【結果】エストラーダ対ロマゴン2再戦第1戦の背景から試合レビュー

 WBC世界スーパーフライ級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が3月13日米テキサス・ダラスにあるアメリカン・エアライン・センターでWBA世界スーパーフライ級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)を12回2−1(117−111、115−113、113−115)の判定で下しリベンジに成功。WBC、WBA2団体を統一した。

 117−111のジャッジの採点はともかく、どちらが勝っても不思議ではなかった。勝ったエストラーダは45戦42勝28KO3敗、負けたロマゴンは53戦50勝41KO3敗1KOとした。今回は、第1戦からSuperflyの紹介。試合レビューをお届けする。

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エストラーダ対ロマゴン第1戦はどんな戦いだったのか

 第1戦、北米で行われたものスポット・ライトは当たらなかった。北米における軽量級の扱いは随分と変わった。いまでは、DAZN(ダ・ゾーン)が軽量級をメインカードにセットするほどだ。当時の状況を振り返ってみたよう。

 実は、第1戦のイベントが後に米プレミアムケーブルTV局(HBO)が企画する「SUPERFLY」の原型となるイベントだったのである。マニアからすれば好カードだったが軽量級が軽視される北米で注目を集めることはなかった。

 「誰も見たことがなかった素晴らしいイベントだった。HBO、Showtimeに中継を打診したけどかなわなかった」。
 こう語ったのはヘッドラインを飾ったブライアン・ビロリアのマネージャーを務めていたゲーリー・ギトルソン氏だ。

 2012年11月、冷たい雨が降りしきる寒い米ロサンゼルスにあるメモリアル・スポーツ・アリーナで挙行されたイベントは、WBO世界フライ級王ブライアン・ビロリア(米)対WBA王者エルナン・マルケスをメインにしたイベントで、ロマゴンとエストラーダ戦がアンダーカードにセットされたが、HBOやShowtimeは関心を示さなかった。

 それも仕方がない。HBOは、メイウェザー2世と言われたスター候補生の1人エイドリアン・ブローナー(米)対アントニオ・デマルコ(メキシコ)戦を中継。ブローナーはスーパーフェザー級王座を獲得しデマルコ戦は2階級制覇となる戦いだった。

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エストラーダは階級を下げロマゴンに挑戦

 第1戦、エストラーダは本来の階級フライ級から1階級下のライトフライ級に下げローマン・ゴンサレスに挑戦したが、接戦の末敗北。ハイレベルの戦いだったが、エストラーダの減量の影響は否定できない。トレーニング・キャンプ前、母親がわりに育ててくれた叔母が交通事故で死去。メンタルのコンディションも良くなかったという。

 「叔母は母が亡くなってから育ててくれたんだ。墓石のまえで世界チャンピオンになると誓った。もういないけど、リングでの逆境を乗り越えられたのは家族の支えがあったからなんだ」。

軽量級の素晴らしさを伝えたのがロマゴンだ

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 北米で軽量級シーンを造ったのがゴンサレスだといって過言ではない。HBOと契約を結びゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)とダブル・メインを飾り、止まらないアクションで多くの観客を魅了。軽量級は軽視される傾向にあったが、再評価されたことは間違いない。

 ゴロフキンとダブル・メインだったゴンサレスは、2017年9月軽量級イベント「SUPERFLY」で単独メインを務めた。シーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)、井上尚弥、カルロス・クアドラス(メキシコ)、ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)ら軽量級トップクラスが集結するイベントをK2プロモーターのトム・ローフラー氏とHBO重鎮のピーター・ネルソン氏が画策。ようやく米本土で軽量級シーンにスポット・ライトがあたった。

 軽量級の祭典は大盛況におわったが唯一のハプニングがローマン・ゴンサレスがシーサケットに痛烈な敗北しを喫したことだった。HBOは、ローマン・ゴンサレスと、アンダーカードに出場した井上尚弥との軽量級ドリームカードを「Superfly2」にセットする目論見だったが霧散した。

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HBOが軽量級にフォーカスした理由

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 「HBOが予算を持っていた。ミドル級やウェルター級一回分にあたる予算で、3つの試合を組むことができる。マーケティングのかいがありカーソン(旧スタブハブ・センター)、フォーラムでおこなった興行のチケットは完売することができた。彼らは非常に高い評価を得てPFP(パウンド・フォー・パウンド)の評価も高めることができた」。

 こう語ったのは、当時HBOと強調関係にあったK2プロモーションズのトム・ローフラー氏だ。しかし、何で中量級をメインにしたイベントに力を入れていたHBOが軽量級に関心を示したのか不思議に思うファンも多いだろう。その理由は、親会社の予算削減の影響と業界が大きく変わったことにある。

 HBOが台頭したころ年間予算は1億ドル以上だったもの、2015年は3000万ドル、2016年は2500万ドルと興行規模はスケール・ダウン。看板となるボクサーが少なかったことも予算削減の影響だったことは間違いない。

 2013年、フロイド・メイウェザー(米)が電撃復帰。ライバルのShowtime(米ケーブルTV局)と6戦契約で1試合約3200万ドルの巨額契約を締結。そして、2015年に、キース・サーマン(米)やダニー・ガルシア(米)といった人気ボクサーと契約するアル・ヘイモン氏がPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)という新たなボクシング・シリーズを設立。業界の勢力図が大きく変わった。

