カール・フランプトンが引退!軽量級として成功したキャリアを追う

 ジャッカルの愛称で知られるカール・フランプトン(英)が引退を発表した。2009年にプロ・デビュー、約12年間のプロ・ボクシング生活に幕をおろした。プロ戦績は31戦28勝(16KO)3敗(1KO)。フランプトンのキャリアを簡単に振り返り、最後の試合となったWBO世界スーパーフェザー級王者ジャメル・ヘリング(米)戦をレビューする。

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最適なプロモーターと契約できた

 フランプトンのキャリアが成功したのは、自らの商品価値を上げ、最適なプロモーターと契約したことだろう。ボクサーにとって有力プロモーターと契約することは重要だが、契約条件もキャリアを大きく左右する。

 最近でいえば、米トップランク社と契約しているIBF・WBA・WBO3団体を統一するテオフィモ・ロペス(米)がトップランク社に不満を示し離脱を示唆。両陣営の関係は悪化している。原因はマッチメークやファイトマネー、長期契約も要因の1つだろう。

 そういった意味でも、そのときに自分に必要なプロモーターと契約することができたフランプトンのキャリアは成功したケースと見ていいだろう。もちろん、ライバルになる相手がいたことも成功要因の1つだ。

フランプトンは多くの功績を残した

「いま自分のキャリアをふかえってみると、想像していた以上のことを成し遂げてきたと思う。」。
フランプトンが語っているとおり濃厚で素晴らしいキャリアだったことは間違いない。2階級制覇を達成。2016年、BWAA(全米記者協会)、米リング誌の年間最優秀選手賞を受賞した。

 いまでこそ、日本のメディアがこぞってPFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングを注視し話題にあげるが、ボクサーにとって名誉なことは、透明性が低いPFPランキングではなくBWAAや米リング誌の年間最優秀選手として輝くことである。

フランプトンのキャリア

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 これまでのフランプトンのキャリアをみてみよう。

 2014年9月、母国ベルファストで16,000人が見守るなか、IBF世界スーパーバンタム級王者キコ・マルチネス(スペイン)と再戦し12回判定勝ちで王座獲得に成功。同級王座をもつライバルWBAホルダーのスコット・クイッグ(英)との対戦を熱望した。

 そして、北米で勢力を強めるPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)を主宰するアル・ヘイモン氏と契約。米テキサスでセットされたアレハンドロ・ゴンサレス(メキシコ)との米国デビュー戦は、固く2度のダウンを喫しヒヤリとする場面もあったが判定勝ち。

 WBA王者スコット・クイッグ(英)との王座統一戦に方針を固めるが、クイッグの上位にスーパー王者ギレルモ・リゴンドー(キューバ)が君臨していたことが合意のネックだった。フランプトンがもつIBFはWBAはスーパー王者を王者とみなしていたため統一戦として認められなかった。

 リゴンドーは当時WBO・WBAと2団体をまとめる王者だったが試合枯れ。防衛戦ができないことでWBOは王座剥奪を決定。WBAはリゴンドーを休養王者へスライドしたことで、クイッグ対フランプトン統一戦実現が現実味を帯びてきた。

 試合はクイッグのホーム、英マンチェスターで開催された。試合は、前半はフランプトンが距離をキープし試合を支配。クイッグは後半にかけて盛り返したがときすでに遅し。フランプトンが2−1の判定でWBA・IBF2団体統一に成功した。

 試合後、フランプトンはWBA(世界ボクシング協会)から休養王者ギレルモ・リゴンドーとの統一戦が義務付けられていたが、リゴンドー戦を拒否。階級をフェザー級に上げ北米の軽量級マーケットで存在感のあるWBA世界フェザー級スーパー王者レオ・サンタ・クルス(メキシコ)とのビッグ・ファイト締結を目指した。

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フランプトンのファイトマネーは約1億円

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 リゴンドー戦を拒むのも無理はない。当時のリゴンドーは強豪だったにせよ不人気王者。キャリアで重要な試合を選択していきたいと語っていたフランプトンにとって、ハイ・リスク、ローリターンのリゴンドー戦は不要。仮に勝ったとしてもメリットは無いからだ。

 フェザー級進出を目論むフランプトンがターゲットとするWBA世界フェザー級王者レオ・サンタ・クルス(メキシコ)戦が合意。フランプトンとレオ・サンタ・クルスは同じヘイモン傘下。PBCがフランプトンと契約を結んだのはサンタ・クルス戦の条件があったにちがいない。


 第1戦はフランプトンの母国アイリッシュの多い米ニューヨークで開催。報酬は50万ドル、アウェーとなるがフランプトンにとって悪くない条件。メキシカンのサンタ・クルスは米西海岸にファン・ベースを築いているがニューヨークはどちらかと言えばアウェー。フランプトンの声援が目立つ戦いだった。

