけど、大きな責任も同時に伴うと認識している。

 貧しい家庭で育ったし家族を養うことも楽じゃない。でも、この戦いにかつことでボクシング・キャリアだけでなく生活を変えることができる。何より世界チャンピオンになることは俺の夢だったことだしね」

 ビジャヌエバ 、これまで世界タイトルマッチのチャンスは2度あったが、何も結果を出せていない。今戦はアマエリート出身のウーバーリが相手、今回はアンダードッグだ。しかし、人生を変えるためには勝つしかなかった。

 ビジャヌエバは、フィリピンではボクシング・タウンとして知られるバゴ・シティに生まれ育った。幼い頃は、チェス選手のガルリ・カスパロフが好きでチェス・マスターになりたかったという。

 しかし、一家の大黒柱の父親が死去したことで生活は急変。12歳のビジャヌエバは、12人の子供の学費を支払うため、サイドカー付きのオートバイを運転し1日2ドルの報酬を稼がなければいけなかった。その後、16歳でボクシングをはじめ19歳にプロに転向した。
 
 フィリピンを主戦場に戦い2013年江藤と戦いOPBF王座を獲得。その後、WBO、IBFの地域タイトルを獲得し、プロ27戦目にして中堅のフリオ・セサール・ミランダ(メキシコ)を下し、米リング誌スーパーフライ級で7位に評価をあげた。

 しかし、マックジョー・アローヨ(フィリピン)と争ったIBF世界スーパーフライ級王座決定戦は判定負け。ゾラニ・テテ(南アフリカ)とWBO暫定タイトルを争うも判定負けに終わった。最近ではルイス・ネリー(メキシコ)に6回TKO負けを喫している。
 
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ウーバーリが挑戦者を圧倒

 流石アマ・エリートだ。ウーバーリは、一回から圧力をかけスピーディーな攻撃を仕掛けはやくも主導権を握った。その後も試合を優勢に進めハンド・スピード、コンビネーション、ディフェンス力に優れる王者は挑戦者を圧倒した。

 1回から攻勢を強めるウーバーリは、はやくも主導権を握った。ウーバーリのパンチは一見すると粗々しくみえるがパンチは全てコンパクトで回転力も速い。

 優れているのは攻撃面だけではない。ディフェンス能力も高く攻撃から防御、防御から攻撃への切りかえも速い。パーリー、ブロッキングでしっかりガード、打ち終わりもオンガード・ポジション、ステップ・バックで避け、打ち終わりを狙うビジャヌエバのカウンターを殆どもらうことはなかった。

 一方、序盤から劣勢に追い込まれたビジャヌエバは為す術がなかった。左ストレートで入り込まれ、インサイドで高速回転の連打をまとめられ、ロングでは鋭い左ストレートでロープ際に追い込まれた。カウンターで迎撃を狙うもウーバーリーの大きなディフェンスに阻まれ、逆に王者のカウンターの餌食になった。

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ウーバーリ次戦は井上拓真との王座統一戦

 選択試合を終えたウーバーリ「俺が世界一だ」と絶叫。年内にもおこなわれるWBSS決勝の井上尚弥対ノニト・ドネア戦の勝者と統一戦を希望している。

 ただ、王座統一戦の前にまずは暫定王者である井上拓真(大橋)とのWBC王座統一戦が筋。具体的な交渉はこれからだが、井上をプロモートする大橋陣営は日本開催でまとめたいところだろう。

そして、気になるのが王座統一戦が次に行われるかだ。WBC(世界ボクシング評議会)は、現地時間7月20日米ラスベガスで行われるルイス・ネリ(メキシコ)対ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦の勝者を指名挑戦者として認定。本来であれば王座統一戦が優先されるべきだが、選手を優遇するWBCがウーバーリに対しネリ対パヤノ戦の勝者との指名戦を優先する可能性は否定できない。

 ウーバーリはトップランク社と契約したMTKグローバル社がマネージメント、グローバルに売り出したい意向もあるかもしれないが、母国フランスを主戦場にしていたウーバーリは、ラウシー・ウォーレン戦はアウェイの地米国、今戦はカザフスタンの初興行に抜擢されている。報酬面で条件が合えば日本開催も十分ある。

 井上拓真はプロ通算13戦全勝3KO、ウーバーリとの統一戦は引き分けなければどちらが黒星を喫する。アマ・エリート出身のウーバーリの固い牙城を崩すことができるかどうか。守勢に回れば相手の土俵だ。プロ14戦目で世界挑戦を果たす井上にとって、厳しい戦いになることが予想されるが好戦的な2人は見応えある戦いになることは間違いない。

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