【結果】オルティス対フッカー、試合背景から今後を占う

 バージル・オルティス(米)が2021年3月20日、米テキサス州フォトワースにあるディキーズ・アリーナでモーリス・フッカー(米)とWBOインターナショナル・ウェルター級王座決定戦を行い7回TKO勝ち。6回、強烈なボディ・ショットで後退したフッカーを追い込みダウンを奪うと7回、ボディを叩くとフッカーがリングに膝をつきレフェリーが試合を止めた。

 勝ったオルティスは17戦全勝全KOパフェークト・レコードをキープ。負けたフッカーは32戦27勝18KO2敗2KO3分とした。

 試合背景からオルティス、フッカーのキャリア。試合結果、今後を占ってみたい。

どんな戦いだったのか

 テキサス出身同士、実は2人はテキサス・フォートワース地域で15分ほどの距離のところで生まれ育ったという。2人は異なるキャリアを歩んできたが、この試合はウェルター級で存在感を示すことがミッション・ウェルター級で台頭する2大巨頭、IBF・WBC世界ウェルター級王者エロール・スペンス・ジュニア(米)、WBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(米)戦に名乗りを上げる他ならない。

バージル・オルティスのキャリア

バージル・オルティス

国籍 米国
年齢 22歳

身長 178cm
リーチ 178cm

米リング誌 圏外
ESPN 8位

プロ戦績 16戦全勝全KO

アマチュア戦績 140勝20敗
 2016年ナショナルゴールデン・グローブス準優勝
 2013年ジュニア・オリンピック優勝

 スピード、パワー、スキル、必要なものは全て兼ね備えているのがオルティス。激戦区ウェルター級プロスペクトでジャロン・エニス(米)と同様、将来王者クラスの筆頭候補だ。

 アマチュアでも多くの功績を残している。 ボクシングをはじめたのは5歳のときだった。オルティスはオーク・クリフにあるエロール・スペンス・ジュニア(米)と同じビベロ・ボクシング・ジムでキャリアをスタート。

 2013年ジュニア五輪で優勝、国内大会で優勝し3年連続でシルバーグローブを獲得し注目を浴び、2016年リオ五輪代表候補だったが当時16歳だったオルティスはオリンピック・トライアルの参加条件に未達。4年待つことができなかったオルティスはプロ転向を表明した。

 オルティスは、オスカー・デ・ラ・ホーヤ氏が率いるゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)と契約を結んだ。トレーナーはロバート・ガルシア氏だ。

 プロ転向しノックアウトを量産したオルティスははやくもプロスペクトとして存在感を強めた。マウリシオ・ヘレイラ(米)、王者と対戦経験があるアントニオ・オロスコ(メキシコ)ら中堅クラスに圧倒的なパフォーマンスで勝ってきている。

 パワーショット、高い攻撃力が目立つが、ジャブ、ディフェンスも良い。ノック・アウトを急ぐこともあるが、バルガス戦では左ジャブで丁寧に距離も使い支配。アングルを切り替えたり多彩な攻撃とスマートな一面も見せ最後はフィニッシュした。

バルガス戦のレビューは、「【結果】バージル・オルティス対バルガス今後はどうなるのか占う」こちらを読んほしい。

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モーリス・フッカーのキャリア

モーリス・フッカー

国籍 米国
年齢 31歳

身長 180cm
リーチ 203cm

米リング誌 圏外
ESPN 圏外

プロ戦績 32戦27勝18KO2敗2KO3分

アマチュア戦績 不明

 一方、フッカーはアマ時代から注目され有力プロモーターと契約を交わしたオルティスとは異なる。オルティスや五輪メダリストらは米本土で影響力のあるプロモーターと契約を交わすのが殆ど。プロモーターは、しっかりとプロのリングにならせ商品価値を上げたところで世界タイトルが用意される。