 1人のジャッジは114−114、116−112、117−111、2−1でフランプトンがWBAフェザー級王座を獲得し2階級制覇を達成した。

 「夢がかなったよ。世界チャンピオンになる夢はあったけど、まさか2階級制覇できるとは思わなかった。ファンの記憶に残るような戦いをしたかった。サンタ・クルスのことはリスペクトしています。彼は本当の戦士です」。

 試合後にこう語ったフランプトンは再戦は否定しなかった。そして、再戦交渉がはじまりフランプトンのホーム、ベルファストが候補に挙がったが、米ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナでセット。フランプトンはキャリア最高額、前回の倍となる100万ドルが保証された。

 再戦結果は12回2−0(114−114,116−112、117−111)でレオ・サンタ・クルスがリベンジに成功。フランプトンは王座から陥落した。最大視聴件数は64万3000件。第3戦目の交渉もあったがまとまらなかった。

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フランプトン対ノニト・ドネア

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 フェザー級タイトルを獲得したフランプトンは王座から陥落したが、次なる目標はアイルランド人として初となる3階級制覇を達成することだった。

 米国から、ベルファストに拠点を移したフランプトンは、アンドレス・グティエレスとWBC世界フェザー級挑戦者決定戦が決まっていたが前日計量で体重超過で計量失格。グティエレスがシャワー室で転倒し歯を数本折り、アゴを深くカットする怪我を負い試合は中止となった。

 バリー・マクギガンのサイクロン・プロモーションズとの契約をおえたフランプトンは、老舗クイーンズベリー・プロモーションズを主宰するフランク・ウォーレン氏と新たに契約を結び、オラシオ・ガルシアとフェザー級10回戦を行いダウンを喫したもの10回3−0の判定勝ちで再起に成功した。

 かつて対戦交渉の話もあったノニト・ドネア(フィリピン)戦の交渉が浮上。ドネアは、トップランク社と契約していたもの契約解除を申し出。双方合意の上トップランク離脱が決定した。ボブ・アラムは、ドネアをトップ・ホープのオスカル・バルデス(メキシコ)にぶつけ、気だったがその計画は霧散した。

 ドネアにしてもボブ・アラムの言いなりになる訳にはいかないといった思いもあったにちがいない。ボブ・アラムは、ジェシー・マグダレノに負けたドネアの能力を見切った感がある。トップランクを離脱したドネアはアル・ヘイモンの息がかかる元ゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)のリチャード・シェイファー氏と契約した。

 ドネアはルーベン・ガルシアに勝ち再起に成功。フランク・ウォーレン氏は2017年12月、ベルファストで2018年4月にフランプトン対ドネア戦を発表した。


 フランプトンのホーム、ベルファストにあるオデッセイ・アリーナで実現。ディフェンシブなフランプトンがポイント・メイクし3−0(117−111)の判定でドネアに勝ちWBO暫定フェザー級王座を獲得した。

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フランプトン対ワーリントン

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 ジャクソンに勝ったフランプトンは、IBF世界フェザー級王座を保持するジョシュ・ワーリントン(英)戦が英マンチェスター・アリーナで合意。当時、ワーリントンはフェザー級でWBC王者ゲーリー・ラッセル・ジュニア(米)の次点となる評価で、階級を上げパワー・レスが浮き彫りとなったフランプトンは厳しくなる見方が殆どだった。


 試合は、0−3(116−112、116−113 2者)でフランプトンは完敗。スコア以上の開きがあるように見えた試合だった。

フランプトン対ヘリング

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 フランプトンは、米トップランク社と契約したことを発表。今後は、フランク・ウォーレン氏とトップランクが共同プロモートすることが決まり、フランプトンのキャリア最終章がはじまった。

 「トップランクにとってフランプトンをチームに迎えることができたことは素晴らしいニュースです。彼は真のウォーリアーです。王座返り咲きをプロモートできることを誇りに思う」。

 トップランク社がフランプトンを獲得したのはスーパーフェザー級を活性化する狙いがあった。オスカル・バルデス(メキシコ)はスーパーフェザー級階級アップ目前に控え、WBC王者ミゲル・ベルチェル(メキシコ)、WBO王者ジャメル・ヘリング(米)とタレントが揃いトップランク傘下で統一戦が容易に組める背景があった。

 トップランクのデビュー戦の相手がエマニュエル・ドミンゲスと決まったが、滞在したホテルのロビーでコンクリートの柱の装飾品が倒れフランプトンの左手に落下。左手小指を骨折し試合が中止になるという珍事件に見舞われた。

 2019年11月30日、米ラスベガスにあるコスモポリタン・ホテルでテイラー・マクレアリーとスーパーフェザー級10回戦契約で10回3−0の判定勝ち。スーパーフェザー級デビューで勝利を飾ったフランプトンは、WBO王者ヘリング戦が視界に入った。

 WBO王者ヘリングはコロナ禍のなかオケンドに勝利。WBO(世界ボクシング機構)はヘリングに対し指名挑戦者シャクール・スティーブンソン(米)戦を命じフランプトン戦が暗礁に乗り上げたが、WBOに例外承認を取り付け合意。当初、ロンドンで行われる予定だったがフランプトンが左手の怪我の手術をしたことで延期。中東ドバイで行われることが決まった。