 ライバルのShowtimeがメイウェザーを獲得したことにより売上を大きく伸ばし、PBCが大きな存在感を示すなか、HBOは新たな活路を見出す必要に迫られ、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)と契約を結んだ。2015年、ゴンサレスがHBOと契約した背景にこうした理由があった。

 HBOの看板選手の1人、サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)は大きく成長しドル箱スターとなり、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)も人気が出てきたが、資金調達はPPV(ペイ・パー・ビュー)頼みと資金繰りが厳しかったのは明白だった。。「Superfly」軽量級にシフトした大きな理由は低コストだからだ。中量級と比較すれば興行全体で100万ドルと資金は抑えられ、凡戦になるようなことは皆無。アクション・パックが保証されるからだ。

 しかし、HBOを取り巻く環境は厳しくなるばかりだった。HBOの資金繰りは厳しく興行ができないことに不信感を顕にしたトップランク社は2017年7月離脱を決めESPN(米スポーツ専門チャンネル)と複数年契約を締結。トップランク傘下のロマチェンコ、クロフォードを失いHBOは近いうちボクシング中継から撤退する噂が流れ始めた。

 そして、2018年9月HBOはボクシング中継から年内で撤退することを発表。撤退理由は明らかになってないが、親会社AT&Tの意向だろう。ボクシングは収益の柱だが、HBOはドラマやドキュメンタリーなど番組制作においても長けている。ストリーミング・サービスが潮流となり新勢力のDAZN(ダ・ゾーン)が本格参戦、資金力勝負となるボクシングから撤退し新たにローンチするHBO Maxに注力する決断を下したのだろう。

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エストラーダ対ロマゴン再戦 結果

 筆者の採点は115−113でロマゴン勝ちだったが、どちらが勝っても不思議ではなかった。前半のほとんどはロマゴン、後半でエストラーダは盛り返したが、ポイント・メイクには至らなかったという印象。とくに後半は甲乙つけ難いラウンドが続き、明白に落とせる場面を見せることができれば結果は違っていたかもしれない。

参照:CompuBox


 一進一退の攻防。ロマゴンがパンチを当てればエストラーダも怯むことなく打ち返し、両者は一歩もひかなかったが、ロマゴンがエストラーダのアタックを上手く殺した。エストラーダの距離を潰し得意の接近戦に持ちこみ、打ち合いに臨むとムービン・センスに優れるロマゴンが僅かに優れていた。上記がパンチ・スタッツ、的中率でエストラーダを上回っている。

 序盤は1ラウンドを除き3ラウンド、ロマゴンがポイント・メイク。1ラウンドこそエストラーダはエンジン全開でジャブ、ワンツーを叩きこみ有利に試合を運んだが2ラウンドに入ると、ロマゴンの手数が増え中盤にワンツーの有効打がはいりエストラーダが一瞬止まるシーンも映った。

 5ラウンドが開始。主導権争いはどちらとも言えなかったが僅かにロマゴンが優勢に見えた。7ラウンド、ポイント的にエストラーダは盛り返さないと厳しい局面だったが、右ストレートをコネクトするとロマゴンが反撃に転じ消耗戦となった。

https://twitter.com/in44y1/statuses/1371053375165325315

 8ラウンド、両者ハイペースに打ち合ったせいかペースダウン。9ラウンド、ロマゴンは手数が減りやや失速したか。中盤、エストラーダがコンビネーションを叩き込んだ。戦いは終盤、ポイント的にロマゴンが若干有利にみえた。10、11、12ラウンド、両者はペースを落とすことなくノンストップ・アクションを繰り返し、終わりを告げるゴングがなった。

 正直、ロマゴンがここまでのコンディションを作れると思わなかった。ロマゴンの戦略が上手く機能した。エストラーダの距離を淡々と潰し機能不全に追い込み得意の接近戦に持ち込んだ。エストラーダはロマゴンの土俵で戦うことが勝利への道だったのだろうか。

 エストラーダとしては1ラウンドのように中間距離から強いジャブ、ワンツーでロマゴンの侵入を遮断。ロマゴンの攻撃を空転させるのが狙いかと思ったが。エストラーダもディフェンスは悪くないが、接近戦での攻防は一体型のロマゴンのほうが見栄えは良く優れていた。それでも、打ち合いに応じたのはロマゴンの強いプレスと手数に後退を強いられ、戦略を変えざるを得なかったのかもしれない。

エストラーダ対ロマゴン再戦 ハイライト

エストラーダの次戦はどうなるのか


 リベンジに成功したエストラーダは、WBC(世界ボクシング評議会)からシーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)との再戦が義務付けられている。

 惜しくも負けたロマゴンは、いくつかのオプションが見えてくる。ロマゴンはトップクラスであることを証明。エストラーダとの再戦でロマゴンの評価は下落しないだろう。判定を不服とし再びエストラーダと再戦、エストラーダ対シーサケットの勝者への挑戦や、WBO王者井岡一翔への挑戦が路線としてありそうだ。

 個人的には、ロマゴンは井岡一翔へ挑戦するプランが惹かれるがキャリア後期に入ったロマゴンはどんな選択をするのか注目したい。

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