 「ボクシングはタフで危険なスポーツだ。稼げるのはほんの一握りだ。車を売るとか他のビジネスをやったほうがいい」。
 フッカーのマネージャーはこう語っている。言及するまでもないがプロ・ボクシングは危険なスポーツだ。だが、こうしたなかでチャンスを掴みスポット・ライトがあたるボクサーも少なくない。

 短期でファイト・マネーを稼ぐボクサーは多い。数週間前に試合の告知をされTV局の中継のない試合をする。無名のフッカーもプロ・キャリア初期はこうしたボクサーの1人だ。「上手く行かなければ別のことをしようと言ったんだ。彼を騙したくなかったしね」。厳しい環境でサバイブしたからこそ上り詰めることができたのだろう。

 アマ時代の戦績は追えなかったが、エロール・スペンス・ジュニア(米)やアレックス・サウセド(米)、ロブ・ブラントらのスパーリング・パートナーに名乗りを上げ。最初に500ドル、そして数日後に500ドル稼ぎ生活費を稼いでいたという。

 ロサンゼルスにあるワイルドカード・ジムでレイ・ベルトラン(メキシコ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、ルスラン・プロボドニコフ(ロシア)らとスパーリングを積んだ。なかには当時世界王者だったボクサーもいたが、フッカーが圧倒し中止を言い渡された日もあったという。

 プロに転じ7年後の2018年6月、敵地英国でテリー・フラナガン(英)と空位のWBO世界スーパーライト級王座決定戦で勝ち王座獲得に成功。エロール・スペンス・ジュニアに続きダラスから2人目の世界王者が誕生した。

 ようやく王座に就いたもの厳しい環境での初防衛戦を強いられる。相手はかつてスパーリングしたことがあるアレックス・サウセド(米)だ。サウセドは米有力プロモーターのトップランク社と契約するトップ・ホープ、トップランク社が送り込んだ刺客だった。

 敵地米・オクラハマで行われた興行。Aサイド(主役)はもちろんサウセドだ。トップランク社だけありサウセドに賭けていたのがわかる。どちらともいかないラウンドが続いたが迎えた7回、フッカーが右ストレートでダウンを奪いサウセドが立ち上がったもの、追い打ちでレフェリー・ストップ。トップランク社のホープを見事ストップ。フッカーの評価を上げた戦いだった。

 その後、WBC王者ホセ・ラミレス(米)と統一戦がホーム米テキサス・アーリントンで合意。50−50の戦いは6回ラミレスがストップ勝ち。ペレスとの再起戦に勝ちオルティス戦がセットされた。

 ラミレス戦のレビューは、
ラミレスがフッカーを粉砕して2団体を統一!近い将来4団体王座統一戦実現か結果」
こちらの記事を読んでほしい。

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オルティス対フッカー予想

 筆者の予想はオルティス7回KOだ。7回というラウンドに根拠はないが、これまで激戦してきたフッカーは打たれもろくないという点と、フッカーのボクシングが機能すれば前半KOはないとみたからだ。

 ヘビー級ほどのリーチがあるフッカー。リーチは戦いにおいて武器になるが相手はスピード、パワー、スキルをもつハイレベルなオルティス。身体の柔らかいオルティスはディフェンスもうまくフッカーも簡単には捕まえられないだろう。ラミレス戦と同じような構図で、オルティスがパワー・ジャブで下がらせ、ボディで消耗させ最後は捕まるという予想だ。

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オルティス対フッカー結果

 ウェルター級トップ戦線にその存在感を示したことは間違いない。今戦は混沌とするウェルター級トップ戦線に名乗りを上げる戦いだった。

 主導権を握っていたのはオルティスだった。伸びるパワー・ジャブは威力も十分。打ち方がコンパクトで身体が流れることもない。ワンツーからボディへの返し、クロスレンジで右ストレート、左フックはどれも重く的中率も高い。ボディ打ちも強烈だ。

参照:CompuBox/


上記が、Compuboxのパンチ・スタッツである。トータルでオルティスは392発中、143発(36%)、フッカーは465発中、100発(22%)。パワーショットはオルティスは213発中、96発(45%)、フッカーは285発中、84発(29%)だった。

