内山高志、王座陥落、日本ボクシング界をショックが襲った


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 4月27日「ボクシングは何が起こるかわからない。」それを改めて認識した日だった。東京・大田区総合体育館で、WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志(ワタナベ)は、同級暫定王者・ジョスレル・コラレス(パナマ)に2回KO負けを喫し、12度目の防衛戦に失敗。王座から陥落。日本ボクシング界をショックが襲った。

 2010年にタイトルを獲得し日本歴代最長となる6年3ヶ月にわたる日本が誇る最強王者・内山高志の長期政権が崩壊。内山は、試合後「身体が温まる前に終わってしまった。完全なKO負け。実力の世界なのでしょうがない」と試合後の記者のインタビューで肩を落とし語った。内山は、プロ初の黒星となった。

 身体能力豊かなパナマ人は、最強王者・内山から計3度のダウンを奪った。会場に駆けつけたファン、TVで観戦した人の視聴者の殆どが、「こんなはずじゃなかった」そう感じただろう。筆者もその中の1人だ。ジョスレル・コラレス戦は、どこか勝って当たり前というムードがあり、コラレス戦の関心度は低く、ファンはコラレス戦後の米国進出、今後の方向性に関心を集めていた。

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内山、計3度のダウン

 しかし、試合がはじまるとパナマ人のサウスポーは、ハンドスピードを活かしたジャブで王者を圧倒。「スピードについていけなかった」1ラウンド、内山は、パナマ人のスピードに翻弄され対応できなかった。パナマ人は、ややスタンスを広めにとり重心を低く、内山の打ち終わりの迎撃に備える。ジャブ、ダブルジャブ、ジャブボディ上下に打ち分け、内山の侵入経路を遮断。距離の管理を徹底した。

 パナマ人は、スピード豊かなのは勿論。サウスポー・スタイルから右をうち体位を入れ替えステップし、ダイレクトに左フックを打ち込み距離を潰し、リスク管理も怠らなかった。内山に迎撃のチャンスを与えず、ハングリーなパナマ人はチャンスも逃すことはない。1ラウンド終盤、内山に右フックから、左右フックのパワフルなコンビネーションを放ち内山を追い詰めた。

 2ラウンド、内山もジャブで立てなおそうとするが、パナマ人は自身のボクシングを展開。内山にペースを握らせなかった。そんな中、完全に主導権を握ったパナマ人は、2ラウンド中盤に内山に左カウンターを合わせ内山からダウンを奪い、その後も2回目、3回目のダウンを奪い最強王者から王座を奪取した。場内からはどよめきが起こっていた。

 ”透明人間の”異名を持つジョスレル・コラレスは、身体能力も高く。フィジカル、アジリティ、戦術面でも大きく内山を上回っていた。やはり研究されてたのであろう。モチベーション、コンディションを指摘する声も多いが、試合の立ち上がりを観れば、コンディショニングも万全。献身的な内山、モチベーションも決して低くなかったはずだろう。内山から、王座を奪取したコラレスは、称賛に値する。

米国でビッグネームとの対戦を望む叶わなかった

 ファンは、兼ねてから米国進出を期待。2016年、ワタナベジム・渡辺会長は記者会見で、内山の米国進出を明言。TV東京も全面バックアップを約束していた。ファンは、日本が誇る最強ボクサーが米国で戦う姿を見るのを願っていた。
 
 トップランク(米・大手ボクシング・プロモーター)は、内山の対戦相手として、ノニト・ドネア(フィリピン)を破ったニコラス・ウォータース(ジャマイカ)を挙げ、交渉中であることを明かした。交渉には、海外有力プロモーターとの強いパイプがある帝拳プロモーションズ 本田会長も交渉に関わっていると報じられ、米国進出が現実味を帯び、ファンも米国での試合実現の期待感が上がっていた。

 しかし、ウォータースとの対戦交渉は難航した。海外ボクシング・メディアは、ボブ・アラム氏が、2016年4月9日米・ネバタ州ラスベガスで行なわれる「パッキャオ、ブラッドリー」の興行のアンダーカードで試合を提案するも交渉が進んでいなかったという。そんな中、WBA(世界ボクシング協会)は、内山に対し同級正規王者・ハビエル・フォルトゥナ(ジャマイカ)との王座統一戦を指令。

 ウォータースとの交渉が暗雲立ち込める中、ワタナベ・ジム 渡辺会長は、フォルトゥナとの王座統一戦に意欲を示し、フォルトゥナとの対戦に方針を変更。「海外でやるつもり」と海外で試合を受ける意向を示していた。しかし、またしても交渉は難航。報酬面で同意することはなく交渉は失敗に終わった。

それでも可能性はあった

 しかし、米で知名度が無い内山にとって、米国で試合をすることは簡単ではない。米国で実質マッチメークの最終決定権があるのは、HBO(米・最大手ケーブルTV局)、Showtime(米・大手ケーブルTV局)といったケーブルTV局だ。北米のリングでは、世界ランキング、「世界王者」、実力ある選手が優遇されリングに立てるわけではなく、マッチメークは人気・知名度が大きく左右される。
 
 ニコラス・ウォータース、ハビエル・フォルトゥナにとって、報酬が見込めない、無名でリスキーな内山と対戦し仮に勝利してもメリットは少ない。ウォータースは、ドネアに勝利しているとは言え、米国で絶大な人気があるわけではなく、フォルトゥナにしても、WBA世界フェザー級正規王者だが、売出し中のホープであり全米での知名度はまだ低い。

 もっとも、米国のリングでは中量級がメインイベントを飾る興行が殆ど。内山陣営が望むメイン・イベントは難しいにしても、近年、石田順裕、西岡利晃、荒川仁人、亀海喜寛、小原佳太、三浦隆司らが米国のリングに挙がり、高い評価を得ていることを考えれば、内山がPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)、HBO、Showtimeのアンダーカードで起用されても不思議ではない。勿論、交渉面で譲歩する必要があるが、ウォータース戦より、ハビエル・フォルトゥナとの統一戦は現実的なカードだったと考えている。

内山の進退は保留

 内山は、「誰が最も強かったのか。自分は、そこに自分の名前が挙げる選手になりたい」と願っていた。内山本人が言うとおり、ボクシング・メジャー4団体に王者がいる今、「世界王者」の権威は薄れている。メディアでは、複数階級制覇、防衛記録がクローズ・アップされるが、求められるのは強豪との対戦。「誰と、いつ、どこで、どんな条件」で試合をしたかだ。もっとも、内山であれば、北米の綺羅びやかなリングも似合う。本場米国もファンを喜ばせ、最強王者であることも証明できる。だからこそファンも米国での試合を望んでいた。

 内山は、進退については保留。ワタナベジム 渡辺会長は、今後の方針については本人に決断させるとし、再起すればバックアップすることを約束。再起を決定すれば、コラレスとの試合の契約には、再戦条項が有ることからコラレスとの再戦をする計画であることを明かしている。米国進出を願うも交渉は失敗。長期に渡り王座に君臨していた内山、簡単に再起の決断はだせないだろう。

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