 日本では、伊藤からWBO王座を奪取したと記憶するファンが多いだろう。長身サウスポーのヘリングは、元海兵隊という経歴をもつ。2003年、海兵隊に入隊しアマ・キャリアをスタートしたヘリングは2002年米ニューヨークで行われたジュニア五輪ファイナルでダニエル・ジェイコブス(米)と対戦経験を持つ。

 ヘリングは北米で勢力のあるアル・ヘイモン氏と契約。アマ・キャリアもありホープとして注目を浴びたが結果は残せなかった。15戦全勝レコードで、2016年中堅クラスのデニス・シャフィコフ(ロシア)にTKO負けを喫しトップ戦線から脱落。再起戦に失敗したヘリングは、パワー、フィジカル不足が露呈。2018年にアル・ヘイモン氏との契約を解除し対立関係にあるトップランク社へ移籍した。

 スーパーフェザー級で再スタートをきり2019年5月、米フロリダ州キシミーでWBO王者伊藤雅雪へ挑戦。オッズは伊藤に傾いていたもの3−0の判定勝ち。2009年生後2ヶ月で亡くなった娘アリアナの命日にタイトル獲得に成功した。

 ヘリングは米リング誌スーパーフェザー級格付けで4位。長身サウスポー、手足は長く、ミドル・レンジから攻撃を展開するフランプトンは体格的にも不利で、それを埋める圧倒的なスピードやパワー、アビリティはなく苦戦する見方が殆どだった。

 ヘリングが好スタートをきった。フランプトンは中間距離から攻撃を狙うが、長いヘリングの左が届きなかなか中に入ることができなかった。1回、消極的だったフランプトンは2回になり積極的に手数を出すが今度は、ヘリングがアウト・ボックス、左のストレート餌食となった。

 3回、ヘリングの左ストレートがコネクト。主導権は完全にヘリングが握った。中盤、フランプトンもアタックを仕掛けパンチをあてたが体格の大きいヘリングはクリンチや、チェック・フックで反撃。4回、中盤フランプトンの左フックで右目をカット。視界不良になったヘリングのカットした右目付近を左フックを狙い王者を追い詰める場面をシーンを作ったが致命打を与えることはできなかった。

 試合が動いたのは5回、ミドル・レンジを諦め接近戦に持ち込んだフランプトンが攻めるとヘリングの左カウンターが火を吹きフランプトンからダウンを奪った。フランプトンは立ち上がり手をだしながら反撃したが接近戦に持ち込んでもヘリングが長い腕を折りたたみアッパーで迎え撃たれ戦況は厳しかった。


 6回、1分すぎるとヘリングの左ストレートがヒット。フランプトンが距離をつめ前進したところ左アッパーでキャンパスに倒れ2度目のダウン。ヘリングは立ち上がったフランプトに追撃。上下、内外にパワーショットを集めフランプトンがグラついたところ、フランプトン陣営がタオルを投入し試合終了となった。

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フランプトン引退

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 「動揺している。この試合は勝って先日亡くなったアマチュアで最初のコーチだったビリー・ウォルシュに捧げるつもりだったんだ。負けたら引退すると公言していたけど、そのとおりになりそうだ。家に帰り、残りの人生は愛する妻と子どもたちの為に捧げたいと思う」。
 試合後、フランプトンは涙ながらに引退することを公言した。

 「これまでのキャリアを振り返ると想像していた以上のことを成し遂げてきた。ヨーロッパ・タイトルを獲得して母国ベルファストでタイトルを獲得。2階級制覇を達成して米リング誌の年間最優秀選手に輝くことができ、ベルファストにあるウィンザー・パークで防衛戦をする夢もかなえることができた。

 でも、この功績はファンのみんなのおかげなんだ。オデッセイの夜、クイッグとの統一戦が行われたマンチェスター・アリーナ、そして、サンタ・クルス戦で米国まで足を運んでくれた何千のファンのみなさんには、言葉では言い尽くせないほど感謝しています。ファイターとして、みなさんのサポートは最も誇れる成果です」。

 フランプトンは、軽量級ながら米英をまたにかけビッグ・ファイトを実現できた数少ないファイターの1人である。ベルファストで絶対的な地位を築きマンチェスターでクイッグとの統一戦に勝利。そして、米ニューヨーク東海岸でMSG(マディソンスクウエア・ガーデン)とは別に新たなアリーナとして存在感を示すバークレイズ・センターでメキシカンの人気者サンタ・クルスを下した。

 米ラスベガスでセットされた再戦でサンタ・クルスに負けてしまったもの西海岸の聖地MGMグランドガーデン・アリーナで軽量級のメインが行われる例は少なく、フランプトンは近年では軽量級として最も成功を収めたファイターだったことは間違いない。

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