 攻撃力ばかり目に行ってしまうが、ディフェンスも良い。ヘッドスリップ、ハイガード、顎があがらないスタイルは致命的なパンチを貰う確率も低い。4回後半に右ストレートを貰ったが致命傷にならなかったのはディフェンスの良さだろう。

 前半は4ラウンド以外はオルティスがとったようにみえた。1ラウンド、フッカーはロングからジャブを繰り出しオルティスの攻撃をとめようとするが、ヘッドスリップしながら高圧力をかけるオルティスを止めることは簡単にはいかない。オルティスは被弾覚悟の上でパワージャブを叩き込みフッカーの牙城を崩しにかかった。

 オルティスが顔面、ボディへ打ち分けるなかフッカーは厳しい展開が続いたが4ラウンド、コンビネーションを当てると、終盤に右ストレートを叩き込みオルティスの手数が減り減速。5回、オルティスのダメージが心配されたが、開始ゴングから手数をだしている姿をみるとそこまでダメージはなかったのかもしれない。

 6ラウンド、4ラウンド減速したオルティスだがスピード、パワーは落ちていなかった。オルティスがパワージャブが目立つ有利な展開ながら、中盤にフッカーは右クロスのカウンターで反撃し対抗した。

 しかし中盤、オルティスのダブルジャブがヒットすると大きく戦況が変わった。ワンツーから切り返しのボディショットが効きフッカーが止まると、オルティスがこの瞬間を見逃すことなく、追いかけアッパーでお越しコンビネーションを叩き込みダウンを奪った。

https://twitter.com/in44y1/statuses/1373484580989104145
 フッカーはゴングに救われたが7回、オルティスはノックアウトを探していた。クロスレンジで右ストレートがヒットしフッカーが自ら膝を落としたかのように見えたが、前のボディショットが効いたのか。何れにしてもフッカーが落とされるのは時間の問題だったように見える。

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オルティス対フッカー 動画ハイライト

オルティスの次戦はどうなるのか

 オルティスのミッションは達成されたといっていいだろう。フィニッシュは肘を痛めたという話もあるが、ウェルター級トップ戦線に名乗りを上げるには十分なパフォーマンスだったことは間違いない。クロフォード、スペンス戦は実現するのだろうか。

 「フッカーの勝利は自分に自身を与えてくれた。これまで以上に自分を信じることができる。タイトルマッチの準備はできている。チャンスがあれば嬉しいね」。試合後こう語ったオルティスは「クロフォードはPFP1位、トップ2に入る。チャンスがあれば喜んで戦いたい」。PFP傑作の1人WBO王者テレンス・クロフォード(米)戦を強く臨んでいる。

 クロフォードの友人でもあるフッカーは「オルティスは若く才能があり将来スター候補だ。確かに彼は良いものを持っているけど、まだクロフォード戦の準備が整っていないとおもう。彼はまだ若いこれからまだスキル・アップし続ける必要がある。近いうちに世界チャンピオンになるだろう」。と語っている。

 実際、クロフォード、スペンスの実現度合いからいえば次戦にかなう確率は限りなくゼロに近いだろう。なぜなら、スペンスやクロフォードがオルティスと戦ったとしてもメリットが少ないからだ。対戦相手探しが難航するクロフォードにしてもトップランク社とDAZNで交渉がし難い状況がある。

 スペンスは次戦、PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)傘下のWBA王者ウガス(キューバ)が濃厚だ。

 もちろん、ロマチェンコ対ロペスが実現したようなキャリアも考えられるが大きなリスクが伴う。マッチメークの障害もあるが、カネロという大きな看板を失ったオルティスと契約するゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)がゴーサインをだすかは不透明感が漂う。将来的に同じテキサス出身のエロール・スペンス・ジュニアとの統一戦がテキサスで起こればメガ・ファイトになるだろう。

 何れにしても、オルティスがウェルター級で大きな存在感を示したことは間違いない。次戦は、ウェルター級実力者との対戦がみたい。

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